PRIZMAX|すべてをさらけ出す覚悟 新生PRIZMAXが世界に放つ衝撃作

「自分のコンプレックスと向き合う」というテーマ

──7人体制となってグループ名の表記も「PRIZMAX」に代わり、ニューアルバム「FRNKSTN」は全曲英語詞のグローバルスタンダードな作品として発信されます。さまざまなルーツを持つメンバーで構成されているPRIZMAXにとってはしっくりくるコンセプトだなとも思いますが、このコンセプトに至るまでの経緯は?

ウィン 今回のコンセプトは、世界で戦っているサウンドプロデューサーのJeff Miyaharaさんに付いてもらったりだとか、クリエイティブディレクターに「CanCam」のエディターだった方に入ってもらってアートワークを組み立ててもらったりだとか。振り付けも、東方神起のバックダンサーなどもやられている50(FIFTY)さんが関わってくれたりと、人が人を呼んで新しい物語が生まれていく……本当に恵まれた環境で作り上げられていったものなんです。僕らより先にエンタメ業界を走ってきた人たちが「お前ら7人が集まったなら、これをやったほうがいい」というカラーと課題を与えてくれた。なので僕らはそれを信じて、期待に応えるために日々努力してがんばる、という感じで。

 僕らは器用貧乏なところがあったんですけど、今回こうして新しくなりました、周りも固めてもらってバッコーンと背中を押してもらえます、あとはその追い風に乗って、上がるか下がるかは自分たち次第だよ、という環境を作ってもらった。だから自分たちのやるべきことを楽しむのが大前提だし、人の心に届けるために集中できる時間が増えたなとも思います。自分たちは自分たちのやるべきことに100%集中できる環境になっているんです。今は自分がどうやってアイデンティティに磨きをかけていくかに集中していくとき。人前に立つまでは、自分自身を磨き上げていくというか。それぞれが磨き上げられていくと同時に、グループとしてのコンセプトももっと固まって、もっと1つになれるときが来るのかなと思う。

──では「FRNKSTN」というアルバムタイトルにはどんなメッセージが込められているのでしょう。

ウィン このアルバムのコンセプトとして「サイケデリックホラー」というものを掲げたんです。マイケル・ジャクソンっぽくやろう、みたいなことじゃなくて、このコンセプトは「自分のコンプレックスと向き合う」というテーマにたどり着くんですけど……自分の中の思い、弱さも全部さらけ出して、それによって誰かの心を動かすっていう。僕、あるハリウッドのアクティングディレクターの言葉ですごく心に残っているものがあって。「パフォーマーは誰かに希望を与えるために存在している。そのために自分をさらけ出して、自分が犠牲になっているんだよ。だからそんなに簡単な仕事ではないし……」みたいなものなんですけど。今僕らのやろうとしていることに結び付いているんですよ。背負うリスクは大きいし、怖さもあるけど、これからに向けた思いも全部込めて。なのでアルバム名の「FRNKSTN」には、人間ではない、見た目も醜いけれど、その中に確かに人間らしさがあったりだとか。

 心があってね。

ウィン そう。コンプレックスがあって思うように表現できないけれど、それを乗り越えることで心の底からの思いが伝わっていくよ、というメッセージを込めています。

──歌詞をすべて英語にしたのも、Jeffさんのアイデアなんでしょうか?

ウィン そうですね。Jeffさんが「英語ベースにしよう、世界に向けて攻めよう」と色を決めてくれて。

──英詞の曲は歌いやすいですか?

ウィン めっちゃ難しいです。これまではアメリカの血が入ったティム(黒川ティム)が身近にいて、彼は英語で歌っていたほうがよかった部分がたくさんあったし、僕自身も彼の歌をたくさん聴いて勉強になっていたけど、今回は英語をしゃべれてディレクションしてくれるJeffさんに、レコーディングのタイミングでしか会えない。どうやって自分の中でキープするかが難しかったです。ファーストランゲージではない英語と俺はこれからもっと向き合っていかなきゃいけないと思っているけど、努力でいかようにもなるとも思っているから、がんばります(笑)。

──ケビンさん、森さんに関しては、加入後即歌う曲がすべて英語詞という。

ケビン はい、だいぶ過酷です(笑)。

英寿 歌詞の意味とか、最初は全然わからなくて。

ウィン 俺もあったよ。「どういう意味ですか?」って聞きながらやってたもん。

ケビン しかも、直訳じゃわからないような深いメッセージのこもった英詞なんですよね。だからレコーディングのときは常に本気で挑んで、力尽きて帰る、みたいな感じでした。

後悔はしたくないから、とことんやる

──そのように、今作は日本を飛び越えたところまで届くような作りになっていますが、PRIZMAXの歩みを振り返ったとき、ウィンさんが「レディ・プレイヤー1」でハリウッドに行ったことは絶対に外せない転機だと思うんです。

 そうですね。

──ぐんと活躍の場が広がって、今では皆さんでミャンマー(ウィンの故郷)のテレビ番組に出演されたりもしていますが、自分たちの世界が広がったことで、グループの音楽性や表現について改めて考えることはあったりしましたか?

