ナタリー PowerPush - スペースシャワー列伝
HaKU辻村×The Flickers安島 似た者同士対談
MS-20、超欲しい!
辻村 The Flickersとは違って、僕らの場合はもともとダンスミュージックを聴く人間が1人もいなかったんですよ、メンバーの中に。最初は生音のR&Bをやろうと思っていて……。
安島 あ、そうなんですか?
辻村 生音のヒップホップだったり、THE ROOTSみたいな音を日本人としてやれたらカッコいいだろうなって。でも、ものの見事に挫折して。そのあとはいろんな音楽を探してたんですよね。……僕、すごく寂しがりなんですよ。音楽には人との距離を縮めるマジックがあると思うし、自分自身がそのことに何度も助けられてきて。だから、自分たちがやる音楽も聴いてくれる人との距離を縮めたり、気持ちよかったり、聴いた人が“ありがたい”って感じられるものであったらいいなと思って。その中で出会ったのがダンスミュージックなんですよね。4つ打ちを含めて、音楽で踊っている人たちを見て、「これをバンドに取り入れたらどうなるんだろう?」と。だからこそ、今は同期を使ってないんですよ。自分たちの生の音を突き詰めることで、ダンスミュージックを表現してみようと思って。結果的にギターが忙しくなってるんですけど(笑)、そのおかげで自分の生の気持ちを出せる音楽にたどり着けたと思っていて。この先は同期をもっと使うこともあるかもしれないけど、いまは生のダンスミュージックをやりたいんですよね。
安島 うちは(同期を)使いまくってるんです。楽器を始めたのがちょっと遅かったんですけど、徐々にコードを覚えて、エフェクターに興味を持って、そのうちにシンセサイザーが好きになって。一時はシンセを弾くメンバーがいたんですけど、その人がバックれちゃったんですよ。でも、シンセがないと曲が演奏できないから、それを補うためにシーケンサーを購入して。打ち込みがしっかり入るようになったのは、それがきっかけですね。
──そこから打ち込みのサウンドに傾倒した、と。
安島 はい。今もすごい楽しいです。夢中になると3日間くらい、いつ寝たのかもわからないくらいずっと作業してるので。生音が恋しくなるときもあるんですけどね、もちろん。同期に縛られるのではなくて、もっと自由に音楽をやりたいなと思うときもあるし。
辻村 僕も打ち込みの音は大好きなんですよ。アナログシンセにもすごく興味があって、昨日も楽器屋さんでMS-20っていう機材をずっといじって遊んでて……。
安島 MS-20、超欲しいんですよ! あれ、サオ(ギター、ベースなど)もつなげるんですよね?
辻村 そう! 昨日、エレキを差してみたんだけど、けっこうノイズが出て。それもいい感じなんだけど、まだ自分の手には負えないかな……。
──すいません、MS-20ってアナログシンセなんですか?
安島 そうですね。昔のアナログシンセを復刻したやつで。
辻村 つい最近、“mini”が出たんですよね。
安島 そうそう。すごく本格的なアナログシンセなんだけど、小さくてかわいいっていう。
辻村 うん、デザインがかわいいんですよね。いかにもアナログチックで。
安島 ツマミも一杯ついてるし、サオも差せるし。興奮しますね(笑)。たぶん、欲しがってる人は多いんじゃないかな?
辻村 そうですよね。バンドに取り入れたら、面白いことができるかもしれないし。もし買ったら、寝ないでいじってると思う(笑)。
弾く楽器はなんでもいい
──いいですね、2人ともアナログシンセの話題で盛り上がるっていう。
安島 逆にギターのことは疎いんですけどね。
辻村 あ、僕も(笑)。今、自分が使ってるギター、うちのギタリストに借りてるんですよ。自分のギターは持ってなくて。
安島 僕もうちのベーシストが持ってるギターを弾いてます。
辻村 同じですね(笑)。
安島 弾く楽器はなんでもいいというか、「ギタリストだぜ」っていう感じがないんですよね。もちろん、カッコいいギターを弾きたいとは思うんだけど、あんまり自分のことをギタリストだとは思ってないっていう。
辻村 わかります。僕はもともとヘヴィメタルが好きで、速くて重いギタリストが好みだったんですよ。今でも聴いたりするんだけど、自分のプレイスタイルはどんどん変わっていって……。安島さんとはプロセスはだいぶ違うけど、たどり着いた場所はすごく近いですよね。
──そうですよね。ここでもMS-20のノイズについて話してるくらいだから。
辻村 ノイズも大好きですから。
安島 僕も大好き(笑)。今制作期間中で、さっきまでミックスしてたんですけど、その曲のタイトルが偶然にも“ノイズ”(「noiz me」)っていうんですよ。
アルバムは「これが僕たちです」って言える
──The Flickersは新しい音源を制作中なんですよね。
安島 はい。初めてのフルアルバムを作ってます。まだ作業が終わってないんですけどね。
──The Flickersにとっては記念すべき1stフルアルバムとなるわけですが、どんな作品になりそうですか?
