今、エンタメに求められているものは何?
──そして今回、ポルノグラフィティはいよいよ“新始動”となります。このタイミングになったのは何か理由があったんでしょうか?
岡野 世の中的にはオリンピックがあったので、それが終わったあとかなというなんとなくのイメージはありました。同時に9月は僕らのデビュー月でもあるので、やっぱりそこにぶつけていくのがいいんじゃないかと。
新藤 どんな形で新始動するかという部分に関しては、スタッフも本当にたくさんのアイデアを出してくれたんですけど、気付いたら多牌(麻雀で手持ちの牌が13枚以上になってしまうこと。チョンボ)みたいになっちゃってて(笑)。だから一度、流したんですよね。で、結局は2人で曲出しをして、そこから選んだものをシングルとしてリリースするっていうシンプルな形になりました。
──表題曲となる「テーマソング」は、作詞を晴一さん、作曲を昭仁さんが手がけた楽曲ですね。アレンジは立崎優介さん、田中ユウスケさん、ポルノグラフィティの共同クレジットになっています。
岡野 1年くらい前からみんなでユニゾンで歌い合う曲を作りたい気持ちが強くなっていたというのがこの曲の発端なんですよ。サビをユニゾンで歌い合う曲ってポルノではあまりなかったと思うし、世の中的にも例えばBLACKPINKの「Lovesick Girls」のようにユニゾンが強烈な印象を残す曲があったりもするので、そういったものを作ってみたかったっていう。今はコロナ禍なのでライブでは声を出せない状況ですけど、いつか収束したときにこの曲を歌い合えるんだと思えば、未来への希望になるんじゃないかなという思いもありましたね。
──歌詞の内容的にも、今の世界の状況を踏まえたうえで、光を感じさせてくれるものになっていますよね。
新藤 この2年の間、「エンタメとは?」みたいなことをよく考えていたんですけど、今のコロナ禍という状況において3分なり4分なりの時間をもらって曲を聴いてもらうからには、明るいとは言えない世の中のことを一瞬でも忘れられるものにするべきだなと思ったんですよね。平時であればそこを意識する必要はないのかもしれないけど、今はそれこそがエンタメに求められているものなんじゃないかなと僕は思ったので。今回のシングルに関しては3曲ともそういった着想で詞を書きました。3曲目の「IT'S A NEW ERA」は曲調が違うので違う言葉を選んでますけど、伝えたいことは「テーマソング」とまったく一緒ですね。
──「テーマソング」の歌詞はものすごくストレートに書かれている印象もありますよね。
新藤 今回はそうしました。聴いてくれる人の背中をてらいなく押そうっていう。「今の状況のエンタメはそういうもんやん?」っていうね。
──曲の構成で言うと、「テーマソング」はサビ的なパートが2種類ありますよね。いわゆるJ-POPのセオリーに囚われない自由度の高さは、ソロ活動で澤野弘之さんをはじめとするさまざまなクリエイターとのコラボによってもたらされたものなのかなと想像したんですけど。
岡野 あ、その影響は間違いなくあると思います。澤野くんとの曲もそうだし、弾き語りでいろんな人の曲をカバーしたのもそうだけど、今までの自分は自分で作った型にはまった曲作りをしていたなということに気付かせてくれたんですよね。さらに今回はアレンジャーの立崎くんと田中くんがいろいろなアイデアを出してくれたのも大きかったですね。ホントに固定観念を崩した曲作りができたと思います。
理解度が深まった自分の声
──「テーマソング」のボーカルはどんなイメージでレコーディングしましたか?
岡野 今までは無意識に自分の声色をチョイスしていたところがあったんですけど、ソロ活動を経たことで、わりと意識的に表現やトーンを選びながら歌うようになったとは思います。この2年間は家でもいっぱい歌ったし、編集やミックスも自分でやったりしましたからね。それだけ自分の声への理解度が深まったということなんじゃないかな。そのあたりが聴き手の方にどれくらい伝わるのかはわからないんですけど。
──いや、確実に最新の昭仁さんのボーカルが刻まれていると思います。曲が生まれるきっかけになったユニゾンパートもすごくいい仕上がりで。聴いているだけで気持ちが高揚してきます。
岡野 あそこは何声重ねたっけ?
