popoq|バンドの在り方は変わっても、バンドであることは変わらない

明るいフィナーレを迎えるアルバムに

──バンドという形を意識しない曲がアルバム後半に並んでいるのに対して、1曲目の「canvas」や2曲目の「eve」はストレートなバンドサウンドを意識した構成になっているのも今作の特徴だと思います。

右京 特に「eve」はバンドサウンドのカッコいい曲にしようと思って作った曲なので、アルバムの後半と聴き比べるとその落差に驚くかもしれないですね(笑)。カッコいい曲のつもりだったのに、改めて完パケした音源を聴いていたらちょっと切ない曲に聞こえてきて。これは渉さんが書いた歌詞の影響が強いのかも。

上條渉(Vo, G)

上條 僕の勝手なイメージなんですが、「eve」のデモを聴いたとき、雪の降る12月24日の風景が浮かんだんです。雪の降る街のイメージを右京にも話して、いろいろ密にやり取りしながら完成したのが「eve」という曲です。

右京 切ないけどどこか前向きな曲なんですよね。ただ悲しいだけじゃなくて、ちゃんと抜けていく曲の明るさは保たれている。今回のアルバムは9曲ともそれぞれ違うキャラクターを持たせようと思って、「eve」にはカッコいいバンドの姿を委ねていたんですが、デモのときとちょっと違うイメージの、いい味のある曲に仕上がったと思います。それと、9曲のキャラクターがさまざますぎて、曲順をどうするのかはかなり悩みました。

──アルバム前半と後半のコントラストがハッキリしているので、アルバムを通して聴くと「これしかない」と思うものがありますが……。

右京 そもそもサブスクとかが流行していく中で、最近は曲順をあまり意識されない傾向にあって。だからこそアルバムを聴いた人の琴線に触れるものにするためにどうするかをすごく考えたんです。僕は最後にハッピーエンドのような明るいフィナーレを迎えられるアルバムが好きなので、そこにどう向かうかで悩んで……。

──アルバムの中盤「00」で一度“壊れている様子”を表現していますから、そこからまた修復しなければならないわけですよね。

右京(Dr, Cho)

右京 壊れたまま「sequence」で終わらせる選択肢もあったんです。そのパターンのストーリーは、全部壊れてしまって、過去を思うノスタルジーに浸って終わるというもの。でもやっぱり前向きになれるほうがいいなと思って、最後に「magic」という曲を置きました。

──「00」を経て「geometry」「sequence」と打ち込み主体の異色な曲が続きますが、最後に「magic」でバンドサウンドの要素を取り戻す構成になっています。

右京 「magic」はメロディが思い浮かんだときから心が明るくなる曲だったので、フィナーレに持ってくる候補に上がっていて。特に決め手になったのはアウトロの「magic」という言葉を繰り返すコーラス部分。ここがすごく伸びやかで気持ちよくて、終わったあとにもう一度聴きたくなるような高揚感があるんですよね。壊れてしまった世界でも気持ちは前向きであってほしいし、僕らは音楽を通じて何かプラスな要素を受け取ってほしいわけですから、「magic」を最後にして正解だったと思います。

コロナを経てパフォーマンスが変わった

──ここまで曲作りの変化についていろいろ伺ってきましたが、popoqのライブに関してはどう変わったと自覚していますか?

上條 体で熱量を表すんじゃなくて、気持ちとか心で熱量を表すことを意識するようになりました。お客さんの体の動きが大きければいいわけではなくて、自然と体が揺れるようなライブのほうがいいライブだったと思うときもある。それはお客さんの動きだけじゃなくて、自分の動きも同じなんです。気持ちが入ればオーバーアクションになるというわけじゃない。歌という表現と真摯に向き合うことができるようになって、自分のパフォーマンスは少し変わったかもしれないですね。

オグラユウキ(B, Cho)

オグラ 僕も上條くんと似てるかな。以前の僕はライブをするときも「自分との戦い」みたいな意味合いが強くて、ちょっとギラギラしていたんです。目の前にいるオーディエンスのことを意識はしているけど、今日の自分がどこまでできるかに気を取られていたというか。この1年を通して、自分の身近な人の大切さや、ライブを観に来てくれる人を大事にしたい気持ちが強くなった。当たり前のことなんですけどね(笑)。それに気付かされたので、今まで衝動的にやっていたプレイがちょっと変わった感じがします。もっと外を向いて、ちゃんと音を伝えることを意識しながらもプレイはカッコよく、みたいな。ああ、早くライブがしたいですね。

右京 カッコいい曲をやるときは勢いよく、みたいな考え方は確かに少し変わったと思います。前作の「Crystallize」から曲のよさをいかにライブで伝えるかを考えるようになって、それはただ同期音源を流して再現するだけではない、生で演奏するからこそのよさを追求するようになってきたんです。今、準備中ですけど、今作の曲をライブでやるのが楽しみですね。

──8月にはひさびさのツアーが開催される予定です。どんなライブにしたいですか?

右京 曲のよさを伝えたいのはもちろんなんですが、足を運んで観に来てくれた人に「やっぱりライブっていいな」と思ってもらえるようなものにしたいですね。

上條 どんどん音楽の在り方が変わっている中で、もしかしたら「ライブに行かなくなってしまった」という人もいると思うんです。でも、僕らが生きるには音楽が必要で、幸いにも僕らの音楽を聴いてくれる人、ライブを観に来てくれる人がいる。この当たり前を大事に、目の前の人にただいい歌を伝えたいです。音楽を届けるという活動の尊さを忘れないように、いいライブにしたいですね。

オグラ 僕はライブなしでは生きられなかった人間だから、ようやくツアーを回れるのがうれしくて仕方ないですね。一般的には少数派だとは思いますけど、ライブに行って人生変わった人ってバンドマンやライブハウスに通う人の中にたくさんいるんですよ。僕もその1人なので、自分の生き甲斐であり、生で音楽を体験できるライブという場所を守るためにも、しっかりツアーを回ってライブハウスの空気感をお客さんと一緒に共有したいですね。

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