ナタリー PowerPush - Prague
気鋭の本格スリーピースがひねくれた王道志向を語る
自分達は3人それぞれが目立ってる
──曲を作っていく中で、3人が衝突したりするようなこともあったりします?
鈴木 そこまではいかないですけど、やっぱり作り始めた曲へのビジョンは3人それぞれにあって。それが一致したときはするっとできるんですけれど、一致してないときには若干の言い合いはありますね。そういうときは誰が持ってきたアイデアでも「それいいね」と思うことが大事で。
──ということは、今は3人それぞれにPragueというバンドの武器はどういうものかということのイメージがあるんですよね。でも最初は「とりあえずやってみる」だったわけで。そこからどこかで変わってきたタイミングがあるんじゃないかと思うんですけれど。自分たちがどういうバンドかということに気付いたというか。
鈴木 ライブで他の対バンと自分達を見比べてきたんです。そうして、俺らにできるけど他のバンドがやってないこと、他のバンドがやってるけど俺らはやらないことが、少しずつわかっていった。結局、自分達は3人が目立ってるんですよ。それをちゃんと楽曲として真っ当にできているなとは思っていて。
──歌メロや歌詞の共感だけでリスナーとつながるようなバンドにはなりたくないという気持ちもあったりする?
伊東 それは全員思っていますね。
金野 それがバンドの原動力みたいなところもあります。
鈴木 やっぱり、そこはもうやっている人がいるから。みんながやってることはやりたくないし、俺らは違うでしょうという気持ちはありますね。
人からもらった答えに便乗せず、自分で考えて自分で決める
──今回の「Light Infection」の歌詞には「丸くなるくらいなら暴れていたい あがいていたい」という言葉がありますよね。これって、バンドのスタンスにも通じるところがあると思うんですけれど。
鈴木 そうですね。やっぱり人の真似はしたくないと思うし。ただ、自分も納得いくものを作り出すためには、悩まなきゃいけないし考えなきゃいけない。そこから逃げると、人からもらった答えに便乗しちゃいそうになる。それを素直に書いた歌詞なんです。要は、自分で考えて自分で決めていくことができればいい、ということなんですね。
──で、歌詞の中では「衝動」という言葉も出てきていますよね。バンドをやっていて一番衝動を感じるのはどういうときですか?
伊東 俺の場合はファーストタッチなのかな。一番最初にスタジオで何を叩くか。誰かしらがネタを持ってきて曲を作るときも、リハスタに入った瞬間に叩いているものは何も計算してないし、呼吸のようなものなんです。それが100%の衝動かも。今回のドラムに関しても、何も考えずにそのままやったんですよね。
金野 考える前に行動する、というのはやっぱり衝動ですよね。この曲は8割そうだと思います。パッと弾いて、最後のサビのフレーズ以外はそのままほとんどいじらないでやってる。
自分の中には確実に“怒り”があった
──ただ、何も考えないということがすなわち衝動というわけでもないかもしれないですよね。それはひょっとしたら手癖かもしれない。
伊東 そうですよね。実は今回、曲を作る前に自分が感じていたことを2人に全部話したんです。メンタル部分を均等にしようという考えでやったんですけど、そういうやり方で作ったのはこの曲が初めてで。今回に関しては本当に2人にわかってもらうまで喋り倒して、それから作ったんです。自分の中には確実に“怒り”があったんで。
──それはどんな怒りだったんですか?
伊東 誰でもあると思うんですけれど、普段から自分1人じゃどうしようもないこと、何もできないということを感じていて。それを2人に話したら共感してくれて。
鈴木 曲名もそういう話からつけたんですよね。自分より大きい存在の人が何か答えを提示すると、それを見た人は「そうなんだ」って思いこむ。そういう軽い感染がいろんな人に届いて、次第にどうしようもなくなってしまう。そういう途方もないものに対する怒りの気持ちは感じましたね。
Prague(ぷらは)
鈴木雄太(Vo,G)、伊東賢佑(Dr)、金野倫仁(B)による関東出身のスリーピースバンド。同じ高校で3年間同じクラス、軽音楽部、プライベートも一緒にいた腐れ縁の鈴木雄太と伊東賢佑の2人が、同じ音楽専門学校に進み、2006年に金野倫仁と出会って結成。自主制作盤を2枚出したところでレコード会社の目にとまる。2009年9月9日シングル「Slow Down」でキューンレコードよりメジャーデビュー。