ポルノグラフィティがニューシングル「ブレス」を7月25日にリリースした。
作詞を新藤晴一(G)、作曲を岡野昭仁(Vo)が手がけた表題曲「ブレス」は、現在公開中の映画「劇場版ポケットモンスター みんなの物語」の主題歌として書き下ろされたもの。心地よい風を感じさせる爽快なサウンドに乗せて、自分なりの視点で自分の物語を紡いでいくことの大切さを歌った本作は、ポケモンの世界観にしっかり寄り添いながら、幅広い世代の人たちにも響き得るポジティブなメッセージソングとなっている。
岡野が新たなクリエイティビティを発揮して作り上げたEDMナンバー「海月」や、新藤が楽しみ尽くして生み出したロシア民謡から着想を得た一発録りの「ライラ」というカップリング曲も収録された充実の47thシングル。その制作にまつわるエピソードをメンバー2人に聞いた。
取材・文 / もりひでゆき
主題歌としての役割を全うしよう
──「劇場版ポケットモンスター みんなの物語」の主題歌を依頼されたときのお気持ちから聞かせてください。
岡野昭仁(Vo) それはもううれしかったですよ。ポケモンという作品の存在のデカさは重々感じていましたから。今回から映画の監督さんが変わったことでチームとしての新しい息吹みたいなものも感じましたし、僕らに対しての熱い気持ちも持っていただけていたので、これは主題歌としての役割を全うしようと思いましたね。
──制作にあたって映画の制作サイドと綿密な打ち合わせをされたそうですね。
新藤晴一(G) うん。そこでもね、いい作品を作ろうっていう気概はすごく感じました。曲が流れるエンドロールのアニメは、曲を聴いてから描きたいっていうお話もされていて。だから僕らとしては、そんなスタッフの方たちにまず面白がってもらえる、喜んでもらえる曲を提示したいなと思ったんですよね。
岡野 先方からは「ポルノさんらしいハイテンポな曲を」っていうリクエストをいただいて、1つの例えとして「キング&クイーン」の名前が挙がったんですよ。
──まさにポルノの王道を求められた感じですね。
岡野 そうそう。あの曲はもう、ポルノとしてのどストレートですからね。ただ、そんなリクエストをいただきつつも、「キング&クイーン」に自ら真っ向勝負を挑むのもどうかなっていう気持ちもあって。もっと全方位に、大多数に向けたポップソングを作ったほうがいいんじゃないかなという思いもあったんです。で、いろいろ曲を作ってみた結果、「ブレス」のメロディを先方に選んでいただいた感じでしたね。
新藤 全部で5、6曲作り、そのうちの2曲くらいを先方に聴いていただいた感じだったと思います。俺が出したのは壮大なバラードっぽい曲でしたね。リクエストとは全然違うんだけど、ポケモンの映画の最後にこれが流れたら面白そうだなっていう視点で、ちょっとチャレンジしてみたと言うか。
──昭仁さんの作った「ブレス」も言ってしまえばリクエスト通りのものではないですしね。
岡野 テンポ感的な意味では確かにそうですね。どこかで抗う気持ちがあったのかもしれない(笑)。先方のイメージを超える部分で勝負してやるぞ、みたいなね。
──でも、さわやかな仕上がりの「ブレス」は映画の世界観に見事にマッチする仕上がりになりました。
岡野 タイアップという枠があるならば、今回はその端っこまで徹底的に塗り潰すように曲を作ったところがあったんですよね。楽曲として、メロディとして作品に寄り添おうという気持ちは今までで一番強かったかもしれない。そのうえで、あまりに子供じみたものになってはいけないという思いもあったし、これまで僕らがやってきたことを否定しないギリギリのラインのポップソングにすることもすごく意識しました。メロディはかなり慎重に、何度も作り直していきましたね。
ポケモンの世界に対して異物感を突っ込みたかった
──一方、晴一さんの手がけた歌詞は実にポルノらしい視点で描かれているのが印象的で。映画が伝えようとしているメッセージをちゃんと投影しつつも、どこかシニカルなニュアンスも感じさせる歌詞になっていますよね。最初のフレーズからして、「ポジティブな言葉で溢れているヒットチャート 頼んでもないのにやたら背中を押す」ですから。
新藤 アレンジされた曲がほんとにポケモンにバッチリ合ってるなと思えたので、じゃあ歌詞では何を書こうかと考えたわけですけど、そこでもポケモンに寄せてしまうとね、ポケモンの世界がデカいだけに、ただ取り込まれて単なるBGMで終わるなって思ったんですよね。でも取り込まれないようにってことばかり考えると、無茶しすぎだなっていう歌詞になったりもして(笑)。そこのバランス、ちょうどいい塩梅を見つけるためにいろんなパターンの詞を書きましたね。かなり難しかった。その中で「ヒットチャート~」ってフレーズが出てきたのは、ポケモンの世界に対して異物感を突っ込みたかったからです。
