音楽ナタリー Power Push - 平井拓郎(QOOLAND)×三浦隆一(空想委員会)対談
平井拓郎(QOOLAND)
三浦隆一(空想委員会)
インディーズとメジャーシーンで邁進中 それぞれが考える音楽の届け方
QOOLANDが最新アルバム「COME TOGETHER」をリリースした。今作は今秋に事務所を離れた彼らが、クラウドファンディングによって募った資金をもとに完成させたファン参加型のニューアルバム。今回音楽ナタリーでは、メジャーレーベルに在籍ながらも“インディーズ感”を失わない空想委員会に平井拓郎(Vo, G)がシンパシーを感じていることから三浦隆一(Vo, G)を招いての対談を行った。
QOOLANDは自主企画「大平和祭り」を全国各地で行ったほか、パートチェンジをした音源を発表するなどユニークな活動を展開。そして空想委員会はインディー時代から変わらないこだわりを色濃く反映させた作品作りや、「空想トラベル」と銘打ったライブ観覧ツアーを実施するなどそれぞれ独自の企画を自ら実行している。インディーシーンにいる平井はQOOLANDにとって新たな試みとなったクラウドファンディングがバンドにもたらした影響について言及。また三浦は9月に東京・日本武道館で、憧れの存在であるPerfumeの主催ライブイベント「Perfume FES!! 2015 ~三人祭~」への出演を果たすなど、着実にステップアップしているバンドの現状を語り、両者で互いの活動スタンスについて意見を交わした。
取材・文 / 小野島大 撮影 / 入江達也
撮影協力 / レインボー倉庫3(東京・下北沢)
「大歌の改新」で知り合った2人
──お2人は知り合ってから長いんですか。
平井拓郎(QOOLAND) 「大歌の改新」(2014年11月30日、12月2日に開催された空想委員会主催の対バン企画)が最初ですね。そのあとに三浦さんがパーソナリティをしているレインボータウンFMの「ミュージックデリバリー」に出させてもらって。今年の5月にはQOOLANDの自主企画「大平和祭り」に出てもらって。
三浦隆一(空想委員会) だから実は知り合ったのは最近なんだよね。
平井 でもそのわりにはよく会ってる気がします。大阪の「見放題2015」の打ち上げでは三浦さんがビールおごってくれました(笑)。
三浦 うん、けっこう絡んでるね、ビールおごるくらいには(笑)。QOOLANDはみんな人がいいので話しやすいんですよ。
──音楽的にも共感するものがある?
三浦 そうですね、「大歌の改新」には僕らがカッコいいと思うバンドしか呼んでいません。タッピング奏法をあんなに自然に楽曲に採り入れるバンドってほかにいないですから、僕らにはできないことをやってると思うし。
──平井さんは空想委員会についてどんな印象を持っていますか。
平井 端的に言うといい歌が本当に多いバンドだなって思います。アコギだけで弾き語っても歌の魅力が伝わってくるんじゃないかなってくらい。
三浦 ああ、それはありがたいですね。
平井 空想委員会の楽曲はリズムとかリフに依存してる音楽じゃなくて、メロディと歌詞の乗せ方がいいなと。自分たちもタッピングはしてますけど、メロディしかり、歌詞しかり、楽曲自体のよさはかなり大事にしてるので。
タッピングは歌を際立たせるためのもの
──2組の音楽からいろんな装飾を除くと、最後には何が残りますか? つまりそれぞれの音楽の「核」にあるものはなんでしょう。
平井 QOOLANDは「歌詞」が残ると思います。
三浦 空想委員会は完全に「歌」ですね。
平井 ライブハウスによって音のいい悪いはありますけど、空想委員会はすぐ歌がわかりますね。音が悪いと歌がわからなくなっちゃうバンドってけっこういますから。でも空想委員会はどんな環境でも歌がわかると思います。
──歌がわかるバンドとそうでないバンドは何が違うんですか。
三浦 空想委員会の場合、メンバー全員、歌を引き立てるために演奏してくれるんです。アレンジも歌を生かすためのものだって考えですし。
──それはバンド内でコンセンサスが得られてるんですね。
三浦 はい。QOOLANDにもそれは感じる。歌詞を引き立たせるためにタッピングがあるというか。
平井 そうですね。あくまでも歌詞ありきで。それを乗せるためのリフをよりよくするためにタッピングをしている、というだけだから。あとは音色が……。
三浦 キラキラしてる(笑)。
平井 ギターの音も昔より歪みを抑えてますしね(笑)。
──それらはすべて歌詞を生かすためのもの?
