ナタリー PowerPush - スペースシャワー列伝
HaKU辻村×The Flickers安島 似た者同士対談
1stアルバムは「これが自分たちだ」って思えた
安島 HaKUの「Simulated reality」は何枚目のアルバムなんですか?
辻村 ミニアルバムは3枚出していますが、フルアルバムは1枚目ですね。僕らもThe Flickersと同じだったというか、「悔いは残らない」と思ったんですよね、アルバムができたときに。どのバンドもそうですけど、1stアルバムって一生に1枚じゃないですか。そのぶん、全身全霊で作ったし、それがどんな評価を受けようと「これが自分たちだ」って俺も思えたので。あのアルバムを出したことで、次のステップに行けましたからね。
──HaKUの新作「wonderland」(6月5日リリースのミニアルバム)は、まさに次のステップに進んだことを実感できる作品だと思います。
辻村 ありがとうございます。さっきの安島さんの話じゃないですけど、今作はできあがったときに「こういう音楽が作りたかったんだよな」と思えたんですよね。今まではいい意味で、思い描いてたものからズレたところで完成形になることが多かったんですよ。でも、今回はスタッフワークを含め、同じところに向かって進んでいけたというか。
──音楽の幅が大きく広がってますよね。ポップに振り切った曲もあれば、辻村さんの歌に焦点を当てた曲もあって。
辻村 今回はバラエティに富んだ作品にしたかったんですよ。自分の声だけで成立しているような曲もあるし、アコースティックギターを使ってもいいだろうし、ファンキーな曲もやってみたかったし。ダンスミュージックにカテゴライズされてますけど、メンバーが聴いてきた音楽、やってきた音楽はそれぞれ違うし、それは財産だと思うんですよね。もっとHaKUのフィルターを通した音楽をやりたいというのは制作前から考えていたし。実際、僕が提示した曲に対してメンバーが色を付けてくれて、それがすごく気持ちよかったんです。
──なるほど。The Flickersの音楽性もこれからどんどん広がる可能性を秘めてるんじゃないですか?
安島 そうですね。ちょっと子供っぽいかもしれないけど、「あれもやりたい、これもやりたい」って夢は尽きないので。実際に取り掛かったときにうまくいかないと、精神的にダメージを受けるんですけど(笑)。
辻村 時間が足りないことも多いですからね。
安島 ただ、今は自分のコンプレックスや弱いところを受け止められるようになってきたし、そういう部分を含めての音楽だし、芸術だと思えるようになってきて。
──バンドを続けることで、精神的にも強くなった?
安島 そうですね。でも、逆に臆病になったところもあると思うんですよ。前は聴いてくれる人がいなかったから、やりたいことをやって、「これでいい」って思って終わってたんですよね。今は聴いてくれる人、応援してくれる人がいてくれるから、そこはヒネくれることなく、素直に向き合いたいと思っていて。やっぱり、ガッカリされるのはイヤなので……。そこは臆病になってるかもしれないですね。
辻村 うん、それはすごくわかります。
誰に向かってやってるのかを意識する
──最後にそれぞれライブで意識していることを教えてもらえますか?
安島 そうですね……すごく当たり前なんですけど、いつも一生懸命に自分の信じる音楽をやるっていうことですね。ライブは命がけなんですよ。ライブがダメだったらバンドは死んじゃうというのは事実だと思うので。あと、イベントやフェスティバルって、盛り上げ合戦みたいになっちゃうことがあって。そのせいで、自分たちの音楽がブレるのはイヤだなって。
辻村 なるほど。
安島 盛り上げることに集中しちゃうと似てきちゃう気がするんですよね。僕が大事にしてるのは「どれだけ盛り上がっているように見えたか?」ではなくて、バンドが伝えたいメッセージがちゃんと届いたかどうかなんです。僕らはダンスミュージックですけど、自分たちがよくわからないもの、違うものに踊らされちゃいけない。僕らは自発的に踊りたくてやってるし、お客さんにも自発的に踊ってほしいんですよ。そのうえで心のこもった言葉、考えて作ったメロディを伝えたい――それは最近よく思いますね。
辻村 誰に向かってやってるのか? ということをしっかり意識することは大事ですよね。音楽はやっぱり“対・人”だから。人の身体に直接届けて、魂を残す。それが音楽をやってることの醍醐味だし、それができなければアーティストは死んでしまいますから。そのために、その日やれることを全力でやりたいと思いますね。
──今回のパスピエも交えての「列伝」は意義深いイベントになりそうですね。2人の交流もより深まりそうだし。
安島 そうですね。対談を通していろいろとシンパシーを感じました。
辻村 MS-20の話をした時点で通じ合いましたね(笑)。
スペースシャワー列伝
朝焼けの光の束を地平線の彼方に感じ、思わず息をのむ一夜に。
- スペースシャワー列伝
~第九十四巻 早暁(そうぎょう)の宴~ - 2013年6月26日(水)
東京都 Shibuya O-nest
OPEN 18:00 / START 19:00 - <出演者>
- HaKU / The Flickers / パスピエ
チケット一般発売中!
HaKU(はく)
2007年に大阪で結成された辻村有記(Vo, G)、藤木寛茂(G)、三好春奈(B, Vo)、長谷川真也(Dr)からなるロックバンド。関西地区を中心にライブ活動を行い、辻村の独特のハイトーンボイスや、エレクトロサウンドを生音で構築するこだわりが注目を集める。2009年1月に初音源「WHITE LIGHT」を、同年11月にミニアルバム「BREATH IN THE BEAT」をリリースする。その後は着実にリリースを重ねるとともに、ライブも全国展開。2011年2月には東京と大阪で初のワンマンライブを開催する。2012年9月にマレーシアで初の海外ライブを行い、10月にアルバム「Simulated reality」でメジャーデビューを果たした。2013年1月にメジャー1stシングル「masquerade」を発表。6月に新作ミニアルバム「wonderland」のリリースとマレーシアを含む、東名阪計4カ所のツアーを控えている。
The Flickers(ざふりっかーず)
安島裕輔(Vo, G, Syn)、堀内祥太郎(B, Cho)、本吉“Nico”弘樹(Dr, Cho)の3人からなる3ピースロックバンド。ガレージロック、ニューウェイブ、エレクトロなどの要素を盛り込んだダンサブルなサウンドと、エモーショナルなパフォーマンスでライブハウスシーンを中心に注目を集める。2011年11月にタワーレコード限定で 1stミニアルバム「WONDERGROUND」を、2012年5月に初の全国流通盤となる2ndミニアルバム「WAVEMENT」を、12月に初の日本語タイトルの「永遠」を含む4曲入りCD「Fl!ck EP」をリリースした。2013年6月19日に1stフルアルバム「A PIECE OF THE WORLD」を発表する。さらに7月には初のワンマンライブツアーを東名阪で開催予定。