ナタリー PowerPush - Pay money To my Pain
ラウドロックシーンに遺した"遺伝子"の秘密
Pay money To my Painがニューアルバム「gene」をリリースする。本作は2011年1月発売の3rdアルバム「Remember the name」に続くオリジナルアルバムであると同時に、昨年末に急逝したK(Vo)の遺作でもある。アルバムにはKが生前録音した楽曲に加え、PTPをリスペクトするボーカリストたちをゲストに迎えた楽曲を収録。変則的な内容ではあるものの、聴けば「これぞPTP」と断言できる力作に仕上がっている。
今回ナタリーではこのアルバムの魅力を探るべく、メンバーのPABLO(G)、T$UYO$HI(B)、ZAX(Dr)にアンケートを実施。アルバム制作から完成までの道のり、そしてKを失ったことに対する今の思いを答えてもらった。さらにこのアルバムを軸に広がる、現在の日本のラウドロックシーンについてのテキストも掲載。これらのコンテンツを通じて、PTPというバンドの神髄、そして「gene」というアルバムのすごさに触れてほしい。
構成・文 / 西廣智一
Pay money To my Pain アンケート
PABLO
Q1. アルバム「gene」の方向性について、制作開始時はどのように考えていましたか?
3作目(2011年1月発売のアルバム「Remember the name」)で2006年からリリースを始めてきたことの答えを提示しきったという気持ちがあったので原点に帰りたいという思いが出発点です。「This life」や「Pictures」という曲で得た経験が非常に影響してます。
Q2. 制作はいつ頃からスタートし、完成までにどれくらいかかりましたか?
2012年1月~2013年10月
Q3. 昨年の時点で、今作のバックトラックのすべてを録り終え、Kさんのボーカルも一部入れ終わっていたと聞きました。そのKさんのボーカルをそのままに、歌を入れられなかった曲に外部の別のボーカリストを招いて完成させるという変則的な方法について、正直どう思いますか?
今回のアルバムでのリリースの仕方を変則的だとは感じていません。迷いがなかったのか?と問われたとき。まったくなかったと言えば嘘になります。が、今回のアルバム自体がPTPの回答であり、最高到達点だと捉えています。
Q4. 多数のゲストボーカリストが参加していますが、誰か1人に絞らず曲ごとに変えた理由は?
偏ることによって変な印象を持ってほしくないというのもありますし、歌ってほしい人の候補が自然と数人出てきたのでその人たちの特性や個性をイメージしてそれぞれ頼みました。
Q5. ゲストボーカリストはどういう基準で選び、声をかけましたか?
Kが個人的に親交もあり、ボーカリストとして尊敬していたボーカリストを選びました。
Q6. ゲストボーカリストが歌うPay money To my Painの楽曲を聴いて、感じたことはありますか?
心情的にも音楽的にもハードなことに向き合って取り組んで最高のトラックを残してくれたことへの感謝の気持ちが一番大きいです。
Q7. アルバム「gene」が完成し、発売を前にした現在の心境は?
不思議な気持ちです。非常にナーバスです。
Q8. Kさんが亡くなってからまもなく1年が経とうとしています。Kさんが亡くなったと初めて聞いたとき、どう思いましたか? また、皆さんにとってKさんとはどういう存在でしたか?
思考が停止しました。徐々に実感を得てきて、夜明け前の路上で独りで歩くことができず、ずっと泣いてました。Kは自分の才能を引き出してくれた恩人でもあり、1人の人として尊敬していました。
Q9. Kさんの命日に当たる12月30日にはZepp Tokyoで「From here to somewhere」と題したライブがありますが、どういう内容のものになるんでしょうか?
内容は極秘です!
Q10. 皆さんにとってPay money To my Painとは?
一言でいうなら、すべてです。
T$UYO$HI
Q1. アルバム「gene」の方向性について、制作開始時はどのように考えていましたか?
1曲の中にミックスさせずに、激しい曲は激しい曲。メロウな曲はメロウな曲に振り切ろうという話が出てましたね。
Q2. 制作はいつ頃からスタートし、完成までにどれくらいかかりましたか?
2012年1月に行なったライブ「LIVE40」が終わったあと、本格的な制作モードに突入してリズム隊は5月、ギターのベーシックは6月には終わってたけど、K待ちの状態が続いてました。結局リリースが2013年11月13日なので約1年半かかりましたね。
Q3. 昨年の時点で、今作のバックトラックのすべてを録り終え、Kさんのボーカルも一部入れ終わっていたと聞きました。そのKさんのボーカルをそのままに、歌を入れられなかった曲に外部の別のボーカリストを招いて完成させるという変則的な方法について、正直どう思いますか?
