ナタリー PowerPush - RAM WIRE

「毎日深酒」「むしろ私を励ましてよ!」ユーズ(Vo)が語る壮絶デビュー秘話

中途半端な状態で、毎日深酒ばっかり

──でも、まだ音楽は辞めなかったんですよね。

当時いつも一緒に活動していたDJが、そのオーディションの発表イベントの日に用事があって、たまたま代打で来てくれたのが現メンバーのRYLLだったんです。ライブ後に私が泣いているのを見て励ましてくれて、「まだやろうよ」って言ってくれた。それで正式に3人でやることになって、RAM WIREができるんです。

──その日たまたまRYLLさんが来ていなかったら、もう辞めていた?

間違いないですね。

──でも3人で活動することを決めても、すでにユーズさんの心は折れていたわけですよね。

ほかにすることがなかったんです。資格もないし、たいした勉強もしてない。当時はキャバクラでバイトをしていて、毎晩お酒を飲んで、それなりに楽しかったけど、そんな生活に先はないじゃないですか。それで、イベントで歌うことが自分を救ってたんだなって気付いた。それにRYLLとMONCHとは本当に気が合うから、曲を作っていると楽しくて心地いいんです。だからこの3人なら、RAM WIREとしての個性を見いだせる気がした。

──それで、また各社にデモを送ったり?

ユーズ(Vo)

そうですね。あるレコード会社さんに所属できるかもって話になって、アニメのタイアップの話まで持ってきてくれたこともありました。

──それって、ほぼデビュー確定ですよね。

ただ、そのすぐ後に、もっと大手のレコード会社さんにも声をかけていただいて……そっちのほうがメジャーへの近道なんじゃないかと迷って、大手のほうを選んだんです。まあ、結果それもうまくいかなくて。

──どうしてですか?

1年半くらいやりとりはしていたんですけど、いつの間にか連絡がなくなって、自然消滅みたいな感じで。きっとダメな部分ばかりだったんだろうけど、何が悪かったのかもわからずじまい。そこのスタッフさんが観に来てくれたライブで大失敗したこともあるし、やっぱりチャンスをつかみきれなかったんです。それがもう6年くらい前ですね。

──そのときは心は折れなかったんですか?

折れるというより、メジャーという目標自体がすでに曖昧になってた。もう熱意はなくなっていたし、夢も諦めかけていたけど、クラブでのレギュラーイベントにはそのまま出させてもらってる中途半端な状態で、毎日深酒ばっかり(笑)。

──そんな状態からメジャーデビューに至ったきっかけは?

クラブで出会った人が音楽関係の方で、RYLLのトラックを気に入ってくれて、Microさんに渡してくれたんです。そのつながりで、SpontaniaさんやJUJUさんに楽曲提供をさせてもらえた。そこからようやく動き始めた感じですよね。

「何度も」は、あがいている真っ最中の歌

──紆余曲折あってようやくメジャーデビューが決まったときは、どんな気持ちでした?

ただただ、うれしかった。本当に? ウソじゃない?って浮き足立ちましたね。でもデビューが決まったのが2008年だったから、実際にリリースされるまでも長い時間がかかったんですけどね。

──デビューアルバムが2010年ですから、2年もあったんですね。

いろんな話が出ては消えていって、なかなか曲が決まらなかったんです。だから、また自然消滅しちゃうんじゃないかって不安もあったし、その間に現実も見えちゃった。イメージしてたのはテレビの向こう側の世界であって、その裏にどんな苦労があるかをまったくわかってなかったんだなって。デビューしたらオリコン10位なんて普通に入れるもんだと思ってた。バカですよねえ(笑)。

──そんなに甘いもんじゃなかったと。

ゴールだと思っていた場所が、実はスタート地点でもなかったんだなって。レコード会社での打ち合わせで「もっとリアルな気持ちで歌を書いてみようよ」ってアドバイスされたんだけど、まったく自信がなくて、MONCHと2人で「やっぱりダメなのかな」って話しながら暗い気分で総武線に乗って帰ったことがあったんです。実はその日の夜に書いたのが、今回リリースした「何度も」なんです。電車でMONCHが大きなため息をついて、私が「そのため息右に同じ」って言ったフレーズが、そのまま歌詞になっています。

──そうなんですか! 確かにこの曲って、迷っていた過去を回想するというより、悩みの渦中にいる苦しみを感じますよね。

そうですね。まさにあがいてる真っ最中の歌で、光があったと思ったらやっぱり出口が見えないし、どうしたらいいかわからない。夜に1人で、泣きながら書きましたから(笑)。だからデビュー曲のリリースがようやく決まったときも、うれしさより不安のほうが大きかったんです。メジャーの現実も知ったし、もう30歳も過ぎていたし、これから産みの苦しみを味わいながら制作を続けていくと思うと怖くて。マリッジブルーじゃないけど、メジャーブルーみたいな心境で。

──メジャーブルー! 新しい言葉ですね。

それはスタッフさんにも伝わってたと思います。「ユーズちゃん、本当にデビューしたいの?」って。

──メジャーブルーは克服はできたんですか?

いや、動揺したままデビューしちゃいました(笑)。初ライブなんて、ガチガチでひどかったですもん。

1stアルバム「タイトル未定」2013年5月1日発売 / Sony Music Associated Records / 初回限定盤[CD+DVD] 3780円 / 通常盤[CD] 3059円
1stアルバム「タイトル未定」
CD収録曲
  • Beautiful World
  • 歩み
  • 名もない毎日
  • 大丈夫、僕ら
  • 何度も
  • ALIVE
  • PRESENT
  • わたしあうもの

ほか全12~14曲収録予定

初回限定盤DVD収録内容
  1. Beautiful World
  2. 秘密
  3. 歩み
  4. 名もない毎日
  5. 大丈夫、僕ら
  6. 何度も
RAM HOME Vol.4

2013年6月15日(土)東京都 代官山UNIT

OPEN 17:30 / START 18:00
チケット一般発売中

RAM WIRE(らむわいやー)

ユーズ(Vo)、MONCH(Vo)、RYLL(Trackmaker, DJ)の3人からなるユニット。2001年、千葉のクラブを拠点にユーズとMONCHの2人で活動を開始し、2005年よりRYLLが加入する。その後はライブや自主制作盤のリリースなどを中心として活動を展開。2008年にはRAM WIREと並行してトラック制作を続けていたRYLLの楽曲が、Spontania feat. JUJUのシングル「君のすべてに」としてリリースされる。これがきっかけとなりRAM WIREも大きな注目を集め、2010年にミニアルバム「Beautiful World」でメジャーデビューを果たす。2011年9月リリースのシングル「歩み」は映画「僕たちは世界を変えることができない。But, we wanna build a school in Cambodia.」の主題歌に起用されてスマッシュヒットを記録した。2012年6月、ミニアルバム「名もない毎日」を発表。タイトル曲のビデオクリップはお笑い芸人・鉄拳によるパラパラマンガで構成され、話題を呼んだ。2013年2月には3rdシングル「何度も」をリリースしている。