“降ってくる”たかはし、太宰治の言葉を借りる牛丸
──ここからはリーガルリリーの新譜「the Radio」についてお話を聞かせてください。たかはしさん、「the Radio」はどんな作品になったと思いますか?
たかはし 長年演奏できるような音楽を入れることができたと思います。今後、違うような音楽もやったら楽しそうだと思いました。次につながる作品になりました。
──リード曲「はしるこども」ができた背景を教えてもらえますか?
たかはし オケだけ去年にはできていて、そこから1年くらいかけて、ちまちまとメロディと歌詞を付けていきました。
──「はしるこども」というタイトルが印象的でした。
たかはし 「子供の頃の記憶と大人になる境界の記憶が入り混じっている今の心を大切にしたい」と思ったんです。子供は先に何もないのに走り出す生き物じゃないですか。走って走って、生き急いで、何回も転ぶし何回も泣くし。何年かそれを繰り返し、徐々に減速し、先へ先へ、歩くようになってしまえば、それはもう大人になってしまったということで。私は今、19歳と6カ月を迎え、減速している途中だと自分では思います。他人から見たらもう、歩いているのかもしれない。だから自身の体感速度を「はしるこども」に込めました。
──レコーディング期間を振り返ってみていかがですか?
たかはし 私はだいたい1人で曲を作っていて、家でパソコンとにらめっこしながら、ドラムの音源を打ち込んだりギターを入れたりしているので、スタジオで人が紡ぎ出す音のぬくもりに触れると笑いがこみ上げてくることもあるんです。レコーディングは人間味にあふれていて、居心地がよくて、非常に幸せでした。ライブでも思うのですが、レコーディングは、1人で音楽はできないと気付かせてくれる大切な場所……私の楽園です。
──今、曲作りの話が出ましたが、お二人はどういうときに曲ができるんですか?
たかはし 私は頭が真っ白になるときがあって、そういうときにできます。悲しいことがあったり、ハッピーになったりするときには逆に音楽が生まれなくて。なんかクズみたいな生活をしてればしてるほど音楽が生まれます。例えば3日ずっとゴロゴロしてる日の3日目に曲が生まれるんですよね、“降ってくる”みたいな。
牛丸 ああ、私も考えれば考えるほど出てこなくなるなあ。まさに今、3日後にレコーディングなんですけどまだ曲ができてなくて……「やべー」って思ってたけど、今日電車乗ってたらポンッて浮かんで。
たかはし よかった! 電車すごい! 私は自分が曲を作ってるっていうより、誰かに作らされてるみたいな感覚なんです。むしろ自分で“作っちゃった”曲はあんまりよくないんですよ。だから10分以上曲作りができない。
──お二人は詞と曲、どちらから作るんですか?
たかはし 私は一緒。メロディと一緒に歌詞も。
牛丸 同時のときもあるけど、メロディのほうが多いかな。同時にできたときはいい曲になります。いずれにしてもメロディがないと歌詞が乗っけられないですね。最近、嫌なことがあったから、詞だけビャっと書いて、そこにメロディを付けてみようって思ったんですけど、結局何もいいメロディが思い付かなかった。
たかはし 私もそう。歌詞からメロディは絶対に付けられないです。だいたいサビの歌詞とメロディが一緒にできて、そのサビから思ったことをAメロ、Bメロに書いていく感じで。SEKAI NO OWARIと出会った中学生の頃、「自分も歌詞を書けるんじゃないか」って思って、歌詞を書き始めたノートがあるんですけど、まだそれに書いてるぐらい。普段はあまり歌詞だけ書くってことはしないから。メロディがあってこその言葉なんで、言葉だけで選べない。
牛丸 私は基本的に嫌なことがあったら全部を歌詞に書いて、それでも何か足りないと思ったら太宰治の言葉を足します。初めて「人間失格」を読んだときに「これ私のことや」と思って。そこから太宰治のことがめっちゃ大好きになったんです。私の心の奥にしまっている、しまってることすら気付かないくらいの些細な気持ちを太宰は言ってくれてて。それを詞に書いちゃいます。太宰を好きな人は気付いてると思うんですが、「あのこのゆくえ」とか「バイマイサイ」とかは太宰治の言葉を借りてますね。
たかはし カッコいい……。
いつまでもバンドが逃げ道であってほしい
牛丸 yonigeを始めたときって、「こんな曲じゃ売れないだろ」っていうようなヒドい歌詞を書いてたんです。「女の子の日」(1stデモCD「女の子の逆襲」収録)みたいな、そういうちょっと恥ずかしい歌詞。それを大勢の人の前で演奏するっていうことが気持ちよかったんですよね。ライブ観てる人が明らかに「え……」って顔をしてるのを見てるのが気持ちよかった。「女だってこういうことを言えるんだぞ」「女だって強いんだぞ」って思いで。私がもともと好きだったバンドって、チャットモンチー以外はホルモンも、ラッド(RADWIMPS)も、バンプ(BUMP OF CHICKEN)も全部男性がやってるバンドなんです。だから中学生の頃は自分が女であることが本当に嫌だったんですよ。バンドを組むときも「絶対男と組みたい」って思ってて。でもクビになって、結果的にガールズバンドになっちゃって。最初は変な曲ばっかり書いて女らしくしないようにしてたんですけど、ここ1、2年くらいでバンドが認められて少しずつ世に出てからは自分が女でよかったんだなって思えるようになった。女だからこそ、こんな曲を書けてここまでこれたんだなってやっとわかりました。
たかはし 私は逃げ道としてバンドを始めたんです。本当は他人としゃべりたくないんですよ。「笑わなきゃいけない」って思うのも嫌だったし。でもライブだと無理にしゃべらなくていいし、無理に笑わなくていいから、自分を解放できる場所で。だからライブをするためにも、降ってくる感覚を頼りに、曲を書いていくしかないなと思っています。これからもバンドは逃げ道であってほしいなと思ってます。
──聴く人にとっても、リーガルリリーの音楽が逃げ道になればという思いも?
