ナタリー PowerPush - POLYSICS

3人が語るボコーダー&シーケンサー論

ここまで極端に変えてもいいんだ

──で、今回は「ワトソン」と「KI.KA.I.DA!」のリメイクも入ってますね。これが傑作というか、この2曲が今回のシングルの目玉だと私は思いますが(笑)。

フミ きゃははは!(笑)

ハヤシ そう言うと思った! 小野島さんは(笑)。

──見抜かれてますね(笑)。なぜこの2曲を?

ハヤシ カップリングをどうしようかというときに、以前から過去の曲をレコーディングし直して入れたいというのはあったんです。でもちょっとリアレンジした程度の曲を入れても面白くない。ものすごくアレンジするなら面白いと思ってたところに「ワトソン」のリメイクができて、去年の秋ぐらいからライブでやり始めて、お客さんからも好評で。じゃあこれは入れようと。ライブでやってるのと同じアレンジですね。歌詞はちょっと書き足してますけど。それまで4人時代にやってた曲を3人用にリアレンジはしてたんですけど、ここまで極端に変えてもいいんだあ、と気付きましたね(笑)。

──ポリのエキセントリックな部分が凝縮した曲ですが、どういうコンセプトでアレンジしたんですか。

ハヤシ これは……ウフフフ(笑)……ちょうどSUICIDE(アメリカの初期テクノパンク&ニューウェイブバンド)聴いてて。

──(笑)。そうなのか! 気付かなかった! そう言われれば特に前半の淡々としてる感じがそうですね。

ハヤシ そうなんですよ。「Ghost Rider」(SUICIDEの代表曲。1977年)的な(笑)。ああいう曲を作りたいなあと思ってたんです。ちょうど去年MO'SOME TONEBENDERと対バンやったとき、セットリストを考えてて。どうせモーサムとやるなら、いつものハッピーで楽しいライブというよりは、カオティックでクレイジーな、ポストパンク的な曲を多めにしようと思って。そうしたらこの「ワトソン」のアレンジがパッと浮かんだんです。で、衝動で打ち込んで、みんなに聴かせて、じゃあやろうってことになって。

デジタルハードコア風の「KI.KA.I.DA! 2012」

──もう1曲の「KI.KA.I.DA! 2012」ですが、ほとんどインダストリアルですね。

ハヤシ そうそう。デジタルハードコアというか(笑)。これは「ワトソン」のほかにもう1曲入れようということになって。アルバムの曲も結構出来上がってたから、そこからカップリングの曲を持ってきてもよかったんだけど、どれもアルバムで聴かせたい曲ばかりだったから。なのでもう1曲リアレンジしようと。それも今まで全くライブでリアレンジ版をやってない曲。そこでこの曲をやろうということになって。これをデジタルハードコア風にやったら面白いんじゃないかと(笑)(注:ここではドイツのインディレーベル「Digital Hardcore Recordings」のレーベルカラーでもある打ち込みを使用したハードコアパンク風の過激なロックのスタイルを指す。代表格はATARI TEENAGE RIOT)。

フミ すごい短時間でできたね(笑)。

ハヤシ 細かいところは時間かけて作り込んでいったけど、大まかなところはすぐできて。じゃあ歌ってみよう、フミも一緒に歌おう、ここを歪ませて、ピアノを入れてみよう、ってどんどんアイデアが出てきて。

──こういうの得意でしょ。

ハヤシ 得意ですねえ(笑)。こういうタイプの曲は初めてやったけど。

──「Lucky Star」とは対極にある、ポリの過激な面を象徴する曲ですね。

ハヤシ はい、そうですね。

CDで聴かない風潮には「NO」と言いたい

──さて、ここで趣向を変えた質問を。「Everybody Say No」というタイトルにちなんで、皆さんが今「NO」と言いたいものは?

ハヤシ そうねえ……オレ、“歩きケータイ”がほんとイヤで。

一同 (笑)

──(笑)。そう来たか……。

ハヤシ えっ? それじゃダメ?

──いやいや、それでいいです。たっぷり語ってください。

ハヤシ 歩きメールというか歩きスマホというか(笑)、歩きながらなんかしてるのが……ケータイだけじゃなくゲームとかも。すごいよねあれ。ほんとにイヤだ。危ないっていうか。前見てないし。

──ケータイで話しながらチャリ運転してるやつとか、めちゃくちゃ怖いよねえ。

ハヤシ そうそう。だからオレ、わざと当たるんです、歩きケータイしてる人に(笑)。

──(笑)。するとみんな謝るの?

ハヤシ うん。スイマセンって。それで直してくれればいいなと。

──なんか、説教ジイさんみたいな……(笑)。それが最近NOと言いたいこと?

ハヤシ うん……(重々しく)そうだねえ。

──フミちゃんは?

フミ 細かいことはいっぱいあるんだけど……ウーン……。

──ヤノくんは?

ヤノ うーん、オレもあんまり思い浮かばないんですけど……NOと言えるようになったほうがいいのかな、とかちらっと思ったりして。

ハヤシ あははは!(笑)

ヤノ あまりそういうことはっきり言えないタチなんで。NOと言えるようになったほうがいいのかなと。

──NOと言えるヤノ。

ヤノ そうそう(笑)。

──みなさん、特に不満のない人生を送ってるわけですね(笑)。

ハヤシ あははは。でも真面目な話をすると、ちゃんとCDで聴かないでいきなりiPodで低ビットレートのMP3で聴いて満足したり、YouTubeの音で音楽を判断されたりするような風潮にはNOと言いたいですね。特に電子音とかパソコンのスピーカーなんかで聴くと音が変わっちゃうからさ。今回のシングルも、まずはCDで、良い音で聴いてほしいと思います。

インタビュー写真

ニューシングル「Everybody Say No」/ 2012年10月24日発売 / Ki/oon Music

CD収録曲
  1. Everybody Say No
  2. ワトソン 2012
  3. KI.KA.I.DA! 2012
初回限定盤DVD収録内容
  • ありがTOISU!
  • Hot Stuff
  • FOR YOUNG ELECTRIC POP
  • プロテニス
  • 明るい生活
  • ワチュワナドゥー
  • 人生の灰
  • DNA Junction
  • MY SHARONA
  • MAKING SENSE
  • POLYSICS OR DIE!!!!
  • Shout Aloud!
  • カジャカジャグー
  • Young OH! OH!
  • ピーチパイ・オン・ザ・ビーチ
  • Rocket
  • ドモアリガトミスターロボット
  • Buggie Technica
POLYSICS(ぽりしっくす)

ハヤシ(G, Vo, Syn, Programming)、フミ(B, Vo, Syn)、ヤノ(Dr, Vo)からなるニューウェイブロックバンド。1997年、高校生だったハヤシを中心に結成。1999年にアルバム「1st P」をインディーズからリリースし、2000年にメジャーデビュー。独自の音楽性と過激なライブパフォーマンスで人気を集める一方、2003年にはメジャー1stアルバム「NEU」をアメリカでリリースし、初の全米ツアーも実施するなど海外での活動も本格化させる。2010年3月には初の日本武道館公演を実施し、初期メンバーのカヨ(Syn, Vo, Vocoder)がこのライブを最後にバンドを卒業。以降は3ピースバンドとして活動を続け、バンド結成15周年を迎える2012年に記念アルバム「15th P」をリリース。同年3月にライブ通算1000公演を達成した。同年10月にシングル「Everybody Say No」を発表。12月にはニューアルバム「Weeeeeeeeee!!!」をリリースする。