平井 ですね。
──QOOLANDは演奏技術が高いのにテクニックをひけらかす方向にいかない。楽器がうまい人は、自分の演奏技術を聴かせたいという欲がありそうな気がするんですが。
平井 それはあまりないですね(笑)。
三浦 あははは、ないの?
平井 タッピングはバリバリやってますけど、意外とないです。
三浦 そこはバランス感覚ですよね。タッピングには飛び道具的な要素があるけど、歌が出るとこは出るし、演奏が出るとこは出るし。押し引きがあるから聴いてて飽きない。
平井 ひけらかさないとは言いつつも、間奏とかではミュージシャンシップ的なエゴが出てるかも(笑)。
三浦 でもお客さんにはテクニック的なところってなかなか伝わりづらいから大丈夫なんじゃない?
平井 QOOLANDを観に来るお客さんはタッピングとかどうでもいいと思ってるかも(笑)。あくまでも曲がいい、歌詞がいい、ライブが楽しいってことで来てくれてるんじゃないかと思ってます。
次のページ » クラウドファンディングでファンとの距離が縮まった
収録曲
- Come Together
- Shining Sherry
- セレクト(うーっはーっ!!)
- ある事無い事
- 一つの法則
- ループは止まった
- 言えない人が言えてたら
- 叫んでよ新宿
- ラストセンサー
- ゆとり教育概論
- Today Today Today & Yesterday
収録曲
- 僕が雪を嫌うわけ
- 私が雪を待つ理由
QOOLAND(クーランド)
2011年10月14日に新宿で結成。平井拓郎(Vo, G)、菅ひであき(B, Cho)、タカギ皓平(Dr)、川﨑純(G)からなる4人組ロックバンド。2013年5月に初の全国流通盤となるフルアルバム「それでも弾こうテレキャスター」を自主レーベル・下高井戸レコードからリリースした。同年、アマチュアバンドコンテスト「RO69JACK 2013」でグランプリを獲得。2015年の夏にはクラウドファンディングを使用した「ファン参加型アルバム制作プロジェクト」を実施。目標額を大きく上回る200万円の資金調達に成功し、フリーライブを行うなどしてファンを喜ばせた。また全国各地で自主企画「大平和祭り」を開催し、Suck a Stew Dry、ircle、LEGO BIG MORL、空想委員会、cinema staff、オワリカラといったバンドを招いての対バンライブを展開。2015年12月9日にクラウドファンディングの資金をもとに制作したファン参加型の2ndフルアルバム「COME TOGETHER」をリリースする。
空想委員会(クウソウイインカイ)
三浦隆一(Vo, G)、佐々木直也(G)、岡田典之(B)からなる3人組ロックバンド。ときに儚く、ときに毒々しい、リアルな歌詞が高い共感を呼んでいる。2011年にリリースしたインディーズデビュー作「恋愛下手の作り方」がタワレコメンに選ばれ、一気に知名度を上げた。その後もハイペースでCDをリリースし、各地のイベントやフェスに出演。2014年2月にはゲスの極み乙女。との共同ツアーを開催して話題を集めた。2014年6月にキングレコードから「種の起源」をリリースし、メジャーデビュー。2015年2月に東京・Zepp DiverCity TOKYOでバンド史上最大規模のワンマンライブを行い、7月にはミニアルバム「GPS」を発表した。その後多数の夏フェス出演を経て、9月には東京・日本武道館でPerfume主催のライブイベント「Perfume FES!! 2015 ~三人祭~」に参加。12月6日に両A面シングル「僕が雪を嫌うわけ / 私が雪を待つ理由<完全限定生産>」を発売する。