もともとキャラゲーに寄ってた
──「Project DIVA」は2009年7月にシリーズ第1作が発売になったソフトですが、当時のことは覚えていますか?
kz 覚えてます。OSTERは最初に「Project DIVA」用の書き下ろし曲の話をもらったときのこと、覚えてる?
OSTER 「雨のちSweet*Drops」とか「マージナル」のときかな。確か最初はアーティストごとにストーリーがあったんですよね。
kz そうそう。開発初期の頃は「Project DIVA」ってキャラゲーに寄った内容だったんですよ。確か僕はSF的なラブストーリーをもとに曲を書いてくれって感じだった。
OSTER 私は「落ち込んでいる絵描きの子をミクが歌で励ます」っていうストーリーでした。だから「雨のちSweet*Drops」は「悲しいことも見方を変えたら前向きになれるよ」っていうメッセージを込めた歌詞になっているし、「マージナル」にいろんな色が出てくるのは、絵描きの子が主人公であることを想定していたからっていうのがあるんです。
kz 僕もSFがテーマだったから「Star Story」っていうタイトルの曲になったわけで。
──開発初期段階とは異なり、実際は音ゲーとして「Project DIVA」はリリースされるわけですよね。
kz そうなんです。まあ僕は「Project DIVA」が音ゲーになって正解だったと思います(笑)。
OSTER 各自が作った曲とか、初期の「Project DIVA」の背景の映像には、キャラゲーを企画していたときの名残が残っていたりするんです。
初音ミクは“不思議な存在”
──お二人は初音ミクというキャラクターについて、どう思っていますか?
OSTER 付き合いが長いこともあって、1周回ってわかんなくなっちゃった感覚ですね(笑)。
kz 僕も一緒。
──「1周回って」というのはどういう意味ですか?
OSTER 私はもともと初音ミクを楽器として捉えていたんですけど、ムーブメントになったことでキャラクターとしてのミクを意識するようになって。でもやっぱりクリエイターとして曲を作るときは楽器として見ることになるし……って感じですね。なんだろう。この10年でいろいろありすぎて、ミクがすごく遠くまで行っちゃった感覚もあります。
kz 初音ミクというものを概念的なものに感じる瞬間もあるんです。僕はDJでありながらクリエイターでもあるわけですけど、シンセとして面白いって言ってる人と、家でミクの曲を聴くのが好きな人、ライブで盛り上がるのが好きな人、2次創作的にイラストや動画を作っている人、みんながみんな「初音ミク」っていうものに対する感じ方が違う。コンテンツが多岐にわたりすぎていて、「初音ミクをどう思う?」って話になると着地点が見つからないんですよね。だからわかんなくなっちゃったって思っています。
OSTER でも私とkzさんは初音ミクに対して持っている印象が似ている気がする。
kz うん。僕らは最初、なんとなく面白そうな“声が出るオモチャ”として手に取っているから。さっきOSTERが言った“楽器”って感覚は僕も持っていますね。
OSTER ミクはいろんなことを試しても怒らないし、スタジオ代もかからないし。
kz オモチャだと思っていたら、いつの間にかラスベガスでライブやってるし(笑)。
OSTER 最初と今ではミクに対する印象が違いますし、人によってもミクに対する印象が違う。不思議な存在だと思います。
やっぱり米津くんはアーティストなんだな
──今回の「初音ミク Project DIVA Future Tone DX」にはハチさんが作曲した「砂の惑星」も収録されます。お二人はこの曲、お聴きになりましたか?
kz はい。すごいタイミングですごい曲を書いたなって、驚きました。
OSTER でも10周年のアニバーサリーソングでこういう切り込み方ができるってところが、ハチさんらしいですよね。
kz やっぱり米津(玄師)くんはアーティストなんだなって思いましたね。僕とかOSTERはクライアントのことを考えすぎてしまうと言うか。曲提供とかプロデュースって、求められていることをクリアしつつ、クライアントの期待を超えるようなものを作ろうとするわけなので、「砂の惑星」のようなアプローチは絶対できないんですよ。
OSTER アレンジャーとかをやってると、どういうものが求められているのかを敏感に察知して、曲を仕上げなきゃいけない。そういう意味では「砂の惑星」みたいなボールの返し方はもうできない感覚はあります。
kz 単純に米津くんだったらもっとめでたい曲だって書けたはずだからね。僕は臆病だからこういう曲を出せなかったと思うし、このタイミングで「砂の惑星」っていう曲を出す米津くんの勇気っていうのはすごいと思いますね。
- PlayStation®4用ソフト「初音ミク Project DIVA Future Tone DX」
- 2017年11月22日発売 / セガゲームス
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限定版「初音ミク Project DIVA Future Tone DX メモリアルパック」
12949円 -
通常版
8629円
- 限定版「初音ミク Project DIVA Future Tone DX メモリアルパック」同梱物
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- PS4®専用ソフトウェア「初音ミク Project DIVA Future Tone DX」
- 映像集「初音ミク -Project DIVA- メモリアルコレクション」(Blu-ray Disc3枚組・227曲収録予定)
- KEIによる描き下ろしデザインBOX仕様
- kz(livetune)(ケーゼット)
- アニメソング、ゲーム音楽、J-POPなど幅広いジャンルの楽曲制作および編曲を手がける音楽プロデューサー。DJとしても活躍し「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」「COUNTDOWN JAPAN」「ULTRA JAPAN」「ニコニコ超会議」などさまざまなフェスやイベントに出演している。ソロプロジェクトのlivetune名義では「Google Chrome-初音ミク篇-」のCM曲「Tell Your World」や初音ミク関連のイベント「マジカルミライ2015」のテーマソング「Hand in Hand」などVocaloid楽曲を発表しているほか、SEKAI NO OWARIのFukase、ゴールデンボンバーの鬼龍院翔といったボーカリストとのコラボ曲もリリース。また2015年10月には、ボーカリストにやのあんなを迎えたユニットlivetune+を始動させた。
- OSTER project(オスタープロジェクト)
- 2003年からインターネットを中心に活動している女性クリエイター、OSTERによるソロユニット。2007年の「初音ミク」発売直後にオリジナル曲「恋スルVOC@LOID」を動画サイトに投稿し、これをきっかけにボカロPとしてのキャリアをスタートさせる。2011年にはボカロPによるインターネット発のレーベル・BALLOOMの設立メンバーとなり、ビッグバンド編成の「OSTER "BIG BAND" project」としてアルバム「GOSSIP CATS」を発表。その後もクレモンティーヌとのコラボ作「魔法使いのショコラティエ -Le Chocolatier Enchante-」、フルオーケストラで制作された「Story Teller」、サンリオとのキャラクターであるシナモロールとコラボレートした「Cinnamon Trip!!」などさまざまな取り組みによるアルバムを発表した。2013年からはDJとしての活動をスタートさせたほか、2014年からはYURiCa/花たんのアーティストプロデュースや、aiko、有安杏果(ももいろクローバーZ)といったアーティストのアレンジャーを担当するなど、幅広い分野で活躍している。2017年7月には最新アルバム「キャンディージャーの地平面」をリリースした。