ナタリー PowerPush - スペースシャワー列伝

HaKU辻村×The Flickers安島 似た者同士対談

6月26日に東京・Shibuya O-nestで「スペースシャワー列伝 ~第九十四巻 早暁(そうぎょう)の宴~」が開催される。これに向けて今回ナタリーでは、イベントに出演する3バンド(HaKU、The Flickers、パスピエ)から、HaKUの辻村有記(Vo, G)とThe Flickersの安島裕輔(Vo, G, Syn)の対談を企画した。

自らの音楽的ルーツ、ライブに対するスタンスからイベントへの意気込みまで。ロックとダンスミュージックを独自のセンスで融合させている2バンドのフロントマンの対話は、彼らの音楽と同様、きわめて独創的で、色彩豊かなものになった。

取材・文 / 森朋之 撮影 / 佐藤類

「一緒にライブやったらいいと思うよ」

辻村 はじめまして。HaKUのボーカルの辻村です。

安島 The Flickersの安島です。

辻村 何度かすれ違ったことありますよね。なんばHatchとか……。

安島 あと、熊本のイベントでも。ときどき見かけてたんですけど、人見知りだから近付けなくて。

左から辻村有記(Vo, G / HaKU)、安島裕輔(Vo, G, Syn / The Flickers)

辻村 お互い、そんな感じですよね(笑)。

──ちゃんと話すのは今日が初めてなんですね。

辻村 そうなんですよ。しっかり対バンしたこともないですし。でもすごい好きなバンドなんですよね、The Flickers。よく人から「一緒にライブやったらいいと思うよ」って言われたり。

安島 あ、僕も言われます。どこか似てるというか、共通している部分があるのかなって。

辻村 うん、それはこうやって話していても感じますね(笑)。「列伝」で一緒にやれるのもホントにうれしいんですよ。同じ日に同じステージに立つことで見えてくること、感じられるものもあると思うし、それを自分たちの音楽に生かせたらな、と。気持ち的にはすごく高まってますね。

安島 今回の3バンドはもちろんそれぞれ違うんだけど、どこかにシンパシーを感じるところがあって。一緒にやれるのはすごくうれしいし、イベント全体だったり、音楽シーンを盛り上げることにつながるといいなって思います。

すごく好きです(笑)

──なるほど。まずはお互いの印象を教えてもらえますか?

安島 HaKUの印象ですか? えーと、ワンマンも観たことがあるし、CDもちょくちょく聴いてて、今日も聴いてきました。すごく繊細な音楽だなと思ってるんですよね、僕は。それは個人的なイメージだから、違ってたら申し訳ないんですけど。

辻村 いえいえ(笑)。

安島 すごい轟音だし、ギターもすごくカラフルで、プリズムみたいで。その中で一生懸命に叫んでいるような感じがあるというか。あと、いろんな要素を感じるんですよね。UKロック、オルタナティブ、北欧の音楽だったり……。面白いなって思いますね。

辻村有記(Vo, G / HaKU)

辻村 僕はまず、(安島の)声ですよね。自分も独特な声だって言われるんですけど、安島さんの歌声には初めて聴くような衝撃があったんです。バンドの音にはトリップミュージックのイメージだったり、サイケな部分も感じられるんだけど、それが歌声にすごく合ってるんですよね。運命的なバンドというか、この声とこの音が会うべくして会ったんだなって。さっきも言いましたけど、同じ場所、同じステージで一緒に音を鳴らしてみたかったし……だから、すごく好きです(笑)。

安島 ありがとうございます。

──ロックとダンスミュージックを融合させるというスタンスは両方のバンドに共通していると思うのですが、どんなプロセスで現在の音楽性が形成されていったんですか?