たかはし ああ、考えてなかったですけどそうなっても悪くはないですね。
- リーガルリリー「the Radio」
- 2017年7月5日発売 / Biotope records
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[CD]
1728円 / BIOTOPE-002
- 収録曲
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- トランジスタラジオ
- はしるこども
- the tokyo tower
- 高速道路
- こんにちは。
- 教室のしかく
- yonige「girls like girls」
- 2017年9月20日発売 / unBORDE / Warner Music Japan
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[CD]
2484円 / WPCL-12716
公演情報
- リーガルリリー「ムスタング vol.2」
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- 2017年9月30日(土)東京都 WWW
- yonige "girls like girls tour"
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- 公演情報
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- 2017年10月12日(木)大阪府 LIVE HOUSE OSAKA BRONZE
- 2017年10月14日(土)島根県 アポロ
- 2017年10月15日(日)兵庫県 MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎
- 2017年10月18日(水)岡山県 CRAZY MAMA 2nd Room
- 2017年10月20日(金)広島県 SECOND CRUTCH
- 2017年10月22日(日)山口県 周南RISING HALL
- 2017年10月24日(火)宮崎県 FLOOR
- 2017年10月26日(木)大分県 club SPOT
- 2017年10月27日(金)鹿児島県 SR HALL
- 2017年10月29日(日)福岡県 LIVE HOUSE CB
- 2017年11月7日(火)長野県 LIVE HOUSE J
- 2017年11月9日(木)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
- 2017年11月11日(土)神奈川県 F.A.D YOKOHAMA
- 2017年11月12日(日)東京都 下北沢Daisy Bar
- 2017年11月14日(火)埼玉県 HEAVEN'S ROCK Kumagaya VJ-1
- 2017年11月15日(水)千葉県 千葉LOOK
- 2017年11月17日(金)福島県 郡山CLUB #9
- 2017年11月18日(土)秋田県 Club SWINDLE
- 2017年11月19日(日)青森県 八戸ROXX
- 2017年11月21日(火)宮城県 仙台MACANA
- 2017年11月25日(土)北海道 苫小牧ELLCUBE
- 2017年11月26日(日)北海道 BESSIE HALL(※ワンマンライブ)
- 2017年12月3日(日)三重県 M'AXA
- 2017年12月4日(月)奈良県 生駒RHEBGATE
- 2017年12月7日(木)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
- 2017年12月8日(金)石川県 vanvanV4
- 2017年12月10日(日)福井県 福井CHOP
- 2017年12月12日(火)徳島県 club GRINDHOUSE
- 2017年12月14日(木)高知県 X-pt.
- 2017年12月15日(金)愛媛県 松山サロンキティ
- 2017年12月17日(日)香川県 DIME
- 2017年12月18日(月)鳥取県 米子 AZTiC laughs
- 2018年1月6日(土)京都府 KYOTO MUSE
- リーガルリリー
- 2014年に7月に東京で結成され、同年10月にたかはしほのか(Vo, G)、白石はるか(B)、ゆきやま(Dr)の現体制となる。2015年5月に1stミニアルバム「reagal lily」を東京都内のCDショップ3店舗にて限定発売すると、即完売状態に。6月にはチケットソールドアウトの中、東京・新宿JAMにて初のワンマンライブを成功させ、8月に行われた10代アーティストが参加できる大会「未確認フェスティバル2015」で準グランプリを獲得した。2016年は日本のライブシーンで話題のバンドでカナダを回る「Next Music From Tokyo vol.8」に参加し、初の海外ツアーを実施。同年10月に初の全国流通盤「the Post」を自主レーベルBiotope recordsからリリースし、11月に国内ツアー「『行っちゃう?!vol.1』~東名阪クエスト~」を開催した。2017年3月に東京・下北沢SHELTERにてワンマンライブ「ムスタング vol.1」を行い成功を収め、同年7月にミニアルバム「the Radio」をリリースした。
- yonige(ヨニゲ)
- 牛丸ありさ(Vo, G)とごっきん(B, Cho)からなる大阪府寝屋川市出身の2人組バンド。small indies tableの第1弾アーティストとして、2015年8月に初の全国流通盤「Coming Spring」をリリース。2016年7月に2ndミニアルバム「かたつむりになりたい」を発表し、2017年2月から3月にかけて行われたスペースシャワーTV主催のライブツアー「スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2017 ~10th ANNIVERSARY~」に参加した。同年9月に1stフルアルバム「girls like girls」をワーナーミュージック・ジャパン内のレーベルunBORDEよりリリースし、メジャーデビューを果たす。