広島発の5人組アイドルグループ・プランクスターズが1stミニアルバム「ぉちωレま°」をリリースした。
プランクスターズは“自由奔放悪ガキアイドル”を標榜し、型破りなライブスタイルなどで話題を集める一方、ヘビーなギターサウンドを基調とした本格志向の楽曲群で高い評価を得る“楽曲派”の一面も併せ持つ、一筋縄ではいかないパフォーマンス集団だ。彼女たちはいったいどのような変遷をたどってこのスタイルにたどり着き、そしてどこへ向かおうとしているのか。音楽ナタリーではミニアルバムの発売に合わせてインタビューを行い、メンバー全員に話を聞いた。
取材・文 / ナカニシキュウ撮影 / 宇佐美亮
わりと身内ノリで始めた
──音楽ナタリー初登場となるので、基本的なお話から伺えたらと思います。そもそもこのグループはどうやって始まったんですか?
カン・ニャン もともとアイドルオタクだった運営が「広島のローカルアイドル界が衰退している」と感じていたところから、新しくアイドルグループをプロデュースする会社を作ったのが始まりで。それで当時コンカフェ(コンセプトカフェ)で8年くらいメイドをやっていた私のところに話が来て、別のコンカフェにいたらいらい(愛成来来)を誘った感じです。
──「広島のアイドルシーンを盛り上げたい」という思いからスタートしたと。
カン・ニャン わりと身内ノリで始めた感じですね。コンカフェに来るお客さんはアイドル好きな人も多かったので、「ライブやってよ」みたいな声もあって。で、やったら楽しいかなーって。
──そもそも「アイドルをやりたい」という感じでもなかったわけですか?
カン・ニャン 好奇心が強いタイプなんで、アイドルもいい経験になるんじゃないかなと。表に出る仕事自体には興味があったし、だからメイドカフェにいたわけですし。
張李江 自分も「アイドルをやりたい」と思ってグループに入ったわけじゃなくて。もともとプラスタのファンとしてライブを観ていて、このグループのやり方、活動のスタイルが好きだったから「一緒にやりたいな」と思って入りました。
カン・ニャン 「この集団、楽しそうだな」ってサークルに入ったみたいなノリだよね。
張 うん。
虹春ぬし 私はアイドルがやりたくて来ました。
──確かにパッと見の印象では、虹春さんは唯一“アイドル”をやりたい人に見えます。
カン・ニャン 唯一(笑)。
虹春 でも、普通にやるのも面白くないなと思って。
──そうですよね。おそらく普通にアイドル活動をしたい人はプラスタに入ろうとは思わないでしょうし。
カン・ニャン 「やりたいことができるから」という理由で入ってくるパターンが多いと思います。
──で、今日の取材にあたって事前に知らされていなかったんですが、しれっと新メンバーがいらっしゃるんですね。お名前はなんとおっしゃるんですか?
ももしきや古き軒端のしのぶにもなほあまりある昔なりけり “ももしきや古き軒端のしのぶにもなほあまりある昔なりけり”です。
一同 おおー(拍手)。
カン・ニャン 略してもーりーです。
──名前の元ネタは、百人一首とかですか?
もーりー そうです。「和顔だから」って(笑)。
カン・ニャン なんか古典的なオーラを放っていたので、和な感じがいいなと思って「百人一首、いんじゃね?」みたいに決まりました。
もーりー 私はもともとシンガーソングライターになりたくて、自分で曲を作ったりしていたんです。りぃちゃん(張)と同じく「アイドルをやりたい」という気持ちは特になかったんですけど、去年の7月にプランクスターズがメンバーを募集していたのを見つけたときに「このグループの中に入って、曲作りとかでも活躍してみたいな」と思って応募しました。
──このグループではお客さんの求めるものもちょっと特殊でしょうし、入ってくるのは勇気が必要だったんじゃないかなと思うんですけど。
もーりー それもありますし、スミ(・タン)さんが卒業されて(2022年1月末に卒業)、あれよあれよと新体制の形になって……プレッシャーはあります。
カン・ニャン でも、けっこう怖いものなし感はあるよね。
多数派だから正解ってわけじゃない
──プラスタは「自由奔放悪ガキアイドル」というキャッチコピーで活動していますが、結成当初からそのスタイルだったんですか?
