101名の練習生の中から“国民プロデューサー”による視聴者投票を通じて、グローバルグループのデビューメンバーを決定する韓国発のサバイバルオーディション番組「PRODUCE 101」。このオーディションは2019年に日本に上陸し、シーズン1からJO1、2021年放送のシーズン2からINIが誕生した。現在、Leminoで毎週木曜に配信されているシーズン3「PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS」は、「PRODUCE 101 JAPAN」初となるガールズグループのオーディション。番組ではこれまで1つの課題曲を2チームずつ披露して競い合う“グループ評価”、ダンス、ボーカル、ラップ&ボーカルの3ジャンルに分かれてパフォーマンスを行う“ポジション評価”などが展開されてきた。
音楽ナタリーでは11月上旬に行われたポジション評価終了直後の会場で、番組のボーカルトレーナーを務めている青山テルマにインタビューを行った。INIが誕生した「PRODUCE 101 JAPAN SEASON2」でもボーカルトレーナーを務め、当時は常に練習生のことで頭がいっぱいになっていたというテルマ。彼女は「もうトレーナーはやらない」と決めていたそうだが、再び“日プ”漬けの毎日に飛び込むこととなった。
10月5日から26日までの3週間にわたって実施された国民投票に、番組中に付与される“ベネフィット“などを合算した累計投票数は、シーズン過去最高の3414万1349票。なぜ「PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS」はここまで人を引き付けるのか? 練習生をそばで見守るテルマの言葉から、その魅力を紐解いていく。なお、ダンストレーナー・YUMEKIのインタビューも近日公開予定だ。
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取材・文 / 中川麻梨花撮影 / 曽我美芽
新たな夢の始まりを一緒に歩めるのなら
──練習生がダンス、ボーカル、ラップ&ボーカルの3ジャンルに分かれてパフォーマンスを披露するポジション評価の現場評価が先ほど終わりました。テルマさんはいつもどういう心境でステージをご覧になっていますか?
モニタールームにいても、チームのメンバーの一員としてみんなと一緒にステージに立っているような感覚で観ています。本番は一発勝負なので、いくら練習でできていても、ステージに立ってライトを浴びて、お客さんの前でパフォーマンスするのは緊張感がありますよね。だから練習生を応援しているときは、親のような気持ちかもしれないです。自分のライブで感じるのとはまた違う緊張感なんですよ。当日のパフォーマンスの出来は、私のほうではコントロールできなくて、練習生次第ですし。今日の評価でも、メンバーの気持ちがちょっと前に出すぎちゃってうまくいかなかったチームがあって……それで私も泣いちゃった。あまりにも悔しすぎて。今年初めてなんじゃないかというくらい、泣きましたね。
──テルマさんは「PRODUCE 101 JAPAN SEASON2」からトレーナーを続投されています。シーズン2のときはオーディションのことしか考えられなくなり、アルバムの制作が進まなくなってしまったそうで……(参照:青山テルマ「Scorpion Moon」インタビュー)。
あはははは。そうでしたね。
──練習生1人ひとりに思い入れを持って接していたからこそ、かなり大変な思いをしたようですが、それでもまたトレーナーをやろうと思ったのはなぜでしょう?
シーズン2ですべてやり切った気がしていて、「もうやらない」って最初は強く決めていたんです。そのことも公言していたので、オファーは絶対に来ないと思っていたんですが、今回「PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS」のお話をいただきまして……。どうしようか考えたんですけど、やっぱりトレーナーって楽しいんですよ。大変なこともありますが、デビューという1つの目標に向かってがんばっている練習生のみんなの姿を見て、たくさんの刺激と感動をもらえるし。私からシェアできることが練習生にとって何かプラスになるなら、力になりたいという気持ちもありました。シーズン2でデビューしたINIのメンバーとたまに仕事で会ったり、(西)洸人と一緒にレギュラー番組(NHK「英会話フィーリングリッシュ ~データで選んだ推しフレーズ~」)をやらせてもらったり、INIのみんなの夢の続きもずっと見ていて。また練習生の新たな夢の始まりを一緒に歩めると思うとワクワクしましたし、最終的には「よし、やるか!」という気持ちになりました。
練習生全員のことを好きになっちゃうんです
──テルマさんから見て、「PRODUCE 101 JAPAN」の魅力はどういうところにあると思いますか?
練習生の成長ですね。今回は辞退者を除いて96人でオーディションが始まったんですけど、その練習生の成長を1つひとつのステージを通してみんなで見届けて、夢を一緒に応援できる。「こんな原石がいたんだ!」という発見もありますし。すべての練習生のストーリーを番組で映せてはいないんですけど、みんなの成長をそばで見られるのが幸せです。レッスンをやっていて「この子、よくなった!」という練習生が何人もいるので。脱落者も出てきてるんですけど、「番組に出てよかったな」と思える瞬間や経験が、何かあったらいいなと思います。悔しさや挫折もどこかで武器にしてもらえたらうれしいし……本当に練習生全員のことを好きになっちゃうんですよ(笑)。
──今回もどっぷりとのめり込んでいますね(笑)。
最初はトレーナーとしてフラットに練習生を見ようと思っていたんですけど、やっぱり全員に対して情が湧いてくるんです。脱落者のメンバーについても、「あの練習生のここがよかったのに」「もっとこの練習生のここを見せられたら残れたのかな」とか……「1人ひとりの魅力を説明してください」と言われたら、全員分言えるくらいみんなのことを見ているので。
──テルマさんが練習生に指導するうえで、今回特に意識していることはありますか?
レッスンで練習生をあまり萎縮させないようにがんばっています。ボーカルレッスンでは練習生のメンタルが大事なんですよ。その子の心の状態や、グループの雰囲気がすぐ声に出ちゃうから。ダンスレッスンで叱られたとしても、体はある程度動くと思うんです。だけどボーカルレッスンで厳しいこと言っちゃうと、それだけで喉がキュッと閉まっちゃって、思い通りに声を出せなくなってしまう。もちろんレッスンで嘘はつかないですよ。歌がよくなかったら、なんでよくないのかは伝えます。でも、ボーカルレッスンでは怒るというよりは、できるだけ“導く”ことを心がけているかな。特に今回はシーズン2よりも涙を流す練習生が多いと感じていて。
──番組序盤から涙のシーンが多かったですね。
シーズン2では徐々に涙が増えていったんですが、今回は序盤から涙を流す練習生が多いから、そこはちょっと違いを感じました。「泣いている暇があるなら、練習しようぜ」とレッスンで言うこともあるんですけど、膿が溜まったまま本番を迎えてしまうとステージが崩れてしまうときがあるので、レッスンで練習生の気持ちを紐解いて、できるだけ膿を出してあげるようにしています。練習生が心と体を健康な状態に保てるように心がけていますね。
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一気に96人産んだ感覚でした