クアイフ|「いぬやしき」ED曲で“死”という日常を歌う

三輪の人生を背負った内田

──森さんは以前組んでいたバンドのときとクアイフのときとで、スタジオに入ってみて何が一番違うと感じましたか?

 以前のバンドは私を含めて初心者だったのと、アイデアを出してくるようなメンバーがいなくて、曲やアレンジを全部私1人で決めていたんですね。みんなでアイデアを持ち寄って作品が完成することの魅力を感じたことがなかったので、「だったら1人でやればいいじゃん」ってソロアーティストになったんです。でもクアイフでは1回スタジオに入っただけで「わっ、この曲がこうなるんだ」っていう感動がありました。当時の三輪の激しいドラムも個性になってたし(笑)、「この人たちとならきっと面白いことができるだろうな」って。

──内田さんはどうですか?

内田旭彦(B, Cho, Prog)

内田 前にやってたギターロックバンドはボーカルと僕の音楽の趣味が合って、それはそれですごくよかったんですけど、曲を作るうえで勝手に「こうでなきゃいけない」と縛られていた部分があったんです。だからこそ「いろいろ経験してまだ見ぬものを作りたい」と思ってサポート活動も始めて。で、クアイフでスタジオに入ったらそれぞれ音楽の好みや性格が違いすぎるし、いろいろまとまらなすぎて逆に面白いなと思えました。

──ちなみに当時激しいドラムを叩いていた三輪さんをクアイフに誘おうと思った理由は?

内田 前のバンドで前任のドラマーが辞めたとき、僕が大学で一緒のサークルだった幸宏を誘って入ってもらったという経緯があって。そのときに「幸宏も含めて、音楽で食えるようにしたい」って勝手に思ったんです。でもそのバンドが大学卒業のタイミングで解散になっちゃって、自分の中でそれがすごく残念で。だからもう1回、ちゃんと責任取らないとって……。

 幸宏の人生を背負ったんだ(笑)。

三輪 めちゃくちゃいいヤツやん(笑)。

内田 だから森に「バンド組もうよ」って声をかける前に、幸宏には「バンド組むから就職しないで待ってて」って言ってました。

三輪 僕は前のバンドが解散するって決まったときに、バンドに対して「そろそろ潮時かなあ」「音楽から離れよう」って思って普通に就活してたんですよ。そんな感じでドラムからちょっと離れてたタイミングで、内田から詳細を何も知らされないまま「新しくバンドやるから練習しといて」みたいな電話がかかってきたんです。そこから一緒にスタジオ入るまで半年ぐらい間が空いたんですけど(笑)。

内田 何も決まってないけど、そうやって言っておかないと辞めそうだなって。

──森さんと三輪さんが知らないところで、内田さんの思いは決まってたんですね。

内田 そうです。やるってゴールは決めていて、そのためにどうしたらいいかなって考えてました。

 責任感があっていいヤツなんだけど、勝手ですよね(笑)。

内田の作詞曲を歌うことへの葛藤

──クアイフとして活動を始めて曲を作りましょうとなったとき、誰が主導権を握っていたんですか?

 私がシンガーソングライターで、内田がバンドメンバーという関係性から始まったので、結成当時はほとんど私が曲を作ってました。でも内田も作詞作曲ができるので、途中から内田の曲も増えてきて。2人で曲を持ち寄って、スタジオで練るというスタイルになっていきましたね。

──今のクアイフの曲は、内田さんが作詞や作曲をしたナンバーも多いですよね。内田さんの作る曲が増えていく中で、もともとソロ活動していた森さんとしては葛藤はありませんでしたか?

 ありましたね。そもそも最初は、人が作ったものをちゃんと理解して自分のものとして歌うまでに時間がかかって。「これどういう意味?」とか「私はこうは思わないんだけど」とか……それは今も言ってますけど(笑)。自分から生まれてきた感情のように歌えないといい歌にならないと思っているので、ちゃんと納得できるまでひたすら内田と話しますね。

──葛藤を越えて、今は納得して歌えてるんですね。

 そうですね。内田が書いた女性目線の歌は、例え自分の経験と細かいシチュエーションが違っても共感できるフレーズがあるんです。今はホントに「この曲自分が作ったんだっけ?」くらいの感覚で歌えています。

内田 女性と男性って違う生き物だとは思うんですけど、恋愛の曲を書くうえで重なってる部分も実はけっこうあって。そういう共通点をまず抜き出して作ってます。森が歌う曲だから主観が入りすぎたらいけないけど、曲が軽くなりすぎないように僕も感情を入れるし、彼女も感情を込めて歌えてると思います。

三輪幸宏(Dr)

三輪 内田が作詞作曲を始めた当初は、歌詞を見て「あっ、これは内田が作ったほうだな」ってわかったんですよ。でも今は歌が入った状態でデモが来たときに、どっちが作ったのかわからないんです。そのぐらい内田も考えて作ってるし、森も曲のメッセージを消化して歌えてるのかなって思います。

──先にカップリングの話になってしまいますけど、今回のシングルに収録される「セツナロマンチック」の歌詞、とってもかわいいですよね。内田さんの作詞だと知ってとびっくりしました。

 女性よりロマンチックですよね(笑)。「こんなこと女性は思わないよ」って意見することもあるんですけど、歌ってみると意外とキュンと来るなって。自分だったら恥ずかしくて書けないようなフレーズを内田が書いてきたりすると、「なるほどな」って思う部分もあります。

ありのままの森彩乃

──歌詞は、内田さんの「このバンドをどのように見せるか」という視点も計算されたものなのですか?