安島 まだ完成してないのでなんとも言えないんですけど……。ただ、このアルバムを出したあとでどう評価されても、「これが今の自分たちの真実だ」って言えると思うんですよ。自分たちがやっていることにウソはないし、一生懸命、全力で向き合えているから、好きって言われても嫌いって言われても、「これが僕たちです」って言えるCDになるんじゃないかなって。……まず、ちゃんとしたアルバムをリリースすること自体が夢でしたからね。音楽を始めたばかりのときに、よく「こういうアルバムを作りたい」って考えてたんですよ。そのときに思い描いていたものに近いアルバムになりそうなんですよ。
──制作前にイメージしていた通り、ということ?
安島 いや、実際には何も考えずに、今の自分たちをぶつけただけなんですけど。録り終わってみると、「最初の頃に思っていたアルバムに近いな」って。新しい作品を出すときって緊張とか気負いがあるんですけど、今はわりと穏やかなんですよね。録ったものを聴いていても、「こういう気持ちで作ったフレーズ」とか「こういう意味を持った音」っていうのがハッキリしていて、それを自然に受け止められるので。
辻村 楽しみですね、ホントに。
スペースシャワー列伝
朝焼けの光の束を地平線の彼方に感じ、思わず息をのむ一夜に。
- スペースシャワー列伝
~第九十四巻 早暁(そうぎょう)の宴~ - 2013年6月26日(水)
東京都 Shibuya O-nest
OPEN 18:00 / START 19:00 - <出演者>
- HaKU / The Flickers / パスピエ
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HaKU(はく)
2007年に大阪で結成された辻村有記(Vo, G)、藤木寛茂(G)、三好春奈(B, Vo)、長谷川真也(Dr)からなるロックバンド。関西地区を中心にライブ活動を行い、辻村の独特のハイトーンボイスや、エレクトロサウンドを生音で構築するこだわりが注目を集める。2009年1月に初音源「WHITE LIGHT」を、同年11月にミニアルバム「BREATH IN THE BEAT」をリリースする。その後は着実にリリースを重ねるとともに、ライブも全国展開。2011年2月には東京と大阪で初のワンマンライブを開催する。2012年9月にマレーシアで初の海外ライブを行い、10月にアルバム「Simulated reality」でメジャーデビューを果たした。2013年1月にメジャー1stシングル「masquerade」を発表。6月に新作ミニアルバム「wonderland」のリリースとマレーシアを含む、東名阪計4カ所のツアーを控えている。
The Flickers(ざふりっかーず)
安島裕輔(Vo, G, Syn)、堀内祥太郎(B, Cho)、本吉“Nico”弘樹(Dr, Cho)の3人からなる3ピースロックバンド。ガレージロック、ニューウェイブ、エレクトロなどの要素を盛り込んだダンサブルなサウンドと、エモーショナルなパフォーマンスでライブハウスシーンを中心に注目を集める。2011年11月にタワーレコード限定で 1stミニアルバム「WONDERGROUND」を、2012年5月に初の全国流通盤となる2ndミニアルバム「WAVEMENT」を、12月に初の日本語タイトルの「永遠」を含む4曲入りCD「Fl!ck EP」をリリースした。2013年6月19日に1stフルアルバム「A PIECE OF THE WORLD」を発表する。さらに7月には初のワンマンライブツアーを東名阪で開催予定。