Zeebraが語る「POWER / パワー」|まるで50セントとエミネムを描いたようなドラマ

Zeebra脚本のドラマをHuluオリジナルで作りませんか?

──印象に残ってるシーンはありますか?

Zeebra

シーンというか、音楽の使い方はすごくこだわってると思った。作品の中で音楽が大々的に取り上げられることはないけど、場面ごとにちゃんと使い分けてるんだよね。ジェイミーが仕切っている「TRUTH」は、いわゆるメインストリームのクラブ。マンハッタンみたいなところにあるイメージだと思う。来るのは白人のエリートで、求められるのはいわゆる当たり障りのない流行のダンスミュージック。シーズン1は2014年だから、かかっているのは当然EDM。でも黒人の奥さん・ターシャの誕生日パーティのシーンではヒップホップが鳴ってた。つまり彼女はそういう音楽を聴いて育っているのがわかるんだよ。

──誕生日パーティでターシャが歌い出したシーンはちょっとびっくりしました。クラブでカラオケみたいなことしちゃうんだ?みたいな。

あのシーンを見て、昔知り合いに誘われて行ったLAのクラブのこと思い出してさ。レゲエのパーティだけど、やたら年配の女性たちがいたのね。しかもみんな80年代の松田聖子みたいなドレス着て、がんがんワイニー(腰をくねらせるダンス)を踊ったりしてるわけ。「なんなんだろう?」と思って知り合いに聞いたら、実は「母の日」をお祝いするパーティだったんだよ(笑)。本当にびっくりしたけど、同時に「これがアメリカのクラブなんだな」と思わされた出来事でもあったね。

「POWER / パワー」のワンシーン。
「POWER / パワー」のワンシーン。

──クラブの楽しみ方が日本とは全然違うんですね。

そうそう。あとさ、このドラマが現代的だなと思うのは、黒人と白人の立場の違いだよね。ひと昔前ならインテリでスマートな役は白人で、喧嘩っ早くて向こう見ずなのは黒人だった。でもこのドラマでは完全に逆でしょ。つまりドラマ自体が黒人に向けて作られてる。それはアメリカ社会で黒人がマジョリティになりつつあるから。同じように女性の存在感も興味深くて、ターシャは黒人ですごく頭が切れるお金持ち。けど、白人の女の子・ホリーは盗み癖があって、典型的なホワイトトラッシュ(白人の低所得者層)なんだよね。でも、ドラマではさらに下の存在としてジャマイカ人が出てくる。またいい具合に凶悪な顔の俳優使ってたよね(笑)。でもあの階層感はかなりリアルだと思う。

──演出やディテールがしっかりしているので、いろんな角度から楽しめますね。

うん。実は俺も昔からドラマの脚本を書いてみたくてさ。アイデアが思いついたらメモするようにしてるんだ。「POWER / パワー」もそういう視点から見ちゃってた(笑)。だって日本でもこういうのやったら面白そうじゃん。いろんな個性的なラッパーが出てきてさ。昔は(窪塚)洋介が出てた「池袋ウエストゲートパーク」みたいなドラマもあったし。いまの地上波はコンプラが厳しくて難しいだろうから、Huluオリジナルとかでやれたら楽しそうだよね(笑)。

Zeebra
「POWER / パワー」
シーズン1~3 Huluで配信中
シーズン4が4月18日(木)からHuluで配信スタート!
ストーリー

ニューヨーク・マンハッタンで毎晩行列ができるナイトクラブ「TRUTH」。クラブのオーナーのジェームズ“ゴースト”セントパトリックは元来持ち合わせているカリスマ性と礼儀正しい態度でスタッフからの信頼も厚いが、裏では裕福な有力者だけを対象にした儲けの大きいドラッグ販売を営んでいた。しかし、クラブの盛況ぶりを見たジェームズは、企業家としての自信を持ち、真っ当な人生を送りたいと考え始める。一度踏み込んだ道から、抜け出す手はあるのか?

スタッフ

製作総指揮:カーティス“50セント”ジャクソン、コートニー・ケンプ・アグボウ

キャスト

ジェームズ“ゴースト”セントパトリック:オマリ・ハードウィック

アンジェラ・ヴァルデス:リラ・ローレン

トミー・イーガン:ジョセフ・シコラ

カナン:カーティス“50セント”ジャクソン

ターシャ・セントパトリック:ナトゥーリ・ノートン

ホリー:ルーシー・ウォルターズ

ショーン:シンクゥア・ウォールズ

Zeebra(ジブラ)
Zeebra
東京都出身のヒップホップ・アクティビスト。キングギドラのフロントマンとして1995年にデビューする。日本語ラップの礎を築いたグループとして高い評価を得つつも、翌年にグループは活動を休止。1997年にシングル「真っ昼間」をリリースし、ソロアーティストとしてメジャーデビューを果たす。日本のヒップホップシーンの顔役として活動し、2014年に自身のレーベル「GRAND MASTER」を設立。同年夏には自身がプロデュースしたヒップホップ・フェス「SUMMER BOMB」をスタートさせた。2015年にはZeebraがオーガナイズとメインMCを務めるMCバトル番組「フリースタイダンジョン」がテレビ朝日で放送開始。空前のヒップホープブームを巻き起こす。2017年、自身の長年の夢でもあったヒップホップ専門ラジオ局「WREP」をインターネットラジオとして開局した。現在、東京都渋谷区の「渋谷区観光大使ナイトアンバサダー」を務めるなどその活動は多岐にわたる。