音楽ナタリー PowerPush - RHYMESTER
進化し続ける3人の新たな一歩
RHYMESTERがニューシングル「人間交差点 / Still Changing」を4月29日にリリースする。この作品は彼らのビクターエンタテインメント移籍後、そして主宰レーベル・starplayers Recordsから発表される初の作品となる。
結成から25年を経て、新たな活動タームに突入した3人に今の思いを聞いた。
取材・文 / 宮崎敬太 撮影 / 高田梓
ジャンルは関係なく面白いアーティストを出したい
──今回、RHYMESTERはレコード会社をKi/oon Musicからビクターエンタテインメントへ移籍し、主宰レーベル・starplayers Recordsを設立しました。
Mummy-D 自分たちでシーンを盛り上げていこう、活性化させていこう、と思ってさ。もう俺たちがやらなきゃだめだなって。
──前回のインタビューで宇多丸さんは最近の若手ヒップホップアーティストに対して「周りにディレクションしてあげる人がいたほうがいいと思う」(参照:RHYMESTER「The R ~The Best of RHYMESTER 2009-2014~」インタビュー)と話していたので、今回の主宰レーベル設立は若手ヒップホップアーティストの指導や育成といったことが目的なのかな、と思いました。
宇多丸 俺が(高木)完ちゃんと話してたやつだよね。若い子の作品には超カッコいいのがいっぱいあるんだけど、俺なんかが聴くと、作品作りのちょっとしたネジの締め方、チューニングの仕方を変えるだけで、もっと外にアプローチできるのになあって思うことがけっこうあって。そういう視点が1つ加わるだけで、もっと強くなるからさ。
Mummy-D うん。でもヒップホップに限らず、面白い子がいたらうちらのレーベルから出したいと考えてるよ。ジャンルは全然関係ない。
宇多丸 それといいものを持っていても外に出ていくためのチャンネルがない人や、もう一歩ステップアップするためのドアが必要な人たちとやれるといいよね。でもまだ何も決まってないんだ。
「Still Changing」を成立させたバランス感
──「Still Changing」は2015年1月1日にYouTubeで発表されました(参照:RHYMESTER、お年玉代わりに新曲「Still Changing」PV公開)が、この曲をレーベル移籍後初の楽曲に選んだのはなぜですか?
Mummy-D この「Still Changing」が移籍後に初めて発表する曲として、タイトルも、歌詞の内容も、曲調も含めて一番適してると思ったからだね。
DJ JIN リード曲はずっと模索してたんですよ。でも、Dがこのトラックを聴かせてくれたとき「まさにこれじゃね!?」って思いました。
Mummy-D このトラックは俺がBACHLOGICに「こういう感じで作ってほしい」ってお願いしたオーダーメイドのビートなんだよ。でも俺は最初このトラックを使うのをちょっと躊躇してて。トラックが饒舌すぎるというか、ヒップホップっぽくないというか。これで俺らがラップしたら、よくない意味でポップに聞こえてしまうんじゃないかって危惧すらあって。
宇多丸 確かに危ういバランスのトラックではあるんですよ。でも今回は仕切り直し1発目だし、あえて冒険するのもありかな、と。それこそ「ONCE AGAIN」のときみたいに。
──2009年の活動再開タイミングで発表された「ONCE AGAIN」は、サウンドも歌詞も再始動を意識させるものでしたが、今回の「Still Changing」からは「進化し続けるRHYMESTER」という印象を受けました。
宇多丸 うん。だけど曲として目星が付いたのは、ある程度制作を進めてからでしたね。実際、やってみてもうまくまとまらないことも多いから。今回はDがいいサビの歌詞を書いてきてくれて、そのあたりから「いける」という感覚が得られましたね。
──Dさんはどんなイメージで歌詞を書いたんですか?
