音楽ナタリー PowerPush - RHYMESTER
進化し続ける3人の新たな一歩
人間の文化の最高峰。それが交差点
──「人間交差点」はJINさんがプロデュースした曲ですね。
DJ JIN Dから「アガる曲ができないかな?」ってお願いをされて。それでいろいろ試行錯誤する中で、この曲の元ネタになるレイ・バレットが頭に浮かんだんですよ。
──でも今回はサンプリングではなく、MOUNTAIN MOCHA KILIMANJAROの演奏ですよね?
Mummy-D 俺が最初に「ミュージシャンと一緒にやれる曲」ってお願いもしてたんだよ。
DJ JIN うん。あと俺はこの曲を打ち込みと生演奏が融合したような曲にしたかったんです。録音ではビンテージ機材のよさを生かしつつ、音の鳴りとか、広がり、あとタイミングなんかはデジタル処理で追い込みました。ラフだけど整然としたところもあり、かなり今っぽいファンクになってると思いますよ。
──「人間交差点」というタイトルは、5月10日に行われるフェスありきで決まったんですか?
宇多丸 うん。最初フェスの名前を決めるときに、冗談で「人間交差点」とか言ってたんですよ。でもよくよく考えてみるとけっこういいかもって思い始めて。じゃあ、JINのトラックを「人間交差点」にしようってなったんですよ。
──歌詞はどうやって書いていったんですか?
Mummy-D 最初に宇多さんとこの曲で歌うことを相談したときに、多様性というキーワードが出てきたのね。人間にはそれぞれ個性があって当然だと思うけど、世の中が徐々にそういうものに寛容じゃなくなってきてる感じがしてて、それは嫌だよねって。みんなが全然バラバラな感じがリアルというか。俺は自分が渋谷のスクランブル交差点にいるのをイメージして書いたんだけど、自分というストーリーの中では交差点にいるほかの人たちなんてエキストラに見えるじゃん。でも実際は交差点にいる全員がそういう視点を持ってるんだよね。それぞれにそれぞれの視点と目的地がある。そう考えれば、人に対する不寛容さだって解消できるんじゃないかと思ったんだ。
宇多丸 あと交差点では渡る人たちがぶつからないでしょ。
──お互いぶつかりそうになったら避けますからね。
宇多丸 でしょ? 実はそれって人間の文化で一番すごいところなんじゃないかと思ったんだよ。みんながそれぞれの目的を果たすために自然と譲り合って、避け合って。しかもうかうかしてると車に轢かれて死んじゃうかもしれないから、みんな無意識で素早く行動している。そんなことがいつも当たり前のように繰り広げられるんだよ。なんて素晴らしい。交差点こそ人間の文化の最高峰なんじゃないかって。だったら、なんで大きな意味ではそれができないんだっていう。考えが違ったりするとぶつかって、相手を否定して。それじゃ自分の目的すら達成できない。
──僕は「一緒にがんばろう」って歌わないところがRHYMESTERらしいと思いました。
Mummy-D そうだね。だって交差点に集まった人たちが一緒にがんばったら、大変なことになっちゃうじゃん。あと同じ目的を持った人たちが集まった交差点は嫌でしょ? あのサッカーのワールドカップのときみたいのとかさ(笑)。あれは最悪な交差点。
宇多丸 アルバムはまだ完成してないんだけど、でも並べて聴くとそれぞれの曲で提起した問題がこの「人間交差点」で解消される、みたいな感じになるんじゃないかなー。
「グランドホテル方式」みたいなマジックが起こるフェス
──最後にフェス「人間交差点」はどんな内容になりそうですか?
Mummy-D 俺ね、この前役者としてドラマに出たんですよ(参照:Mummy-D、詐欺組織のボスに!テレ朝深夜ドラマで演技初挑戦)。それから邦画をすごく観るようになったのね。
宇多丸 そんな話、初めて聞いた(笑)。
Mummy-D 内緒にしてたの(笑)。口コミでいいやつとか、TSUTAYAでオススメされてるやつとかいっぱい観て。映画のストーリー展開で「なんとかホテル方式」ってあるじゃない。
宇多丸 「グランドホテル方式」でしょ?