安島 バンドを組んだときは(ダンスミュージックを)あんまり意識してなかったんですけどね。楽しい音楽、やりたい音楽をやろうと思っていただけというか。中学生のときはパンクロックが大好きで、THE CLASHとかGREEN DAYとか、元気な音楽をよく聴いていて。そこから思春期になると闇を抱えたりして(笑)、「もうギターは聴きたくない」みたいになって、ポストロックやエレクトロニカを聴くようになって。さらに大人に近付くにつれて「やっぱりパンクが好きだな。歌も好きだし、ロックはいいな」って感じになってきて、さらにニューウェイブみたいな音楽に興味が出てきて……。

──今回の「列伝」に出演するパスピエも80'sニューウェイブのテイストを持ってますよね。

安島 あ、そうですよね。何回かライブで一緒になったことがあるんですよ。

辻村 僕もCDだけは聴いたことがあるんですけど、やっぱり衝撃を受けましたね。「これ、ライブでやるとどうなるんだろう?」って。

──かなり緻密なアレンジですけど、ほぼ音源通りに演奏できるんですよね。メンバーの演奏技術がとにかく高くて。

辻村 うわ、そうなんだ。楽しみですね。

──パスピエにもダンスミュージックの要素があると思いますよ。

安島 僕も踊るのは大好きなんですよ、個人的に。ダンスミュージックもいろいろ聴きますね。

──クラブに行ったりとか?

安島 行ったりしたこともあるんですけど、人がダメなんですよ。家では恥ずかしいくらい踊ってるんですけどね、1人で。“1人クラブ”です(笑)。

辻村 そういう感じもよくわかります(笑)。

──The Flickersでやれてるから大丈夫じゃないですか? ロックもダンスも。

安島 やりたいことをやってるうちに、今の音楽にたどり着いたというか。それはもう、人間の業だと思うんですよ。業の塊ですね、自分たちがやってる音楽は。

スペースシャワー列伝

朝焼けの光の束を地平線の彼方に感じ、思わず息をのむ一夜に。

スペースシャワー列伝
~第九十四巻 早暁(そうぎょう)の宴~
2013年6月26日(水)
東京都 Shibuya O-nest
OPEN 18:00 / START 19:00
<出演者>
HaKU / The Flickers / パスピエ
チケット一般発売中!
HaKU(はく)
HaKU

2007年に大阪で結成された辻村有記(Vo, G)、藤木寛茂(G)、三好春奈(B, Vo)、長谷川真也(Dr)からなるロックバンド。関西地区を中心にライブ活動を行い、辻村の独特のハイトーンボイスや、エレクトロサウンドを生音で構築するこだわりが注目を集める。2009年1月に初音源「WHITE LIGHT」を、同年11月にミニアルバム「BREATH IN THE BEAT」をリリースする。その後は着実にリリースを重ねるとともに、ライブも全国展開。2011年2月には東京と大阪で初のワンマンライブを開催する。2012年9月にマレーシアで初の海外ライブを行い、10月にアルバム「Simulated reality」でメジャーデビューを果たした。2013年1月にメジャー1stシングル「masquerade」を発表。6月に新作ミニアルバム「wonderland」のリリースとマレーシアを含む、東名阪計4カ所のツアーを控えている。

The Flickers(ざふりっかーず)
The Flickers

安島裕輔(Vo, G, Syn)、堀内祥太郎(B, Cho)、本吉“Nico”弘樹(Dr, Cho)の3人からなる3ピースロックバンド。ガレージロック、ニューウェイブ、エレクトロなどの要素を盛り込んだダンサブルなサウンドと、エモーショナルなパフォーマンスでライブハウスシーンを中心に注目を集める。2011年11月にタワーレコード限定で 1stミニアルバム「WONDERGROUND」を、2012年5月に初の全国流通盤となる2ndミニアルバム「WAVEMENT」を、12月に初の日本語タイトルの「永遠」を含む4曲入りCD「Fl!ck EP」をリリースした。2013年6月19日に1stフルアルバム「A PIECE OF THE WORLD」を発表する。さらに7月には初のワンマンライブツアーを東名阪で開催予定。