社長になったのはやりたいことをやるため
──新グループ・アイドル研究所(仮)でプー・ルイさんは社長兼プロデューサー兼メンバーという立場になります。このグループを作ろうとした経緯というのは?
これは「『みんなのプー・ルイ』出そうぜ」の流れで出てきた話です。私と渡辺さんの共通認識としてソロはメインじゃなかったから「次、何やる?」っていうところで。実は最初、「WACKの社員になってプロデューサーをやりなよ」と渡辺さんから言われて。でもまだ自分が裏方でプロデュースするのがイメージできなくて、面白味を感じなかったので「嫌です」と返事をしました。そしたら「じゃあ会社立ち上げてメンバー兼社長兼プロデューサーでやりなよ」と。
──社長になるきっかけは渡辺さんとのお話があったからなんですね。
はい。ごはんの席だったから向こうは覚えてないかもしれないけど、会社を立ち上げる話はもうちょっとあとに出てきたんです。自分がプロデューサーになって、楽曲制作から衣装まで一緒にできるチーム探しをして、アイドルをやればという話しかなくて。でも話が進むに連れて「会社にしたほうがいいんじゃない?」という感じだったんで。なりたくて社長になったというよりかは、やりたいことをやるために必要なことだったんです。
──会社として、グループ以外の事業計画もあるんですか?
いや、全然考えてないです。もう1回グループをやりたかったから。だから今の動きは全部そのためにやっていることなんです。
──全員面接オーディションをしてみての印象は?
時代が変わった感じはしました。WACKを知っている子が主に受けに来るんですよ。だけど例えばウイぽん(ファーストサマーウイカ)とかテンコ(テンテンコ)みたいな、“かわいくて変な人”とは違う女の子が今、WACK好きに刺さってると思うんです。一般的なアイドルやカッコいいアイドルを好きな層がWACKも好きになってきてるんだなって少し思いました。WACKのオーディションにはもっとたくさん応募があるから変な人も来てるかもしれないけど、私のやったオーディションではバランスの取れた変な人ってあんまりいなかったかも。
──オーディションには全部で何人ぐらい来たんですか?
250人くらい来ました。最初のBiSオーディションは30人、途中の追加メンバー募集のときは10人でしたから相当増えましたね。
中国展開を見据えた新グループ
──このグループは中国展開も掲げているそうですね。
渡辺さんからグループの企画書を書いたら見てあげるからと言われて。で、考えてみたけどなかなか思い付かなくて、2、3週間くらい放置してたんです(笑)。2期BiSでがんばれなかった自分がいるから……と言うのも、最初のBiSでがんばれたのは当たり前なんですよ、全部が初めてだから。全裸MVとか過激なこともありましたけど、そういうのを抜きにしてもすべてが楽しかった。リリースする、メディアに出る、オリコンチャートに入る、初めてのことを最初のBiSでひと通り経験したから、そのあとの人生は2周目って感じ。2期BiSは経験したことの繰り返しな部分もあれば、数年の違いでも時代が変わってやっちゃいけないこととかも増えたし、以前のようにがんばれない自分がいて。それでどうしたら自分は最初のBiSみたいな状況になれるのかを考えてみたら、もっと自分を追い込まないと無理だなって。もう歳を重ねてきたし、18、19歳のときみたいな初期衝動はやっぱり出せないから、どうしても。なので、“追い込む”というところで誰も知らない土地に行ってアイドルを作ろうという思いから選んだのが中国だっただけで、別に「今ビジネスでアツいから」とかそういうのは全然なくて。普通に逃げの心からの中国でした、最初は。もともと海外に基本まったく興味がない人間だったから、中国にいい印象も悪い印象も何もないままでした。なので怖いもないし、楽しそうもない。
──実際に中国に行ってみたのは、どういう場所か確かめるため?
そう。行ってみたらすごく嫌になるかもしれないじゃないですか。それは怖いから1回行ってみようと思って行ってみたら楽しかったし、よかったなって。
──なるほど。中国で展開するとしたら、契約の話などもあると思うんですけど。
そのあたりをやるのはシブテレ(シブヤテレビジョン)さんなんです。現地に拠点がある会社じゃないとなかなか参入が難しいみたいで。ビザとかいろんなアカウントの申請とか。一応、年内は日本で来年以降は海外という計画ですけど、来年になって中国に移住するわけではなくて、現実的には中国版のSNSを始めるとか、そういうところからになりそうです。
──今、アイドルを中国でやるっていうことにどんな可能性を感じてますか?
いやーまだ全然わかんないですね! いろんな人から話を聞いていて、可能性はありそうだなと思うけど、「めっちゃ夢があります!」ってほどではない。今はどちらかと言うとデビューに向けての準備に時間を取られちゃってます。
プー・ルイのチーム作り
──新グループの制作陣はどうやって見つけたんですか?
