THE PRIMALSインタビュー|光の戦士との再会を果たした約4年ぶりワンマンを振り返る (2/3)

幕張でのタイムストップは格別

──ライブを振り返って特に印象に残っている楽曲はどれですか?

コージ やっぱり「過重圧殺! ~蛮神タイタン討滅戦~」でのファイヤー、火柱です。ステージ上、どこに立っていても熱いんですよ。リハーサルでも経験しましたが、何度やっても炎が恐ろしくて。その分見応えはすごいと思います。

THE PRIMALS「THE PRIMALS Live in Japan - Beyond the Shadow」の様子。(撮影:西槇太一、MASANORI FUJIKAWA)

THE PRIMALS「THE PRIMALS Live in Japan - Beyond the Shadow」の様子。(撮影:西槇太一、MASANORI FUJIKAWA)

祖堅 普通は一番盛り上がるサビで火柱が上がったりするんだけど、「タイタン」では曲の最初から最後までずっと噴射してみました。ずっと火を焚いてるのは珍しいと思う。

イワイ あんなのないよ(笑)。熱でチューニングが下がっちゃって、隙を見て直してたから。

祖堅 ギターも触れないぐらい熱くなってたな(笑)。

GUNN あと「メタル:ブルートジャスティスモード ~機工城アレキサンダー:律動編~」での特効もすごかったよね。曲の終盤で火薬が炊かれて、すごい音が鳴るんですが、リハのときの音がすさまじくて。音が鳴ることがわかっていてもみんな驚いて手が止まっちゃうんですよ。

イワイ たぶんドームクラスで使う量の火薬を入れてるんじゃないかな。

GUNN 実は本番では火薬の量をリハに比べて少なくしてもらったんですよ(笑)。

祖堅 そのやりとりはBlu-rayのメイキング映像に収録されていますので、ぜひ確認してもらいたいですね。

祖堅正慶(G, Vo)

祖堅正慶(G, Vo)

たちばな 僕は「ロングフォール ~異界遺構 シルクス・ツイニング~」に登場してもらったダンサーチームが印象に残っています。

GUNN あのパフォーマンスは素晴らしかったですね。

たちばな いつぞやの素人集団のダンサーとは違ったよね(昨年5月に開催された「ファンフェスティバル」ではスクウェア・エニックスのスタッフがダンサーとして登場した)。

イワイ 今回のダンサーさん、ちょっといい匂いしたもん(笑)。

GUNN やっぱプロは違ったよね。

祖堅 僕はやっぱり「ライズ ~機工城アレキサンダー:天動編~」のタイムストップ(ゲーム中で繰り出される時間停止を再現した演出)かな。いろんな会場でタイムストップをやってきたけど、幕張でのタイムストップは格別だった。Blu-rayでもいい感じに映ってるので注目してほしいですね。

レジェンド植松伸夫は何をしても許される

──ライブ中盤には植松さんがサプライズ出演するコーナーがありました。どういう経緯で植松さんの出演が決まったんですか?

祖堅 ちょうど植松さんがアナログレコードを作っているという話を小耳に挟んで(参照:植松伸夫が歴代「FF」音楽を再構築、アレンジアルバム「Modulation - FINAL FANTASY Arrangement Album」発売決定)、本人と「一緒にライブとかやりたいっすね!」みたいな話をしていた中で、植松さんが「前座だったら……」とおっしゃったんです。僕としては植松さんほどの人が前座だなんてもったいないから、「ちゃんと1つの演目として出てくださいよ!」と説得して。ただ説得するだけじゃなくて、ちゃんとTHE PRIMALSのライブに出演する整合性が必要だと思い、古代人の衣装とかも用意させてもらいました。結果として植松さんに出ていただいてめちゃくちゃよかったですね。お客さんもすごく喜んでいたし。

THE PRIMALS「THE PRIMALS Live in Japan - Beyond the Shadow」の様子。(撮影:西槇太一、MASANORI FUJIKAWA)

THE PRIMALS「THE PRIMALS Live in Japan - Beyond the Shadow」の様子。(撮影:西槇太一、MASANORI FUJIKAWA)

GUNN 植松さんは以前ドイツで開催された「ファンフェス」での僕らのライブを観ていてくれたんですよ。それでもともと交流はあって。

祖堅 あのときは終わったあと、一緒に飲みに行ってくれてね。僕らのことをすごく気に入ってくれたみたいでした。

GUNN 超盛り上がったよね(笑)。

たちばな おじさんたちがワイワイ楽しそうだったからかな(笑)。

祖堅 僕は植松さんの後輩にあたるので、THE PRIMALSのライブを観て、植松さんの心に火が点いてくれたとしたら本当にうれしいですね。僕は植松さんにもっといっぱいライブをしてほしいから。

