ピロカルピン|現実を見せることで生まれた“非現実の世界”

ピロカルピン×muevo 中山顕洋氏・田中健司氏 座談会

クラウドファンディングに挑戦する意味

──今回ピロカルピンがクラウドファンディングを行った「muevo」の中山さん、田中さんにもお越しいただいたうえで、改めてアルバムの制作費をクラウドファンディングで募った理由を教えてください。

岡田 もともとクラウドファンディングに興味があったんですが、メリットも感じつつもデメリットも少し感じていたんですね。内輪で終わっちゃうんじゃないかとか、お金についての情報が前に出すぎてビジネスっぽくなるんじゃないかとか。そういうのもあってこれまで実施には至りませんでした。そのときにたまたま「muevo」さんからコンタクトがありまして。

左から中山顕洋氏(muevo)、田中健司氏(muevo)、松木智恵子(ピロカルピン)、岡田慎二郎(ピロカルピン)。

田中健司(muevo) 本当にたまたまですね。

岡田 そこで話を聞いてみて、いろいろなデメリットが払拭されたので「トライしてみようかな」っていう気になりましたね。

──デメリットを払拭できたというのは?

岡田 「内輪で終わるんじゃないか」っていう懸念に対しては、「実際には、より知らない人にもっと知ってもらうための手段になる」ということを実例をもって説明していただきました。それからいろんなクラウドファンディングがある中で、「muevo」さんは音楽のクラウドファンディングを専門でやってらっしゃって、アーティスト活動に理解が深いというのもあります。あとは、僕より難色を示していたのは松木で、田中さんと一度相談して。

田中 1回作戦会議しましたね。

岡田 「松木を呼ぶので田中さんから話してください」って言って。

松木 そうですね。自分が新しいことに対して積極的にやろうとするタイプではないのもあってなかなか乗り気ではなかったんです。でもクラウドファンディング自体に興味のある人が世の中にはたくさんいるということを知って、「これをやることでピロカルピンを初めて知る人もいるんだ」ということがわかったので「やってみる意味はあるのかな」って思うようになりましたね。

岡田 それと最初は「やっても成功しないんじゃないか」という不安もあった。「みんな僕らに対してそんなお金を出資してくれないだろう」と。

田中 それはやはり皆さん言われますね。でもアーティストの考えが直接伝わるので、思ったよりもすぐに目標に達成するケースが多いんです。

──先ほど松木さんが言っていたように、クラウドファンディング自体に興味のある人がプランを見て「あ、このバンドよさそう」って出資していくこともあるんですか?

中山顕洋(muevo) よくありますね。いろんなアーティストが並んでいる中で、例えばAっていうアーティストを目当てで見にきたついでにBっていうアーティストを見つけて、「じゃあこっちのプランも買ってみようかな」「応援してみようかな」って思う方がけっこういます。

サービス精神旺盛なリターン内容

──リターンの内容が、CDのクレジットに名前を掲載するといったものからメンバーに電話で人生相談、スタジオで一緒に演奏といったものまで盛りだくさんです。これらはどうやって決めたんですか?

岡田 「muevo」さんのこれまでの実績を参考に付け足していった感じです。でも、サービス過剰だって松木から怒られるんですよ。

松木 そうですね(笑)。

岡田 考えていくうちにモリモリなプランになって今すごくヒーヒー言っています。田中さんからも「ホントできますか? 大丈夫ですか?」って何度も言われて。

田中 何回も釘を刺しましたね(笑)。

岡田 「大変ですよ?」「いや、大丈夫です」っていうのを何度も繰り返して、結局後悔しています(笑)。

一同 (笑)。

──「muevo」さんから見て今回のリターンの内容はどうですか?

田中 「岡田さんの人柄が出ているな」と思いました(笑)。

──と言うと?

岡田慎二郎(G)(提供:miracle oasis music)

田中 岡田さんは本当にマメで連絡も早いし、一度に発信する情報も多いし。リターンの中で購入者が数種類ある特典の中から選ぶというプランがあったんですけど、購入した1人ひとりに違うメールを送らなくちゃいけないのでけっこう大変なんですよ。

──達成率は最終的に176%までいきましたね。

岡田 びっくりしましたね。「100%はいってもらわないと困る」っていうプランだったので100%いったときはうれしかったです。ただその後、追加で150%に到達した際のリターンを設けた際は「これは届かないかもな」と思っていたんですが、結果176%までいきましたね。たぶん僕より松木のほうがびっくりしたと思う。

松木 そうですね。いろいろと試行錯誤しながらやっていたんですけど、結果的に順調だったのですごくありがたかったです。

田中 100%に到達した段階で130%になったら追加のリターンを設定しようってお話しをしていて。「もうちょっといきますよ」って話を何回かして150%に設定したっていう。

岡田 そうですね。残り数日でガーッと30、40%ぐらい伸びたので驚きましたね。結果的に「muevo」さんのアドバイスに従ってよかったです。

中山 我々も音楽専門でやっている以上、アーティストの方に失敗してほしくないっていう強い思いがあります。なので絶対失敗させないように僕らもがんばってお手伝いさせていただいて。

──今後もクラウドファンディングを活用しようと思いますか?

岡田 今回のクラウドファンディングではオリジナルの音源を制作するプランに応募が集まったイメージがあるので、やっぱりピロカルピンに対しては「いい音源を作ってほしい」という期待があるんだなと感じましたね。ただ、いい音源を作るにはやっぱりそれなりの資金が必要なので、そういうときにはやはり皆さんの力をお借りしたいなとは思っています。

ピロカルピン
ピロカルピン「ノームの世界」
2017年5月10日発売 / miracle oasis music
ピロカルピン「ノームの世界」

[CD+DVD-ROM]
2160円 / DDCZ-2155

Amazon.co.jp

CD収録曲
  1. 精霊の宴
  2. 赤色のダンサー
  3. ピノキオ
  4. 流星群
  5. 小人の世界
  6. グローイングローイン
  7. 風立ちぬ
DVD-ROM(※初回生産分のみ)
アルバム全曲分のハイレゾ音源データ(96kHz / 24bit)
ピロカルピン「『ノームの世界』リリースワンマンツアー『small small world!!』」
  • 2017年6月3日(土)東京都 下北沢CLUB Que
  • 2017年6月10日(土)大阪府 ROCKTOWN
  • 2017年6月11日(日)愛知県 ell.SIZE
ピロカルピン
松木智恵子(Vo, G)と岡田慎二郎(G)によるロックバンド。2003年に松木によって結成され、2009年7月にタワーレコード限定シングル「人間進化論」とHMV限定シングル「京都」を同時発売しインディーズデビュー。2010年11月から2カ月連続でシングル「存在証明」「終焉間際のシンポジウム」を発売し、繊細な世界観とダイナミックなサウンドで話題を集める。2012年5月にはアルバム「蜃気楼」でユニバーサルJよりメジャーデビュー。2014年12月に自主レーベル「miracle oasis music」を設立し、翌2015年5月にアルバム「a new philosophy」をリリース。2016年8月から10月にかけてアルバム制作のクラウドファンディングを実施し、176%の達成率で大成功に。この資金をもとに制作されたニューアルバム「ノームの世界」を2017年5月10日に発表した。