Mummy-D そうそう。バラバラのストーリーが1つの結論に収斂していくやつ。今回のフェスもそういう感じになったらカッコいいなあと思ったんだよね。出演してもらう人は、それぞれが自分の持ち場でがんばってる人たちなんだよ。そういうバラバラのバックグラウンドを持った人たちのストーリーがこのフェスで一緒になっちゃうような、そんなマジックが起こったらいいな。
──ではそれぞれ意気込みをお願いします。
Mummy-D 今までフェスなんて大規模なイベントはやったことはないんですけど、昨今フェスだらけだから、どうせやるなら俺らにしかできないフェスをやりたいなと思ってて。これまでいろんなコラボをしてきた中で得たグルーヴ感みたいなものを表現できたらいいなと思ってます。
DJ JIN もちろんRHYMESTER主催のフェスなんで、グループとしては全面的に関わっていくと思うんですが、俺個人としては朝一で客入れDJをするんで何卒よろしくお願いします。
宇多丸 あのね、今回は画期的なことにチケット持ってる人は出入り自由なんです。いろんなスタンスで楽しめるイベントになればいいかなと思ってます。キッズスペースも大きくとってますし。俺らはいろんな形で出ずっぱりになります。あとは天気だけだよ。あいつ、本当に空気読まないから。
Mummy-D 雨降ったらみんなVenusFortに行けばいいんだよ。
DJ JIN 出入り自由だから(笑)。
- ニューシングル「人間交差点 / Still Changing」 / 2015年4月29日発売 / starplayers Records
- 初回限定盤A [CD+Blu-ray] / 4500円 / VIZL-837
- 初回限定盤B [CD+DVD] / 3700円 / VIZL-828
- 通常盤 [CD] 1188円 / VICL-3705
CD収録曲
- 人間交差点
- Still Changing
- 人間交差点(Instrumental)
- Still Changing(Instrumental)
- 人間交差点(Acapella)
- Still Changing(Acapella)
初回限定盤A Blu-ray / 初回限定盤B DVD収録内容
- The R~Walk This Way
- 午前零時~Once Again
- The Choice Is Yours
- K.U.F.U.
- サバイバー
- ちょうどいい(Piano Session With Kan Sano)
- It's A New Day(Piano Session With Kan Sano)
- Pop Life(Piano Session With Kan Sano)
- After The Last~そしてまた歌い出す
- Just Do It!
- 付和Ride On
- Hands
- ザ・グレート・アマチュアリズム(Piano Session With Kan Sano)
- ゆめのしま(Piano Session With Kan Sano)
- ラストヴァース
- This Y'all, That Y'all(Session With SCOOBIE DO)
- 余計なお世話だバカヤロウ
副音声:宇多丸・Mummy-D・DJ JINによる元祖・生(ビール)コメンタリー
- RHYMESTER Presents
野外音楽フェスティバル 人間交差点 2015 - 2015年5月10日(日)東京都 お台場野外特設会場
<出演者>
RHYMESTER / スガシカオ / KGDR(ex. キングギドラ) / 10-FEET / MIGHTY CROWN / SOIL & "PIMP" SESSIONS / スチャダラパー / SUMMIT(PUNPEE、GAPPER、SIMI LAB、THE OTOGIBANASHI'S)/ SUPER SONICS / レキシ / DJ JIN
RHYMESTER(ライムスター)
宇多丸、Mummy-D、DJ JINからなるヒップホップグループ。別名「キング・オブ・ステージ」。1989年に結成され、1993年にアルバム「俺に言わせりゃ」でインディーズデビューを果たす。メンバー交代を経て1994年にDJ JINが加入し、現在の編成に。1998年発表のシングル「B-BOYイズム」、翌1999年発表の3rdアルバム「リスペクト」のヒットで日本のヒップホップシーンを代表する存在となった。
2001年からは活動の場をメジャーへと移し、2007年には日本武道館公演「KING OF STAGE Vol.7」を大成功させた。その後、約2年の活動休止期間を経て「マニフェスト」「POP LIFE」「ダーティーサイエンス」という3枚のアルバムを発表する。フェスなどにも積極的に出演し、ヒップホップシーンを飛び越えてさまざまなシーンから支持されるアーティストへと成長した。
2014年12月にレコード会社をビクターエンタテインメントへ移し、主宰レーベル「starplayers Records」を設立した。4月29日にシングル「人間交差点 / Still Changing」をリリースし、5月10日に東京・お台場野外特設会場で初の主催フェスティバル「人間交差点」を開催する。
なお宇多丸はラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」のメインパーソナリティを務めるほか、テレビなどでも活躍している。Mummy-DとDJ JINはプロデューサーとしても活動中。