内田 うーん……今はあまり意識してないですね。でも今のレーベルに所属する前は、歌詞も含めてプロデューサー目線みたいな部分があったかもしれません。「バンドとしてどう見られるのが自分らにとっていいんだろう」「森彩乃っていうボーカルがどう見られるのが、僕らにとって似合ってるんだろう」とか。そこは森と三輪も考えてた部分なんですけど、今は結果的に“森彩乃は森彩乃でしょ”っていうところにたどり着きました。

──内田さんにとって“森彩乃”とは?

内田 たぶん話してておわかりだと思うんですけど、男っぽいと言うか。

──確かに見た目はすごく可憐ですけど、ライブでも男気のようなものを感じました。

 え、私そんなに男らしくないよね?

内田 いや、男らしいよ(笑)。

──三輪さん的にはどうですか?

三輪 なんて言うか、根本は男なんですよね。

 えーっ! 性別!(笑)

三輪 乙女で覆われてるけど、芯は男らしいと言うか。だからライブや曲でも感情が振り切れてるところがあるんですよね。

──「やってやるぞ」というエモーショナルな感じは、活動初期の頃の曲に顕著に表れてますよね。

森彩乃(Vo, Key)

 はい、もう戦闘モードでしたね。シンガーソングライターで1人でやってたからこそ、バンドをもう1回組むってなったとき「男ボーカルのバンドに負けたくない」という気持ちがめちゃくちゃ強くて。だから初期のクアイフには恋愛の曲があまりなかったんです。シンガーソングライターのときはむしろそういう曲が多かったんですけど、バンドとなると女を出したくないって思ってました。昔のライブ音源とか聴くと……ヤバいよね?(笑)

内田三輪 うん(笑)。

 「行けるかあ!」「行くぜえ!」みたいな、プロレスラーのような勢いで(笑)。この間、バンドで車移動してるときに昔のライブ音源が出てきて聴いてみたんですけど、「お客さんビビるっしょ」って笑っちゃいました。そういうカッコいい女性ボーカルのバンドもいると思うんですけど、私たちにはピアノメインのしっとりした曲もある中で、なんか辻褄が合ってなかったと言うか。

内田 当時はそういう森のエモーショナルな部分が、クアイフのライブや曲にどのくらい出てることが正しいのかなあって考えてて。でも、結局女の人には女の人のよさがあるっていうところに落ち着きました。今はいい意味でバランスが取れてると言うか、ありのままなんですよね。ありのままに近い森が実は一番きらめくってことに全員が気付いたんです。

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死は日常的なもの

クアイフ「愛を教えてくれた君へ」
2017年11月29日発売 / EPICレコードジャパン
クアイフ「愛を教えてくれた君へ」期間生産限定盤

期間生産限定盤 [CD+DVD]
1500円 / ESCL-4948~9

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クアイフ「愛を教えてくれた君へ」通常盤

通常盤 [CD]
1200円 / ESCL-4947

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期間生産限定盤CD収録曲
  1. 愛を教えてくれた君へ
  2. セツナロマンチック
  3. 愛を教えてくれた君へ(TV Size Version)
  4. 愛を教えてくれた君へ(Instrumental)
  5. セツナロマンチック(Instrumental)
通常盤収録曲
  1. 愛を教えてくれた君へ
  2. セツナロマンチック
  3. 愛を教えてくれた君へ(Instrumental)
  4. セツナロマンチック(Instrumental)
期間生産限定盤DVD収録内容
  • TVアニメ「いぬやしき」エンディングノンクレジット映像収録

ライブ情報

クアイフ Live Tour “愛を教えてくれた君へ”
  • 2018年2月18日(日)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
  • 2018年2月24日(土)東京都 LIQUIDROOM
  • 2018年2月25日(日)愛知県 DIAMOND HALL
クアイフ
クアイフ
“絶対的、鍵盤系ドラマチックポップバンド”をキャッチコピーとする3人組バンド。2012年3月、音楽大学のクラシックピアノ科出身で数々のコンクール受賞歴のある森彩乃(Vo, Key)と、内田旭彦(B, Cho, Prog)、三輪幸宏(Dr)というメンバーで結成された。2014年3月に1stフルアルバム「クアイフ」、2015年6月に1stミニアルバム「organism」を発売。「organism」は「第8回CDショップ大賞2016」の東海ブロック賞を受賞した。2016年からは拠点である愛知県名古屋市のプロサッカークラブ・名古屋グランパスのオフィシャルサポートソングを担当。同年4月には2ndミニアルバム「Life is Wonderful」をリリースした。2017年11月にフジテレビ系「ノイタミナ」枠のテレビアニメ「いぬやしき」のエンディングテーマを表題曲としたシングル「愛を教えてくれた君へ」でEPICレコードジャパンよりメジャーデビュー。