まあ、どうもこうもないというか。そりゃ全曲Kに歌ってほしかったけど、こういうことになってしまったわけで……。じゃあどうするか?ってなって、(1)歌った曲しかいれない、(2)歌がないものはインストで収録する、(3)歌がないものはゲストボーカルに歌ってもらう、という選択肢の中、今回こういうカタチをとったわけで。人により意見はさまざまだと思うけど、俺たちはベストな選択だったと思っています。
Q4. 多数のゲストボーカリストが参加していますが、誰か1人に絞らず曲ごとに変えた理由は?
PTPのボーカルはKなので、ほかの誰か1人に歌ってもらうって発想自体がなかったすね、俺は。なんかそれだと引継ぎみたいな印象を受けるので……。K含め、俺たちが好きなSnotの「Strait Up」というアルバムのイメージが浮かんだってのもあります。
Q5. ゲストボーカリストはどういう基準で選び、声をかけましたか?
親交があるバンドマンの中から、「あいつはすごいな」と、Kが一目置いてる人で、その楽曲イメージに合う人。レコード会社がどうとかそういうことはまずは一切関係なしに、メンバーから直接連絡して頼みました。
Q6. ゲストボーカリストが歌うPay money To my Painの楽曲を聴いて、感じたことはありますか?
最初からその人の曲なんじゃないか?と思うようなクオリティーと世界観を感じて、すごいなと思いました。Kはもちろん、やはり「自分」というものを持っている本物のボーカリストは違うなあと。
Q7. アルバム「gene」が完成し、発売を前にした現在の心境は?
時が経ちいろいろ思うことはありますが、とにかく早く皆のもとに届けたいです。でも買っても聴けない人は、無理せずに聴けるようになったら聴けばいいと思う。思いの強い人は、大事に大事に聴いてほしい。Kの死後にPTPを知って、正直あまり知らないけど……って人も遠慮せずに手にとってほしい。ゲストボーカルの人のファンだからって人も、それがきっかけでもいいから聴いてほしい。とにかくまずはアルバムを聴いてほしい。それぞれが、それぞれの気持ちで聴いてくれればいいと思います。
Q8. Kさんが亡くなってからまもなく1年が経とうとしています。Kさんが亡くなったと初めて聞いたとき、どう思いましたか? また、皆さんにとってKさんとはどういう存在でしたか?
Kの母親から連絡が来たんですが、全然現実味がなくて、どこか冷静でした。そこから俺はメンバー、スタッフ、友達に1人ずつ電話で連絡しなければならなかったので、最初は正直悲しむタイミングもなかったかな……。俺にとってKはバンドのメンバーでもあるけど、プライベート含め人生のパートナーでした。というか、これからも一緒ですけどね。その姿を見ることや、相談や、新しく曲を作ったりすることはできないけど、日常のふとしたとき。すぐそばにいて今も毎日をともにしている……。俺はそう感じています。
Q9. Kさんの命日に当たる12月30日にはZepp Tokyoで「From here to somewhere」と題したライブがありますが、どういう内容のものになるんでしょうか?
いろいろな憶測はあると思いますが、誰が出演するかってことも言ってなければ、「ライブ」をやるとも一言も言ってないんですけどね(笑)。これは個人的な意見かもしれませんが、俺が観せたいことはよくも悪くも「PTPは4人でPTP」ってことです。
Q10. 皆さんにとってPay money To my Painとは?
人生のど真ん中にある大事なもの。誇りですかね。
収録曲
- gene(Instrumental)
- Sweetest vengeance(Album mix)
- Last wine
- Truth fragile
- Respect for the dead man <featuring Ken&Teru from Crossfaith>
- God drive <P.T.P×KYONO from WAGDUG FUTURISTIC UNITY/T.C.L>
- Invisible night ~murderer~
- Resurrection <P.T.P×Masato from coldrain & 葉月 from lynch.>
- Innocent in a silent room
- Illumination <P.T.P×JESSE from RIZE/The BONEZ>
- Voice <P.T.P×Taka from ONE OK ROCK>
- Rain
ライブ情報
From here to somewhere
2013年12月30日(月)
東京都 Zepp Tokyo
OPEN 18:00 / START 19:00
料金:前売 3900円 / 当日 5000円
チケット一般発売日:2013年12月1日(日)
Pay money To my Pain
(ぺいまねーとぅまいぺいん)
2004年、GUNDOGの活動を停止させたK(Vo)を中心に結成。2006年12月にシングル「Drop of INK」でメジャーデビューを果たす。英語詞で歌われるラウドロックサウンドと、Kのエモーショナルなボーカルで着実に人気を高めていく。2008年にK、PABLO(G)、T$UYO$HI(B)、ZAX(Dr)の4人編成となり、「SUMMER SONIC」や「AIR JAM」といった大型フェスに出演。またDeftonesやEvanescence、Suicidal Tendenciesなど海外アーティストとも競演し、話題を集めた。今後のさらなる飛躍が期待されていたが、2012年12月30日にKが急逝。2013年11月、すでに制作が終了していた楽曲と、ゲストボーカルを迎えた楽曲からなる4thアルバム「gene」をリリースする。