ウィン それは考えてますね。

 ずっと考えてますよ。

大樹 特に今回の作品はこれからのPRIZMAXの姿を示すものだと思います。今までの僕らって、パフォーマンスにしても流行りのテクニックやグルーヴなんかを取り入れて、自分たちのやりたいことを表現していたんですよね。だけど今回はそうではなくて、しっかりとテーマや世界観を作って、それを表現する。そういう方法で、エンタテインメントを見せていくっていう。

 観ていてただ「楽しそう、仲よさそうでほほえましいね」じゃない、そういう感情を通り越した……人間の五感、ヘタしたらその先の感覚で受け止めてもらえる内容に仕上げていくつもりなんです。

大樹 そういう意味でもドキドキさせるスリル感を大事に。特にライブでは世界観を全力で表現できないといけないなと思っていますね。

 Jeffさんの言葉ですごく印象に残ったものがあって。「君たちはアイドルでもアーティストでもない、ソルジャーだ」と言われたんです。それが年明けてすぐ、「2019年、自分はどうしようかな」と考えていた時期だったんですよ。オーディションに向けて、グループの動きがあった時期。それを言われて以降はプライベートでいつもの喫茶店に行く道すがらでも、この言葉を意識するようになったし……そうやって自分のマインドがどんどん変わっていくことで、人からの見え方も変わっていくと思うので。自信持って生きないとなって。これからPRIZMAXは戦士になります。

ウィン 人生一度きりでやりたいこといっぱいあるし……これはハリウッドに行ったからというより、その結果いろんな経験をさせてもらったからだと思うんですけど、自分の中で感じることはたくさんあって。とにかくダラダラやりたくない。今までも一生懸命やってきたけど、「もっと戦えるようにしましょう、もっと勝負していきましょう」と。ぶっちゃけ、現状維持でいけばこの先もできないことはない。ただ、さっき有希も言っていたけど、知られないまま終わるのか。翼も言ってた、現状に満足はしていない。大樹も言ってた、4人での未来はこれから目指す場所ではない。だったら仕掛けよう、勝負しよう。何か派手なことやろうぜって。俺らは一心同体なんで、潰れるときは同じ墓に入るし、売れたときはいい酒をみんなで飲むし。後悔はしたくないから、とことんやる。特に有希と話すことが多かったよね、こういう話は。

有希 逃げるように生きたくはなくて。やりきって終わりたいというか……ぬるま湯に浸かるのが嫌なんだよね。

ウィン そう、そう。それがすごい嫌なの。

有希 ヌルいことしていると勢いもなくなるし、人間性もダメになっていく気がするので。ゴールに向かってどうやってフルパワーで動いていくかということを考えた結果、今回こうしてメンバーが増えたんです。

違和感をどんどんブッ込んでいくこと。僕らの美学はそこにある

──そういう意味では、今作は完全に“勝負に出た”作品と言えますね。リード曲の「DANCE」も、かなり攻撃的なトラックとボーカルという印象でした。

史記 「DANCE」は「コンプレックスをさらけ出す」というテーマのもと、人間のさまざまな面をこの曲で出してすべてを払拭しよう、という意味が込められたリード曲なんです。新しくなったPRIZMAXにもバッチリ合ってるし、僕ら7人にしか表現できない曲になっていると思います。

大樹 疲れ切ったゾンビのような日本を、世界をよみがえらせようというメッセージも込められてる。

 ミックスやマスタリングも一流の、グラミー賞を取っている方にやってもらえて。ホントにイヤフォンで聴くのがもったいない、スピーカーで浴びたいと思えるようなパワフルな楽曲なんです。

──ダンスの振り付けは50さんが担当されたということですが。

大樹 振りはとにかくわかりやすいので、ホリック(PRIZMAXファンの呼称)もマネしやすいと思う。そういう意味でもエンタテインメント性を重視した作りになっています。

 わかりやすくイメージを伝えるなら「2019年のスリラー」。パロディというわけじゃなくね。僕、ダンスボーカルグループの音楽に求められているのって、違和感だと思うんです。「ダンスはうまいし曲もいいけど、なんかヘンじゃない?」という、その「何か」が人の心をつかむというか。素晴らしい曲を歌うミュージシャンは日本にはたくさんいるし、ダンスボーカルで何をやるべきかって考えると、違和感をどんどんブッ込んでいくこと。僕らの美学はそこにあるのかなって思うんです。

──ボーカルのレコーディングはいかがでしたか?

ウィン 今までにないようなディレクションをされましたし、純粋に難しかったです。しんどかったけど楽しかったんですよ。ひさびさにレコーディングで緊張する感覚があった。どれだけ成長しているか、実感はないからわからないけど、曲と共に僕も成長していけたらなと思っています。

──この曲はウィンさんが日本語、英語、韓国語、ミャンマー語の4つの言語で歌う「DANCE(INTL VERSION)」も用意されていて、PRIZMAXならではの遊び心がありますね。

ウィン この曲こそ“違和感”ですね(笑)。

 僕らのことを広めていくための1つの仕掛けという感じです。僕、星野源さんと松重豊さんがラジオで言っていたことですごく興味深く心に残っていることがあるんです。お二人は「今は『日本から世界に発信』ではなく、皆が同じスタートラインに立っているところから、地球全体に向かって何を発信していくかという時代だ」と言ってた。「日本のアーティスト」という肩書きは、僕らのバックグラウンドの1つであるってだけ。世界の中で生きる1人の人間だし、世界で活動する1組のアーティストだという感覚で発信していきたいなという思いがあるんです。

──さまざまなルーツを持つ皆さんですし、PRIZMAXにとってすごくしっくりくる考え方ですね。

 そうなんですよ。

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完全に変態ですよ