──ライブでは植松さんのMCをコージさんがリアルタイムで通訳をするひと幕もありました。

コージ 植松さん、話し始めると長くなっちゃうから通訳が大変なんですよ(笑)。過去にも何度かイベント中に通訳をしたことがあって痛い目を見てきたから、今回は事前に楽屋に行って頭を下げて「短めでお願いします!」と頼みに行ったんです。楽屋では「大丈夫、大丈夫。ゲストなんだからそんなに話さないよ!」と笑顔で言ってくれたんですが、たぶん本番ではそんなことすっかり忘れていたと思います。僕は限られた時間の中で、2割も通訳できていないんじゃないかな。レジェンドは何をしても許されるんですよ(笑)。

──ゲームのローカライズのスタッフでありながら、ボーカリストであり、作詞家でもあり、さらに通訳までこなすコージさんの多才さが垣間見れるライブだったと思います。

コージ ボーカリストの前にサラリーマンですから(笑)。会社が「やれ」と言ったらやるだけなので(笑)。

マイケル・クリストファー・コージ・フォックス(Vo)

マイケル・クリストファー・コージ・フォックス(Vo)

チキショー、自分で歌うしかねえ!

──THE PRIMALSのライブではコージさんが歌う曲もあれば、祖堅さんが歌う曲もあり、GUNNさんも歌う曲もあります。こういったボーカルの振り分けはどうしているんですか?

祖堅 明確には決めていない場合が多いですね。レコーディングのときに「そろそろGUNNさん歌ってくれないかなあ」みたいに思いながら眺めています。

GUNN もともと僕は歌う人ではないので、このバンドで歌うことになるとは思ってなかったんですよ。かなり前の話ですが、「忘却の彼方 ~蛮神シヴァ討滅戦~」のレコーディングが早めに終わったときに、「ちょっと歌ってみない?」って声をかけられて。いや、でもあまり普段歌わないし、英語で発音もよくわからないし……って言い訳をしてたら祖堅くんに「ガタガタ言ってないで歌ったらいいんですよ!」って半ば強引に歌わされたのが最初のきっかけです。

祖堅 今やそれが人気曲ですからね。

GUNN ゲームに向けて曲を作っているときは、女性ボーカルを入れる前提で作っている曲がいくつかあって。でもTHE PRIMALSとしてライブをするときに女性ボーカルがいるとは限らないから、僕らで歌わなきゃいけないんですよね。「え、これ誰歌うの?」ってなると、みんなソッポ向いて知らないフリをして……僕もそういうときはたいてい下を向いてタバコを吸い始めます(笑)。

GUNN(G)

GUNN(G)

祖堅 僕に限らず、女性ボーカル前提で作った曲はキーが合わないんですよ。だから誰も歌いたがらない。しばらくみんなで譲り合いというか、間合いをはかるやりとりが続いて、我慢できなくなった人が「僕やります」みたいに言い出してボーカルを決めています。

──祖堅さんは自身で歌うことに関してどう思っているんですか?

祖堅 僕は制作担当なので、正直に言うとあまり歌いたくはないんですよ。でもゲーム開発において、楽曲が完成してボーカルを外部に依頼するとなると、譜面に起こさなきゃいけなかったり、オケやガイドメロディを作らなきゃいけなかったり、いろんな工程が発生するんです。自分で歌えば、このあたりの作業をすっ飛ばして、レコーディングに進むことができる。チキショー、自分で歌うしかねえ!という状況になることがしばしばある感じです(笑)。ちょっと時間があるならコージに頼んでいて、もっと時間があったら外部の人に頼むことにしているかな。

コージ だいたいこのプロジェクトは時間がないので、僕と祖堅さんが歌うケースが多い。

祖堅 本当にそうです(笑)。それ以上でもそれ以下でもなく(笑)。

──必要に迫られて、ということだと思いますが、THE PRIMALSのギターボーカルとして歌う姿はだいぶ板に付いていると思いますよ。

祖堅 そう見えてくれていたらうれしいですね。にしても「目覚めの御使い ~ティターニア討滅戦~」はキーがなかなか合わなくて大変だったなあ。

GUNN いっそのこと、ライブバージョンとしてキー上げちゃえばよかったね。

イワイ 俺はずっと思ってたよ。「なんでキー上げないんだろう」って。

GUNN 途中で言い出してもガチャガチャになるなあと思っちゃって(笑)。僕が気付いたときには気合いで歌うしかないくらい差し迫ってたから。