──その異物感がいいフックになっていますよね。そういう視点が入ることで、幅広い層に響く曲になっているとも思うし。
新藤 うん。伝え聞いたところによると、映画の制作スタッフの人たちが、歌詞を含めすごく気に入ってくれてるらしくて。そういう意味では大人の人にもちゃんと受け入れてもらえるポップソングとして、1つの正解は作れたんじゃないかなと思っていますね。
岡野 歌詞に関しては絶対苦労するだろうなと思ってたんですよ。僕がメロディやサウンドでポケモンの世界にグッと寄せ切ることができたのは、全体的なバランスを晴一が歌詞で取ってくれるだろうなという、これまで築き上げてきた信頼感があったからこそなんです。でも今回はポップに寄せ切って、書ききってしまった分、絶対歌詞は難しいだろうなって。ただそうやって今まで以上に各々がやるべきことを意識した結果できあがったこの曲は、確実にポルノとして新しいものになったとは思うんですよね。
──まさに映画のテーマでもある「ひとりじゃできない」ってことですね。
新藤 そうですね(笑)。
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ライブでもこれまでと違った世界観を作れそう
- ポルノグラフィティ「ブレス」
- 2018年7月25日発売 / SME Records
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初回限定盤 [CD+DVD]
2000円 / SECL-2307~8 -
通常盤 [CD]
1300円 / SECL-2309 -
期間生産限定盤 [CD+DVD]
1600円 / SECL-2310~1
- 初回限定盤、通常盤CD収録曲
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- ブレス
- 海月
- ライラ
- 期間生産限定盤CD収録曲
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- ブレス
- 海月
- ライラ
- ブレス instrumental
- 初回限定盤DVD収録内容
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- 「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017」ライブ映像
- 期間生産限定盤DVD収録内容
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- 「劇場版ポケットモンスター みんなの物語」 short movie with 「ブレス」
- ライブ情報
ポルノグラフィティ「しまなみロマンスポルノ'18~Deep Breath~」 -
- 2018年9月8日(土) 広島県 広島県立 びんご運動公園
- 2018年9月9日(日) 広島県 広島県立 びんご運動公園
- ポルノグラフィティ
- 岡野昭仁(Vo)と新藤晴一(G)からなるロックバンド。1999年9月にシングル「アポロ」でメジャーデビューし、2000年7月のシングル「ミュージック・アワー」がポカリスエットCMソングに採用され大ヒットを記録する。続く「サウダージ」は初のミリオンセールスとなり、一躍トップアーティストの仲間入りを果たす。その後も「アゲハ蝶」「メリッサ」「ハネウマライダー」などヒット曲を連発する。2014年9月には結成15周年の集大成となるスタジアムライブ「神戸・横浜ロマンスポルノ'14 ~惑ワ不ノ森~」を開催し、さらに2016年にも横浜スタジアムライブを行い2日間で6万人を動員するなど精力的にライブやリリースを重ねる中、2017年には初の台湾ワンマンライブを開催。夏には「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」を始めとするフェスや野外ライブイベントに参加した。同年10月に通算11枚目のオリジナルアルバム「BUTTERFLY EFFECT」をリリースし、11月より「15thライヴサーキット“BUTTERFLY EFFECT”」を開催。2018年3月にシングル「カメレオン・レンズ」を、7月に「劇場版ポケットモンスター みんなの物語」の主題歌「ブレス」を含む同名シングルを発表した。9月には地元の広島・広島県立びんご運動公園にて野外ライブ「しまなみロマンスポルノ'18~Deep Breath~」を行う。