Reol×LiSA対談|異体同心な2人の愛とリスペクトに満ちた親密対談 (2/3)

人とだから見られる夢がある

──お二人は出てきたシーンは違うけど同じマインド、同じ精神性だから今こうしてリンクしているわけですよね。ここまでお話を聞いて、ファンの方やお客さんへの思いというのも似ているなと感じたんですが。

Reol でも、LiSAさんのほうが愛情を直接的に表現してくれますよね。だってすごいじゃないですか、毎回「絶対にまたやろうね!」「絶対にまた会おうね!」って次の約束をするんですよ? そういう意味では私のほうがちょっとツンケンしている気がします。

LiSA そうかなあ?

Reol まあ10年経って少しは……交流できるようになったのかな(笑)。申し訳ないけど10年前はそれどころじゃなくて、もっと「自分が、自分が」って感じだったので。でも、10年も変わらずに一緒にいてくれていると思ったら、一人暮らしをしてお母さんのありがたみをようやく知る娘みたいな感覚がちょっとあります。不思議な存在ですよね、ファンの人たちって。私たちにとっての朗報に対して、泣いてくれるファンもいるじゃないですか。悪い意味じゃなくて、「なんで泣いてくれるの?」って。その自分事が相手にとっての生きがいになっているというのが、「なんだろうこれ?」って不思議な気持ちになるんです。

Reol

Reol

LiSA なります、なります! なるし、そんな人間が世の中にいると思わなかった。そういう人に出会いたいとは思っていたけど、本当に出会えるとはまったく思ってなかったから。だから、すごいのは私ではなくてファンのみんなです。みんながいなかったら私はこんなにがんばれなかったし、みんなの気持ちを背負っていたからここまでやれたんだと思う。武道館に立ちたい、アリーナツアーをやりたいという夢って、たぶん最初は自分のためにやりたい、自分がこれを叶えたいという気持ちだったはずなのに、気付いたら「みんなが一緒に喜んでくれるからこれをやりたい。みんなが次あそこに行けるかも?って夢を抱いてくれるから一緒に叶えたい。それを私にやらせてもらえるんだったらがんばりたい」みたいな気持ちになっていたから。

Reol 人とだから見られる夢があるし、自分1人だとそういう大志は抱けないと思いますね。ただ、私はリスナーという存在を普段はあまり意識しすぎたくなくて。そもそも最初はいなかった存在だし、リスナーがいてもいなくても作りたいから自分の曲を作った。そのときの感覚を忘れたくないし、聴いてくれる人がいるからリリースしたいという考え方になりたくないし、ずっと変わっていきたい。自分じゃないものになりたくてReolになったんだから、その感覚を忘れたくなくて。だから、普段はリスナーの存在に入り込みすぎないようにしています。甘えたくないというか……。

左からReol、LiSA。

左からReol、LiSA。

LiSA 今話していて、Reolちゃんと私の違うところ、1つ見つけた。Reolちゃんは作ることが音楽の中で一番好きって言ってたけど、私はステージで歌うことが好き。

Reol 私はステージ上にいるときは無我夢中すぎて、よくわかんないまま2時間半が終わるんですけど、ステージを降りたあとにまだ歓声や拍手が聞こえてきたときにやっと「ああやってよかったな」と時差で感じるかな。だから「大成功だ!」って、ステージに立ってるその瞬間は思えないんですよ。

LiSA ああ、わかる。

Reol タイムラグがそこにあるから……こないだ観せてもらった横アリって私がステージ上にいるLiSAさんを初めて観た場所だし、自分も武道館の次に立つことになるステージでもあって。あそこにいたファンはみんなステージに向かって「LiSAーっ!」って叫んで、一緒に飛び跳ねたり歌ったりしていた。そういう光景を目にして、なぜファンの人たちがLiSAさんを好きなのか、その理由がよりわかりました。人ってみんな不完全だけど、それを見せるか見せないかの違いだと思っていて。LiSAさんはもろいところもちょっと見せてくれるときがあるじゃないですか。それをご本人が意図しているのか、「見られちゃった」と思ってるかはわからないですけど、弱さを見せられるって強い人にしかできないこと。しかも、自分から先に開示してくれるところがLiSAさんのすごさだと勝手に思ってます。

LiSAはReolのモチベ

LiSA 今日はReolちゃんの新作の話題がテーマなのに、完全に私のセールストークになってる(笑)。そういうところも含めて、Reolちゃんはいい意味で頭がいいし、回転も速いからすぐにいろいろ察するんだよね。

Reol そうなのかなあ……でも、すごくもろい部分があるからこそ強いんだろうなって、横アリを観てより感じました。だから、終わったあとに面会させてもらったときも私が号泣してしまって。