新藤 めちゃくちゃ重ねてたよ。高い、低い、元気、元気じゃないとか、いろんなタイプの声色をたくさん重ねていって。
岡野 女性の方もいらっしゃいましたけど、男性の声が前に出たミックスになっているのは、曲の方向性として僕らが決意を持ってユニゾンしているんだっていうことを伝えたかったからです。コーラスグループをやられていたプロの方々に歌っていただいたんで、すごくいい仕上がりになりましたね。
新藤 1人の声をいくつも重ねていくよさもあると思うけど、今回のようにたくさんの人の声を重ねるとまた違ったパワーが出ますよね。曲にふさわしい、グッとくる合唱になったと思う。ライブでは僕もユニゾンに参加しますよ、たぶん(笑)。
「待ったかいがあった」と思ってもらえるように
──2曲目には「CYBERロマンスポルノ’20~REUNION~」で初披露されていた「REUNION」が収録されています。歌詞は晴一さんと昭仁さんの共作、作曲は昭仁さん、アレンジはtasukuさんとポルノの共作ですね。
岡野 ひさしぶりのライブをやるうえで、その時代にしか歌えないものとしてライブを司るような曲が必要なんじゃないかと思ったんですよね。なので、2020年12月のライブで演奏することを強く意識して作りました。ファンの方にも喜んでいただけたようなので、そこはすごくうれしかったですね。
──音源化にあたって、歌詞が少し変わっていますよね。
新藤 そうですね。大サビも新たに加えましたし。歌詞の内容的には、昭仁が書いた“REUNION”を繰り返すところが念仏みたいに感じたので(笑)、それにふさわしいちょっと内省的な世界を書いていきましたね。なかなか外に出られない状況だけど、自分の心の内にも宇宙と同じくらいの広さがあるんだよっていうイメージで。
──そしてもう1曲、「IT'S A NEW ERA」は晴一さんの作詞・作曲で、アレンジは宗本康兵さんとポルノの共作です。
新藤 さっきも言いましたけど、歌詞は「テーマソング」と同じことを言ってますね。曲はちょっと大きな世界観を意識して作ったというか。僕はもともとミュージカルの音楽がすごく好きで、体に染み付いていたりもするので、その影響があったとは思います。自分としてはすごく好きなタイプの曲ですね。
──歌詞はもちろん、曲の構成にも物語性を感じますよね。どんどんドラマチックに展開していく気持ちよさがあります。
新藤 そうそう。ドラムを録ってもらうときも、Aメロは湖畔をしょんぼり歩いている感じで、それがだんだん小走りになって、サビで走り出すみたいなイメージをリクエストしましたし。そういうイメージは大事にしました。
──ボーカルに関してもそういった1曲としての流れは意識しましたか?