渡辺さんと松隈さんと私で始めた最初のBiSはお金がなかったんですよ。初期のMVを観たらわかると思うんですけど、低予算で。なので、制作に関してはみんな知り合いというか、「渡辺さんのためにやるよ」という人を集めたチーム作りだったと思うんです。「今度はお前がそれを作りなよ。やり方はお前が決めてけばいい」と言われて。
──今まで渡辺さんがやっていたことを自分でやるようになったと。
例えば楽曲を頼むにしても、1曲ごとに違う作家さんにピンポイントで頼むこともできるし、“WACK楽曲は松隈さん”みたいに1人にずっと頼むやり方もありますよね。そのときに私は松隈さんと渡辺さんの関係性がすごくいいなと思ってたんですよ。一緒にがんばって、一緒に上を目指してる感じがすごくいいなって思ったから、私も1人の作家とやりたいと思って、そういう人を探すことにして。でもお金もないから、ホント最初は泣いてもらう覚悟で「がんばろう、ここから」と一緒にやってくれる人を何人かあたって見つけました。そもそもハードルが高いんです。だって、ずっと松隈さんの曲を歌ってきたから、嫌でも求める楽曲のレベルが上がっちゃうんですよ。だから正直、やりたいと思える人も少なかった。
──楽曲制作以外にはどんなスタッフを探したんですか?
デザインの子は10年くらい前からの知り合いで、その人の作るものが好きだったんですよ。お世辞抜きで。だからこれを機に一緒にやりたいなと思って声をかけました。その人にはデザインだけじゃなくてけっこういろんなことをやってもらっていて。友達だからというのもあるんですけど、性格も知ってるから、いろんな面で助けてもらってます。
──そういうメンバーが会社にジョインする可能性もあるんですか?
今後はあるかもしれないけど、ジョインしちゃうと給料が発生するじゃないですか。私は申し訳なさすぎて、最初は全然払えないけど、やってもらってることが多すぎるから入ってくれたらそういうやり方もあるとは伝えたんですけどね……でも今は「無償でいいから手伝うよ」って感じで、会社に入るとかは先の話でいいからと言って動いてくれています。
──曲の方向性は?
曲の方向性は、先入観を持ってほしくないから楽しみにしていてほしいです(笑)。最初は松隈さんみたいなロックな曲がいいなって思ったんですよ。で、一緒にやることになった作家には「洋ロックみたいなオケにJ-POPのメロディが乗ってるもの」と注文を出したんです。でもそれこそ今そういう曲を書かせたら松隈さんが最高峰だと思うんですよ。作家の人はそっち系のジャンルをやってきた人じゃなかったから、「もっとこうしてほしい」って伝えるたびにどんどん違う方向に行っちゃって迷子になってました。1カ月くらいそんなやり取りを繰り返してたので、1曲目が一番大変でした。煮詰まってきたときに、その人が前にやってたバンドのデモを「こういうのどうかな」って聴かせてもらって。そしたらそれがめちゃめちゃカッコよかったんです。バンドサウンドという点では一緒だけど、いわゆるWACKとは違う感じです。だけどすごくカッコよかったから、その方向でやることになって。そこからはけっこう早かったです。
──グループのコンセプトは?
「アイドルを研究する」というのは変わらずありますね。海外でも日本のアイドルと言えばAKB48のようなイメージが強いと思うんです。WACKっていう言い方すると誤解が起きるけど、初期BiSのような変なアイドルが日本にはいるんだよ、流行としてあるんだよというのを外に出したいっていうのも裏のテーマとしてありますね。
これが独り立ち
──お話を聞いていると、昔の夢だったバンド活動が形を変えてできている感じがしますね。
制作側に入るとバンドを組んでるみたいで楽しいですね。楽曲をやってるわけじゃないけど、それぞれの役職で、曲の人は曲をがんばる、デザインの人はデザインをがんばるとか。そういうのが集まって、じゃあこうやってこういうグループにしようかっていう話をするのは確かにバンドっぽいですよね。バンドだって最初、スタジオに入るのにお金を払って、集客がないからノルマを払って、収支がマイナスでもやるっていう。だからそういうのはすごく近い。そうやって作りなって渡辺さんに言われたし、渡辺さんたちも10年前はそういう感じだったんだと思います。制作チームももちろん今でこそちゃんとしてますけど、10年前はホントみんな手探りで。松隈さんは曲作りこそできるけどどういうミックスにしたらいいのかとかもわからなかっただろうし、渡辺さんもどうしたらアイドルが売れるかわかってなかった。わかってたらソロのプー・ルイで売れてたはずだし(笑)。手探りだけど「このBiSを売ろう」という意識だけを共有してやってたから。それを今回は「お前を中心に人を集めてやりなさい」という。
──今後も渡辺さんからはアドバイスを受けながらやっていくんですか?
そうですね。まあそういう関係性ですから、ずーっと。でも今回はある意味これは独り立ちですよ。アドバイスと言ってもお金のことくらいしか教えてもらってないですから。衣装もこっちがいいよ、とか別にそういうのはまったく口出ししてこないです。曲を聴かせても別に口出さないし。私が迷ったときに「どっちがいいですか」って聞いたら「俺はこっちが好きだよ」とかそれぐらい。友達に聞くくらいの感覚でやっていくと思います。
- 新グループメンバーオーディション全員面接
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- 2020年3月20日(金・祝)10:30~ 2020年3月21日(土)10:30~ 会場:株式会社WACK(東京都渋谷区道玄坂1-16-6二葉ビル)