LiSA 私も話しながら一緒に泣いちゃったよね(笑)。でも、それはReolちゃんもいろいろ背負っているから、そういう気持ちがわかっちゃうんだよ。

LiSA

LiSA

Reol そうですね。ひとえに長く続けると言っても出会いの影にいくつも別れもあって、中には自分ではコントロールできない別れもありますよね。大きさはさまざまだけど、そういうときでもステージがあったら立たなければいけないし、マイクを握らなくちゃいけない。あと自分の過去の曲が今の自分をえぐってくる瞬間もあるじゃないですか。こうありたかったのにそうあれなかった自分とか、逆にこうありたいということを自分の曲でめちゃくちゃ言わされるときとか。「今はそういう歌詞を歌いたくないのに、こんな意味が乗ってしまうなんて」とか、自分を自分で刺してくる瞬間がライブにはあるけど、LiSAさんは毎回それを真っ向勝負でやっていて、私は自分にとって大事なタイミングに見せてもらっているから、常に「孤独じゃないんだ」と思える。もちろんLiSAさんも私も、それぞれの場所で戦わなくちゃいけないんだけど、「LiSAさんもがんばってるんだ」って事実が私のモチベーションを保てる1つの要因だったりしますね。

LiSA こんなにライブや音楽にちゃんと血を通わせて、魂を込めて、意味を持ってやってくれているんだから、そりゃあライブを観ても「そんなに詰め込まんでいい!」って思っちゃうわけです(笑)。でも、そこは私も一緒で、別にそこまでやれって誰も頼んでないんだよね。自分の傷をえぐってまでそれをやれとは言ってないんだけど、ステージに立つ人間はそうすべきだと思っている。で、そういうことを誰に言われるでもなくやり続けてくれるから、私もすごく刺激になってます。

Reol そういう意味では、LiSAさんの中に自分を見出せるというか。そういう存在ってほかにいないので、ありがたいです。

LiSA だから、Reolちゃんとしゃべってるとコンパスで自分の方向を合わせにいくような感覚になるの。自分の狂っているかもしれない軸を合わせにいくような。だから定期的に話したくなる。

タイアップ作品との寄り添い方が抜群のReol

──話題は尽きないですが、ここからはReolさんの新作EP「秘色録」について話していきましょう。このEPには10月に放送がスタートしたテレビアニメ「青の祓魔師 雪ノ果篇」のオープニングテーマ「RE RESCUE」が収録されています。

LiSA Reolちゃんってタイアップ作品との寄り添い方もめちゃくちゃ上手だよね。「青エク」(「青の祓魔師」)って今までUVERworldなどいろんなアーティストの方々が、主題歌を担当してきたじゃないですか。なのに、まだこんなにも言えることがあるんだって新しい視点を持って、その作品の世界をちゃんと背負った状態でReolちゃんは歌ってくれた。

Reol 「青エク」は原作マンガが始まったのがちょうど自分たち世代で、私も名前は知っていたけどちゃんと読めていなかったから、これを機に読みたいと思って。で、読んだら……双子のお兄ちゃん(奥村燐)と弟(奥村雪男)で性格が真反対だし、弟は賢くていろいろ機転も利くんだけど、基本卑屈というか「自分なんて」と思っているところがある。一方で兄は主人公というのもあるし、いろいろストーリーを背負っていて、父でもある魔神(サタン)を自ら倒さなくてはいけないという使命もあるんだけど、そこも背負って突っ走れてしまう。

LiSA なるほどね。

Reol どっちに共感するかとなると、私は雪男のほうなんです。「自分なんて」と思いながらも自分が必要とされたい、でもその表現の仕方がわからないし、そのためにすごい回り道をしちゃうその姿を観ていたら「自分の人生もずっとそうだな」と思って、言いたいこと、歌いたいことが見つかったんです。私は学生時代、女子特有のグループとかにも属せなくて、適当にのらりくらりしているみたいなタイプだったから。(「青の祓魔師」シリーズの主題歌を複数回担当してきた)UVERworldが、間違いなく今まで「青エク」っていう作品を支え続けて、メッセージを放ってきた。そんなUVERworldがいわゆる主軸なんだとしたら、私はそこと対になる雪男のような人間たちの気持ちが歌えたらいいな、自分が歌うべきだなと思った。しかもちょうど雪男にスポットが当たるクールでもあったので、わりと素直に書くことができました。

LiSA 「青エク」らしく仕上がっているのに、ちゃんとReolちゃんの色もあるんだよね。

Reol そうですね。ただ、女性ボーカルがオープニングを担当させてもらうのは私が初めてなので、「青エク」という作品にどう響くかがちょっと怖いけど楽しみでもあります。