音楽ナタリー Power Push - れるりり

インタビューと対談で追う超気鋭クリエイターの素顔

れるりりがニューアルバム「厨病激発ボーイ」を12月16日にリリースする。

れるりりは、2009年のデビュー後、瞬く間に注目を集め、2012年発表のVOCALOID曲「脳漿炸裂ガール」が関連動画の総再生回数5000万を誇るビッグヒットを記録した音楽プロデューサー。さらにこの曲が原案となった小説が刊行され、私立恵比寿中学・柏木ひなた主演の実写映画が公開されるなど(参照:映画「脳漿炸裂ガール」にエビ中・柏木ひなた&夢アド・志田友美)、一大メディアミックス展開が繰り広げられたことでも知られるクリエイターだ。

そんな彼の新作「厨病激発ボーイ」は曰く「名刺代わりのアルバム」。ブラックミュージックを基調とした自らの音楽性を改めて世に問う1作になっている。また2016年1月1日にはアルバム表題曲を原案に持つ小説が刊行され、話題の声優陣が名を連ねるサウンドドラマも配信される。

八面六臂の活躍を見せるれるりりとはいかなる人物なのか。今回音楽ナタリーではアルバム「厨病激発ボーイ」をキーに彼の横顔に迫った。また特集後半ではサウンドドラマに出演する、私立恵比寿中学・真山りかとの対談を実施。拡散し始めた「厨病激発ボーイ」の世界を追いかけた。

取材・文 / 成松哲 撮影 / 佐藤類

れるりりサウンドの源泉は山崎まさよし

──今回のアルバム「厨病激発ボーイ」を聴くにつけ、れるりりサウンドを語る上で特筆すべきポイントって“黒さ”なんだろうな、と思っていて。なのでまずは音楽のキャリアを聞かせてください。一番初めに買ったCDってなんですか?

小学校5年か6年のときに「COUNT DOWN TV」で紹介されていた藤井フミヤさんのアルバムをカッコいいなと思って買って。あとアニメ「ドラゴンボールGT」のエンディングテーマをDEENが担当していたんですけど、その「ひとりじゃない」という曲も大好きで。たぶんその2枚あたりが最初に買ったCDになるんだと思います。ちょっと優しいバラードが好きだったんです。あと「オールナイトニッポン」なんかをよく聴いていて、ラジオで音楽情報を知ることも多かったですかね。

──さすがに小学生当時から今の黒っぽい趣味に通じていたわけでもない感じですね。

そうですね。

──じゃあ初めて楽器を手にしたのは?

中3です。当時クラスでゆずが流行っていて、僕もギターを弾いて歌うのって、なんかカッコいいなと思って。当時母親がクラシックギターを弾いていたので、勝手に借りてゆずのコピーを始めたのがきっかけで。だからプレイヤーとして初めて影響を受けたのはゆず、いわゆるフォークサウンドです。

──まだ今のれるりりサウンドにつながる何かはあまり感じられないですね(笑)。

そういう意味で影響を受けたのは高校に入って聴いた山崎まさよしさんのアルバム。ギターがめちゃめちゃうまい!って衝撃を受けたんですよ。

──山崎さんって、いい声でいい歌を歌う人ってイメージが先行しがちなんだけど、実はそうなんですよね。

特に当時の僕はギターキッズだったんで、山崎さんのギタープレイにシビれて。それをきっかけに、アコースティックギターのカッティングを練習したりとか、スコアを買ってジャズやブルースのコードワークを練習したりとか、とにかくギターを弾いてました。

デビューのきっかけはバイトのカレー屋

──その後、山崎さんをきっかけにジャズやブルースといったルーツミュージックを掘っていった感じ?

ええ。ただあんまり洋楽にはいかなかったんですよ。そこは小学生の頃から一貫しているんですけどJ-POPがすごく好きで。日本語で歌ってる、特に男性のシンガーソングライターが好きだったんですよね。今も好きなんですけど、スガシカオさんとかスキマスイッチとか。ギターを持って歌ってる人がカッコいいなと思って。

──しかも山崎さんやスガさんには黒っぽいフィーリングが。

そうですね。

──高校時代から1人で音楽活動を?