カン・ニャン 最初は身内ノリだったこともあって「みんなが楽しいライブをできたらそれでいいかな」と思っていたんですけど、活動の規模が拡大するにつれて、ほかのアイドルさんのパフォーマンスを観るたびに「自分たちはどこを目指していくべきなのかな」と考えるようになりました。その中で、私たちらしさは“自由奔放”にあるなと。そこは最初から実践していたところでもあったし、自由な感じは残したかったんですよね。
──「枠組みに囚われたくない」というような?
カン・ニャン そうです。「アイドルだからこれをしちゃダメ」とか「この職業の人はこうするもんだ」みたいな、世の中に存在する固定観念がめちゃくちゃ嫌いなんですよ。「アイドルだから」とか関係なく、私たちとお客さんが楽しめるかどうかが一番大事だから。そのスタンスは貫いていきたいですね。
──グループの方向性に関しては、ほかのメンバーも同じように考えているんですか?
愛成来来 ……お金持ちになりたい。
カン・ニャン そういうことを聞かれてるんじゃないと思うよ(笑)。
愛成 できるだけ楽をして稼ぎたい。楽しくお金持ちになりたい。
──その目的のために、このプラスタという場は適している?
愛成 ……わからん。
カン・ニャン たぶん、石油王とかが急に現れて「アイドルを辞めてついてきたら何億円あげるよ」みたいに言われたら、この人は普通についていくと思います。でも特に「楽しい」とは言わないものの、少なくとも楽しくなかったらとっくに辞めてるだろうし、彼女なりに活動を楽しんでるんだと思います(笑)。
愛成 楽しくないところからは逃亡します。
──例えば、こういう取材とかは大丈夫なんですか? いろいろ聞かれることに対して自分で考えて答えなきゃならないのは、楽しくはないんじゃないかと思いますが。
カン・ニャン そこは目で訴えてくるんで、私が通訳します。
──カン・ニャンさんがいてくれるからやれている部分もある?
カン・ニャン かもしれないですね(笑)。いなかったら大変ですよ、たぶん。
愛成 (無言でニヤリ)
──りぃちゃんや虹春さんはどうですか? グループの方向性については。
虹春 違和感はたくさんあります。
カン・ニャン あははは(笑)。
虹春 違和感しかないですけど、それが「嫌だ」ということではないし、まあ楽しいです。人とは違う経験をさせてもらっているので。
張 自分も楽しいです。自分の声とかキャラを生かせる場だし。
──実際、音源を聴いていて「なんかイケボの子がいる!」となるのがプラスタならではの重要な武器の1つになっていますよね。
張 それを生かしてライブをしています。最初は思いっきりツインテールとかそっち系のビジュアルでやっていたんですけど、より自分が映えるようにと思ってカッコいい路線に走りました。
──先ほど「自分たちやお客さんが楽しめることが一番大事」というお話がありましたが、そのライブスタイルが「過激だ」などと騒がれることについてはどんなふうに感じていますか?
カン・ニャン そこに関しては、むしろ自分たちからあえて変な部分を切り取って出すようにしているんですよ。いくら普通にライブしている映像をネットに載せたところで、そんなグループいくらでもいるし、いい曲を歌っているアイドルさんや、かわいい子なんて世の中にいっぱいるんで。
──なるほど。自然にやっていて結果的に出てくる“ほかと違う部分”を、「せっかくだから」と意図的にピックアップしていると。
カン・ニャン そうですね。「世間一般の尺度に当てはめると、たぶん違和感があるんだろうな」という部分をあえて出しています。
張 誰かに言われてやっているわけじゃないし、自分たちで思いついたことしかやってないもんね。
カン・ニャン それが叩かれるのは、シンプルに少数派だからなんですよ。多数派だから正解ってわけじゃないのに、少数派は「少数派だから」という理由だけで簡単に叩かれるじゃないですか。
──「少数派であることと変であることはイコールじゃない」を訴えるために、あえて“変”な部分を強調して見せている部分もあります?
虹春 そこまで深く考えてないよね。
愛成 面白がってるだけです。
カン・ニャン ただ、そういう“いじめの原理”みたいなものが世の中からなくなればいいなと思っています。みんな周りを多数派で固めようとするけど、私は少数派を周りに置きたいんで。だからこのグループはみんな“変な人”なんです。
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曲はすごくいいんですよ