岡野 そうですね。新藤と(宗本)康兵にディレクションしてもらいながら、“新世界”に向かうまでの山を作ることはイメージして。現場でサビが8小節増えたりもしたし、レコーディングしながらどんどん成長して、どんどんよくなっていった曲だと思います。
新藤 オケ自体、すごく熱さを持った仕上がりになったんですけど、昭仁の声が入ったことでその熱さが倍増した感じがありましたよね。すごくいい曲になったと思います。
──本作のリリース後、9月25日から「17thライヴサーキット“続・ポルノグラフィティ”」がスタートします。
新藤 「2年前に東京ドームに立たせてくれてありがとう」という気持ちを伝えながら全国を回りたいという気持ちがまずありますね。そのうえで、「待った甲斐があった」と思ってもらえるライブにしなきゃなって思います。コロナ禍でのツアーという意味では、各公演ができるという確約があるわけではないので、毎公演感謝の気持ちも強くなると思います。お客さんは少なからずリスクと覚悟を持って参加してくれることになると思うので、今までのツアーとはまったく違ったものになるような気もしていますね。
岡野 ステージに立ちたいという思いをここまで強く持った状態でツアーに臨むのは初めてかもしれないです。「今さらかよ」って言われそうですけど(笑)、でもホントに人前で歌うことが今は本当に楽しみで仕方がないんです。なのでね、いいおっさんがうれしそうに歌ってる姿を見せることで、皆さんにも楽しい気持ちになってもらえたらいいかなと。このツアーを通してまた何か得るものがあると思うので、それもすごく楽しみです。
ライブ情報
- ポルノグラフィティ 全国ツアー17thライヴサーキット“続・ポルノグラフィティ”
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- 2021年9月25日(土)東京都 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)(※ファンクラブ会員限定)
- 2021年10月1日(金)静岡県 静岡市民文化会館 大ホール
- 2021年10月5日(火)兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
- 2021年10月7日(木)滋賀県 滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール
- 2021年10月8日(金)奈良県 なら100年会館
- 2021年10月11日(月)大阪府 オリックス劇場
- 2021年10月12日(火)大阪府 オリックス劇場
- 2021年10月15日(金)福岡県 福岡サンパレス ホテル&ホール
- 2021年10月16日(土)福岡県 福岡サンパレス ホテル&ホール
- 2021年10月25日(月)宮城県 仙台サンプラザホール
- 2021年10月26日(火)宮城県 仙台サンプラザホール
- 2021年10月28日(木)群馬県 高崎芸術劇場
- 2021年11月2日(火)高知県 高知県立県民文化ホール
- 2021年11月4日(木)香川県 サンポートホール高松
- 2021年11月9日(火)石川県 本多の森ホール
- 2021年11月10日(水)石川県 本多の森ホール
- 2021年11月15日(月)神奈川県 神奈川県民ホール
- 2021年11月25日(木)広島県 広島文化学園HBGホール
- 2021年11月26日(金)広島県 広島文化学園HBGホール
- 2021年11月28日(日)愛知県 アイプラザ豊橋
- 2021年11月30日(火)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
- 2021年12月1日(水)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
- 2021年12月6日(月)栃木県 栃木県総合文化センター メインホール
- 2021年12月8日(水)千葉県 千葉県文化会館
- 2021年12月13日(月)北海道 札幌文化芸術劇場hitaru
- 2021年12月14日(火)北海道 札幌文化芸術劇場hitaru
- 2021年12月21日(火)東京都 東京ガーデンシアター
- 2021年12月22日(水)東京都 東京ガーデンシアター
- ポルノグラフィティ
- 岡野昭仁(Vo)と新藤晴一(G)からなるロックバンド。1999年9月にシングル「アポロ」でメジャーデビューし、2000年7月のシングル「ミュージック・アワー」がポカリスエットCMソングに採用され大ヒットを記録する。続く「サウダージ」は初のミリオンセールスとなり、一躍トップアーティストの仲間入りを果たす。その後も「アゲハ蝶」「メリッサ」「ハネウマライダー」などヒット曲を連発する。2014年9月には結成15周年の集大成となるスタジアムライブ「神戸・横浜ロマンスポルノ'14 ~惑ワ不ノ森~」を開催。さらに2016年にも横浜スタジアムライブを行い2日間で6万人を動員するなど精力的にライブやリリースを重ねる中、2017年には初の台湾ワンマンライブを行なった。2019年9月にデビュー20周年を記念した単独公演「20th Anniversary Special LIVE “NIPPONロマンスポルノ'19~神VS神~”」を開催し成功を収める。2021年9月に約2年ぶりとなるシングル「テーマソング」をリリースし、同月より全国ツアー「17thライヴサーキット“続・ポルノグラフィティ”」を開催する。