一気に96人産んだ感覚でした
──番組に映されているのはレッスンのごく一部の風景ですが、テルマさんは練習生1人ひとりのことを本当によく見ていて、いつも寄り添っているという印象がシーズン2からありました。そういったところも含めての、2回目のオファーだったんじゃないですかね。
そうなのかなあ。でも、うちらは練習生の友達ではないから。どんなに仲よくなっても、トレーナーと練習生という距離感は保たないといけない。できるだけ寄り添うけど、そこのバランスを取る必要があるんですよね。注意もしますし。ただ注意したときに、この子がその言葉を気にしすぎて変な方向に行っちゃったらどうしよう、という部分にはすごく気を遣います。「自分だったらこうするのにな」と思っても、もしかしたらこれを言うことによって、その練習生の個性が消えちゃうんじゃないかとか、「これはダメなんだ」とその子が考え込んじゃって、本来の自分のよさを出せなくなったらどうしよう、とか。最初はそういう伝え方の部分で特に苦労しました。みんな若くて元気だけど、繊細な部分もあるから、大人数の中にいると「自分なんて……」という感覚になってしまうこともありますし。できるだけその練習生のよさを見出して伸ばすのが私の役割だと思っています。
──大変な立場ですね。
一気に96人産んだ感覚でした(笑)。家族の皆さんもきっと不安だろうし、そんな中で練習生を預からせていただいているので、できるだけみんなのご家族、友達、そして応援してくれる国民プロデューサーの皆さんに彼女たちが輝いている姿を見せたいと思う。大変だけど、やっぱりそこにトレーナーとしてのやりがいを感じます。
──順位発表式の場にトレーナーの皆さんはいないですが、練習生の順位は気になるものですか?
私はまったく気にならないですね。きっと一番気にしているのは、観てくださっている国民プロデューサーの皆さんと、練習生本人なんじゃないかな。「この子、めっちゃボーカルよかったのに落ちちゃったか」とか「この子の歌声を聴かせたかったな」と思うことはもちろんありますけど、練習生のことを順位で見たことがない。ただ、やっぱり順位が上と下の練習生では抱えている葛藤が違うんですよね。上の練習生は上の子なりの葛藤があるし、下の練習生には焦る気持ちがある。
アイドルってすごい職業だと思います
──ずばり、テルマさんはどのような練習生にスター性を感じますか?
うーん、難しい! だけど、最初にパフォーマンスを見てA、B、C、D、Fのクラスに分けるときからなんとなく見えます。「この練習生、きっといくだろうな」って。それはダンスや歌の経験があるかどうかに関係なく、たとえそのときは目立っていなくても、歌やダンスが下手でも、あの時点でわかる。
──それは「ここがすごい」という基準があるわけではなく、感覚的なものですか?
感覚ですね。パッと見て存在感がある練習生がいるんです。後ろのほうにいたとしても、「この子だ!」というのはわかる。でも、あえて言葉にするなら、“アイドルになる覚悟ができている人”じゃないですかね。自分の中でそう決意できている人は、それが伝わってくる。レッスンでも言ってるんですけど、私はアイドルってすごい職業だと思ってるんですよ。歌、ダンス、表情管理を全部できていなくちゃいけなくて、プライベートも制限して、その中でファンの皆さんに幸せを振る舞う。いろんなことが求められる職業じゃないですか。アイドルになりたいと思って応募してきて、それが中途半端な気持ちだったらダメだよねって思う。
──そう聞くと、確かにアイドルはかなり覚悟のいる職業ですね。
いるよー! 絶対! 常に完璧を求められるし、応募する段階でプロ意識を持っていないと難しい。歌やダンスが未経験でももちろん悪くないんだけど、応募しながら「私なんて……」と思ってる人は、ステージに立った瞬間にそれが見えちゃう。もうちょっと堂々とすればいいのになと思う。気持ちに迷いがなく、覚悟が見える人はスター性があるかな。あと、“自分自身を楽しんでいる人”にもスター性を感じますね。自分のすべては信じられなかったとしても、自分でいることが楽しいと思っている人、音楽を楽しんでいる人は輝けると思います。番組の前半では涙の場面が多かったけど、泣いたあとの次のレッスンから「もう泣くのはやめよう」と決意するのが大前提! ここまで残ったんだから。これからはきっと、みんなもっとプロ意識と自信を持って課題に挑むと思うので、練習生の強い意思や成長、そして増えていく笑顔を国民プロデューサーの皆さんに見てもらえたらうれしいです。
プロフィール
青山テルマ(アオヤマテルマ)
1987年生まれの奈良県出身の女性シンガー。トリニダード・トバゴ人と日本人のクォーター。10歳の頃に歌う楽しさに目覚めてゴスペルを習い始め、12歳のときに家族とともにアメリカのロサンゼルスへ移住した。2002年冬に帰国してからは東京のインターナショナルハイスクールに通いつつ、ボイストレーニングを受ける日々を過ごす。デビュー前より童子-T、DS455、SoulJaらの作品に参加し、2007年9月にシングル「ONE WAY」でメジャーデビューを果たした。同年にフィーチャリングゲストとして参加したSoulJaのシングル「ここにいるよ feat. 青山テルマ」のヒットを機に知名度が急上昇し、2008年1月にはSoulJaをフィーチャーしたシングル「そばにいるね」をリリース。2021年10月に9枚目のオリジナルアルバム「Scorpion Moon」を発表し、デビュー15周年を迎えた2022年11月には初の東京・日本武道館公演「「Thelma Aoyama 15th Anniversary~おにぎりフェスティバル~(仮)」を開催した。
Thelma Aoyama 青山テルマ (@thelmaaoyama) | Instagram