高校時代は軽音楽部に入ってバンドをやってました。あと部室にドラムセットとかがあったから、ずっと1人で遊んでたり。

──そうやってほかの楽器も覚えていった、と。

そうです。ベースにも触るようになって。

──今、発表なさってる曲でも演奏は基本的にご自身で?

最近はほとんど打ち込みになってるんですけど、でも、やっぱりドラムにしても実際に叩いていた経験があるので、最初から打ち込みもやりやすかったというか。

──DTMを始めたのは?

DTMを始めたのは20代前半ぐらいです。高校を卒業した頃は音楽でプロになろうなんて1ミリも思ってなくて「料理人の道に進もうかな」みたいな感じで調理師の学校に入ったんです。

──じゃあなぜ20代前半でDTMを?

当時カレー屋さんでバイトしてたんですけど、そのお店がすごく変な店で。国立にあるカレー屋なんですけど。バイトの面接を受けようと思って電話をしたら、なぜか音楽の話になって「君、バンドやってる?」って聞かれたから、「やってます」って答えたら、「デモテープを持ってきてくれ」と。

──履歴書はいらないから、デモテープを持ってこい、と(笑)。

店長がバンドマンで、バイトはバンドマンしか雇わないみたいな変わった店だったんですよ。で、デモテープ持参で面接を受けるっていう(笑)。それで気に入ってもらえてそのまま採用されました。

──そのデモテープを作ったバンドでは、どういう音楽を?

ブラックミュージックをルーツにしたポップスみたいな感じですね。で、そのカレー屋で働いていたら、店長の知り合いが今の事務所の新人発掘みたいな仕事をしている人で。僕らのバンドのデモテープを聴いたその人が「いいね」ってなってスカウトされました。

──でも当時は音楽でプロになろうなんて1ミリも思ってなかった。

なのに話がトントン拍子で進んじゃって、僕も僕で「せっかくだからちょっとやってみようかな」ということで調理師学校を辞めたんです。ただその後バンド1本で3、4年活動したんですけど、全然売れなくて、結局解散しちゃいました。

ニューアルバム「厨病激発ボーイ」 / 2015年12月16日発売 / ウルトラシープ
初回限定盤 [CD+コミック] / 3078円 / ZMCL-1039~40
通常盤 [CD] / 2592円 / ZMCL-1041
収録曲
  1. 厨病激発ボーイ
  2. Invitation
  3. クエスト
  4. ヘリオライト
  5. World juncture
  6. 九十九ノ刃
  7. 君のとなりに
  8. HOME
  9. 美少女嫌疑
  10. DICE
  11. 月光潤色ガール
  12. 脳漿炸裂ガール 2015 ver.
れるりり
れるりり

音楽プロデューサー。バンド活動ののち、2009年にニコニコ動画に投稿したVOCALOID曲「いつもより泣き虫な空」が、処女作ながら10万再生を超える“殿堂入り”を果たす。以来、人気曲を連発し、2012年制作の「脳漿炸裂ガール」では初の100万再生を突破。その後も再生数を重ねると同時に、同曲をモチーフにした吉田恵里香によるノベライズ版が刊行され、2015年夏には私立恵比寿中学・柏木ひなた主演でVOCALOIDナンバーを原案に持つ作品としては初めて実写映画化される。また2013年には全国流通のコンセプトアルバム「地獄型人間動物園」を発表し、2015年12月にはオリジナルフルアルバム「厨病激発ボーイ」をリリース。2016年1月1日にはこのアルバムを原案に持つ藤並みなとの同名小説が刊行され、スマートフォンアプリ・ウルトラ!プレイヤーで私立恵比寿中学・真山りからが出演するサウンドドラマが配信される。