Mummy-D 俺のパートはちょっと自分の体験が基になってて。この前高校の同窓会に行ったんですよ。そしたら女の子とかみんなすごいかわいくて(笑)。アンチエイジングみたいな考え方もあるけど、俺は歳相応の美しさやカッコよさというものがあると思うんだよね。だからお互い歳とって変わったけど、変わることのよさだってあるってことを歌いました。
──宇多丸さんはRHYMESTERのグループとしての強さを歌っていますね。
宇多丸 俺らにしか言えないことを今このタイミングで歌えば、すごく説得力が出ると思ったんですよ。でも最初俺が書いた歌詞は全然違う内容で、Dが書いたストーリーにもっと寄せたものだったんです。そしたらDに、宇多さんにはもっと威張ってほしい、最初からフルスロットルで来てほしいって言われて。「ああ、なるほど」ってなって全部書き直したんです。
──「Still Changing」では、なぜ宇多丸さんが威張った歌詞にする必要があったんですか?
宇多丸 この曲はトラックが軽快でしょ? で、Dの歌詞がホゲーっとして抜けのいい感じだから、俺のパートは威張ってるくらいのほうがヒップホップ的にバランスがいいんですよ。
Mummy-D そういうバランス感を持っていることこそが、俺らRHYMESTERの真髄なんだよね。
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- ニューシングル「人間交差点 / Still Changing」 / 2015年4月29日発売 / starplayers Records
- 初回限定盤A [CD+Blu-ray] / 4500円 / VIZL-837
- 初回限定盤B [CD+DVD] / 3700円 / VIZL-828
- 通常盤 [CD] 1188円 / VICL-3705
CD収録曲
- 人間交差点
- Still Changing
- 人間交差点(Instrumental)
- Still Changing(Instrumental)
- 人間交差点(Acapella)
- Still Changing(Acapella)
初回限定盤A Blu-ray / 初回限定盤B DVD収録内容
- The R~Walk This Way
- 午前零時~Once Again
- The Choice Is Yours
- K.U.F.U.
- サバイバー
- ちょうどいい(Piano Session With Kan Sano)
- It's A New Day(Piano Session With Kan Sano)
- Pop Life(Piano Session With Kan Sano)
- After The Last~そしてまた歌い出す
- Just Do It!
- 付和Ride On
- Hands
- ザ・グレート・アマチュアリズム(Piano Session With Kan Sano)
- ゆめのしま(Piano Session With Kan Sano)
- ラストヴァース
- This Y'all, That Y'all(Session With SCOOBIE DO)
- 余計なお世話だバカヤロウ
副音声:宇多丸・Mummy-D・DJ JINによる元祖・生(ビール)コメンタリー
- RHYMESTER Presents
野外音楽フェスティバル 人間交差点 2015 - 2015年5月10日(日)東京都 お台場野外特設会場
<出演者>
RHYMESTER / スガシカオ / KGDR(ex. キングギドラ) / 10-FEET / MIGHTY CROWN / SOIL & "PIMP" SESSIONS / スチャダラパー / SUMMIT(PUNPEE、GAPPER、SIMI LAB、THE OTOGIBANASHI'S)/ SUPER SONICS / レキシ / DJ JIN
RHYMESTER(ライムスター)
宇多丸、Mummy-D、DJ JINからなるヒップホップグループ。別名「キング・オブ・ステージ」。1989年に結成され、1993年にアルバム「俺に言わせりゃ」でインディーズデビューを果たす。メンバー交代を経て1994年にDJ JINが加入し、現在の編成に。1998年発表のシングル「B-BOYイズム」、翌1999年発表の3rdアルバム「リスペクト」のヒットで日本のヒップホップシーンを代表する存在となった。
2001年からは活動の場をメジャーへと移し、2007年には日本武道館公演「KING OF STAGE Vol.7」を大成功させた。その後、約2年の活動休止期間を経て「マニフェスト」「POP LIFE」「ダーティーサイエンス」という3枚のアルバムを発表する。フェスなどにも積極的に出演し、ヒップホップシーンを飛び越えてさまざまなシーンから支持されるアーティストへと成長した。
2014年12月にレコード会社をビクターエンタテインメントへ移し、主宰レーベル「starplayers Records」を設立した。4月29日にシングル「人間交差点 / Still Changing」をリリースし、5月10日に東京・お台場野外特設会場で初の主催フェスティバル「人間交差点」を開催する。
なお宇多丸はラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」のメインパーソナリティを務めるほか、テレビなどでも活躍している。Mummy-DとDJ JINはプロデューサーとしても活動中。