Ram|強くない本格R&Bシンガーが語る女子のホンネ

R&Bシンガー・Ramが、1月24日にニューアルバム「Just As I Am」をリリースした。本作を手がけたのは、DJ PMX、ZOT on the WAVE、KNUX a.k.a. Mr. Austinといったヒップホップ、 R&Bシーンのトッププロデューサーたち。彼女が表現するのは、ブラックミュージックのステレオタイプなイメージではなく、現代の日本を生きる“強くない”女性の姿だ。繊細な感性と最先端のサウンドが一体になったアルバムについて、Ramに話を聞いた。

取材・文 / 宮崎敬太 撮影 / 鈴木大喜

ようやくつかんだチャンス

──RamさんはAKB48の派生ユニットとして誕生したDIVAの元メンバーなんだとか。

Ram

2011年に追加メンバーを一般公募するタイミングで受けたら、奇跡的に受かっちゃいました(笑)。最初は信じられなかったけど、ずっと歌いたかったからうれしかったですね。私は小中学生の頃に大阪のアクターズスクールに通っていて、定期的にグループで発表会をしていたんです。発表会でフロントに立てるのは歌がうまい子なんですよ。私は負けず嫌いなとこがあるので、フロントで歌いたいとずっと思っていたんです。

──DIVAに加入して、長年の夢が叶ったわけですね。

それがそういうわけにもいかなくて。AKB48などで活躍しているメンバーが中心のユニットだったので、DIVAとしての定期的な活動ができなかったんですよ。個人的にもモチベーションを維持するのは難しかった。だけど、みんなと苦労してきた日々は本当に素晴らしい経験だったので、解散ライブでは号泣してしまいました。

──DIVA解散後、Ramさんは日本のウエストコーストスタイルのヒップホップの第一人者・DJ PMXさんによるオーディション「HOOD SOUND AUDITION」に受かります。

事務所の人が「このオーディション、興味ある?」って勧めてくれたのがきっかけでした。その頃の私は、まだ日本のヒップホップやR&Bのことをよく知らなくて。でも事前に映像とかを観たらすごくカッコよかったので「やりたい!」と即答でした。

──オーディションのとき、PMXさんにどんなことを聞かれましたか?

「君、免許持ってる?」って(笑)。

──ウェッサイの文化には車が欠かせませんからね(笑)。

Ram

パブ(PMX)さんは本当は優しい方なんですが、とにかく無口なんですよ。だからオーディションのときはすごく緊張してしまいました。しかも私は「免許は持ってません」って普通に答えちゃって。緊張しすぎて質問の意図がわかりませんでした(笑)。だからたぶん受からないと思ってたんです。

──合格した理由をPMXさんから聞きましたか?

いえ、パブさんは本当に無口なので(笑)。パブさんが雑誌で「自分のイメージと完璧にマッチした」と答えてるのを読んで、初めて私も合格した理由を知ったくらいです。でも合格できたのはうれしかった。1人の歌手としてフロントで歌いたいという思いを、ようやく叶えるチャンスをつかめたので。母も小さい頃から応援してくれていたから、絶対にがんばろうと思いました。

恋愛感情の繊細なニュアンスを伝えたかった

──今回のメジャーデビューアルバム「Just As I Am」はどんな作品ですか?

長い時間をかけてこつこつと制作したタイトル通りのアルバムです。

──制作面では歌唱以外で関わったことはありますか?

ソングライターさんが歌詞を書くベースとなるストーリーを書きました。アルバム全体で「パーティで素敵な男性に出会うけど、その人には相手がいた」という内容にしたかったんです。ありきたりな話なんですけど、その状況に置かれた女性の心境を歌いたかったんですよ。

──なぜそういったテーマを歌おうと思ったんですか?

私の周りにそういう恋愛をしている人が多いからですね。不倫とか、彼女のいる男性を好きになってしまったりとか。そういうのって世の中的にはあまりいいこととはされていませんけど、相手がいる男性と恋愛関係になっている二十代の女性ってすごく多いと思うんです。アルバムでは、特に歳上の男性を好きになって背伸びした気分になってる女性のことを歌っています。

──特に気に入ってる曲はありますか?

Ram

「U & Me」はすごく気に入ってます。切なさとかメロディとか。この曲は気になった人に相手がいたことに初めて気付いたときをイメージした曲なんです。その微妙な心境を表現したかったんですよ。自分にもこういう経験があるから、歌いながら「この曲、ちょっと懐かしい」って思っちゃいました(笑)。

──歌詞のストーリーを作るうえで影響を受けたものはありますか? 映画とか、音楽とか。

友達との生々しい会話ですね。私も含めてみんな他人の恋愛にはいろいろ言うくせに、自分がそういう状況に置かれると全然客観的になれなくて恋は盲目な状態になっちゃう(笑)。例えば、不倫している女性はクリスマスを彼と一緒に過ごせないことが多いんです。結婚している人は家族が第一だから。客観的には「そんなことされても好きなのっ!?」って思うけど、きっと自分がその立場になったら「そんなの気にしない」って思えちゃうんです。そういう屈折した気持ちを表現したかった。でもソングライターさんは男性の方だったので、なかなか女性の気持ちの繊細なニュアンスが伝わらないんですよ。だから何度もディスカッションしました。

──それはなかなか難しそうですね。

そうですね。こういう恋愛のシチュエーションだと、チャラチャラした男性が登場しがちなんですが、そういうことではないんです。あくまで普通の歳上の男性なんですよ。でもその人には相手がいるっていう。そういうとき、女の子は相手に合わせてちょっと背伸びしちゃって、自分の気持ちに素直になれないんです。初めて歳上と付き合うから、どうやって自分を表現していいかわからなくて。その感じも歌詞に出したいと思いました。

Ram「Just As I Am」
2018年1月24日発売 / Victor Entertainment
Ram「Just As I Am」

[CD]
3024円 / VICL-64874

Amazon.co.jp

収録曲
  1. Introduction
  2. Party Out
  3. Let's Move On feat. KOWICHI
  4. Break Upして feat. AYA a.k.a.PANDA
  5. U & Me
  6. Girls Party feat. Kayzabro (DS455), DJ DEEQUITE
  7. Fade away
  8. tears
  9. Outro
  10. Fade away (lutez remix)
Ram アルバム「Just As I Am.」
発売記念インストア・イベント
  • 2018年2月12日(月・振休)
    大阪府 タワーレコード難波店 5F イベントスペース
    OPEN 13:30 / START 14:00
Ram(ラム)
Ram
大阪出身の女性R&Bシンガー。Ramというアーティストネームは本名の福野来夢(ふくのらむ)から付けられた。芸能一家で育ち、幼少期には劇団やアクターズスクールに入るなど、早くから芸能の道を目指す。2011年にはAKB48の派生グループDIVAのオーディションに合格し、新メンバーとして加入するも、同グループが2014年に解散する。そんな中2015年に行われたDJ PMXによる女性シンガー発掘オーディション「HOOD SOUND AUDITION」に合格。翌2016年にPMXプロデュースによる作品「Ram」でソロとしてCDデビューを果たした。2018年1月にはニューアルバム「Just As I Am」を発売した。