Zeebraが語る「プーと大人になった僕」|働きすぎのZeebraにプーが教えてくれたこと

クリストファー・ロビンのここがダメ

──今のZeebraさんはまさに、この映画の中でのクリストファー・ロビンみたいな状況なんですね。

映画「プーと大人になった僕」のワンシーン。

本当にそうですね。ただ映画を観ていて、すごく思ったことがあって。クリストファー・ロビンが仕事のために娘や奥さんと遊びに行く約束を破ってしまうシーンがありましたけど、仕事を優先しなきゃいけないにしても、娘にちゃんと謝れよ、と(笑)。そりゃどうしても仕事をしなくちゃいけないときもあるけど、ちゃんと謝ったり、ほかで埋め合わせをしたりしなきゃダメ。僕は子供が残念がるところは見たくないし、子供への接し方はクリストファー・ロビンとは全然違うと思います。

──なるほど。クリスファー・ロビン役のユアン・マクレガーの演技はどうでしたか?

忙しくてイライラしてしまうけど、悪いやつではない感じが出ていてよかった。本来の自分から目を背けているような感じで、奥の深い演技だと思いましたね。

──映画を観ていて、ご自身の幼い頃の思い出と重なる部分はありましたか?

映画「プーと大人になった僕」のワンシーン。

それはあんまりないかな。僕の育ての父親は、クリストファー・ロビンと違ってずっと「勉強しろ」って言う感じじゃなく、もうちょっとノリのいいカジュアルな感じの親だったから。友達の延長線上で付き合える父親でした。

──ご自身もそういう父親を目指していますか?

一番自分に近いロールモデルですね。ミュージシャンのお父さんとしては、Charさんを一番リスペクトしています。息子のJESSE(RIZE)がクソいいやつだから、あんな子供を育てられる父親になりたいなって昔から思っていて。

──CharさんはJESSEさんをどうやって育てたんでしょう。

自分が仕事をしている現場にたくさん連れて行ったらしいです。現場に連れて行かれた子供たちが集まってRIZEができたらしいので。僕はミュージシャンの家系には生まれてこなかったので、余計にそういうのっていいなと思っていましたね。

オンオフのバランスが大事

──この映画では「何もしないこと」の重要性が説かれていますが、Zeebraさんにはそういう時間はありますか?

Zeebra

僕は常に何かをしてないと生きていけないタイプの人間で、映画の中でプーが言う“Doing Nothing”がなかなかできないんですよね。とにかく頭を使うのが好きで、ちょっと時間あったらなんかしちゃう。パズルゲームをやったり、映画やドラマを観たり、脳みそを使ってないといられないタイプで。本当に何にもしないことってないんですよね。DJもやってるんですけど、曲の整理だとかは一生終わらないし。それを重ねて、この映画を観ていて「クリストファー・ロビンは仕事辞めちゃったらどうするんだろう……」とか「いい給料もらってるんだろうな……」とか現実的なことを考えてしまう瞬間もありました(笑)。友達や家族も大事にすべきだけど、毎日100エーカーの森で遊んでいるわけにもいかない。結局はバランスが重要だと思うんです。大切なモノを見失わないためにオンオフをしっかり分けたほうがいいって思いました。

──なるほど。この映画でほかに印象に残った場面はありますか?

昔、一度だけイギリスには行ったことがあるんですけど、改めて街並みがきれいだなと思いました。あと100エーカーの森を観て、ひさしぶりに自然と触れ合いたい気持ちになりましたね。子供の頃に軽井沢によく行ってたことを思い出しました。

──最後に、どういう人にこの映画を観てほしいと思いますか?

この映画を観たら、みんな何かしら自分と重なる部分や思い当たる節があると思うんですよ。働きすぎだったり、友達や家族など本当に大切な何かをないがしろにしていたり。だから特定の誰かって言うんじゃなくて、みんな観たほうがいいです。

映画「プーと大人になった僕」のワンシーン。
「プーと大人になった僕」
2018年9月14日(金)全国公開
「プーと大人になった僕」
ストーリー

100エーカーの森に住む親友プーや仲間たちと遊んでいた想像力豊かな少年クリストファー・ロビンも、今ではすっかり大人になり仕事中心の忙しい毎日を送っていた。ある日クリストファー・ロビンは、妻子と実家で過ごす約束だった週末に仕事を任されてしまう。職場と家族の問題に頭を悩ませていると、彼の前にかつて親友だったプーが突然現れて……。

スタッフ

監督:マーク・フォスター

キャラクター原案:A・A・ミルン、E・H・シェパード

キャスト

ユアン・マクレガー、ヘイリー・アトウェル、ジム・カミングス(※声の出演)ほか

日本語吹替

堺雅人、かぬか光明、玄田哲章、石塚勇、小形満ほか

Zeebra(ジブラ)
Zeebra
東京都出身のヒップホップ・アクティビスト。キングギドラのフロントマンとして1995年にデビューする。日本語ラップの礎を築いたグループとして高い評価を得つつも、翌年にグループは活動を休止。1997年にシングル「真っ昼間」をリリースし、ソロアーティストとしてメジャーデビューを果たす。日本のヒップホップシーンの顔役として活動し、2014年に自身のレーベル「GRAND MASTER」を設立。同年夏には自身がプロデュースしたヒップホップ・フェス「SUMMER BOMB」をスタートさせた。2015年にはZeebraがオーガナイズとメインMCを務めるMCバトル番組「フリースタイダンジョン」がテレビ朝日で放送開始。空前のヒップホープブームを巻き起こす。2017年、自身の長年の夢でもあったヒップホップ専門ラジオ局「WREP」をインターネットラジオとして開局した。現在、東京都渋谷区の「渋谷区観光大使ナイトアンバサダー」を務めるなどその活動は多岐にわたる。