ナタリー PowerPush - ピロカルピン

新しいチャレンジに満ちた新作「青い月」

3rdアルバム「宇宙のみなしご」から約8カ月。ピロカルピンが3曲3様の魅力を持つシングル「青い月」を完成させた。リード曲「青い月」は、ファンタジックな歌詞の世界観にアグレッシブなギターが絡む意欲的なナンバー。2曲目「オペラ座」と3曲目「祈り」も含めて、彼らの新たな方向性を示唆するような1枚をぜひ堪能してほしい。

また、この間には、ドラムのメンバーチェンジや初の渋谷CLUB QUATTROでのワンマンも経験した彼ら。ナタリー2回目の登場となる今回は、それらの経緯や手応えも含めて松木智恵子(Vo, G)と岡田慎二郎(G)がじっくり語ってくれた。各方面から注目を集めるピロカルピンの動向から、今後も目が離せない。

取材・文 / 川倉由起子

新ドラマーは何事にも動じないメンタルの強い人

──前回のインタビュー(2011年3月)以降、メンバーチェンジがありましたね。

松木智恵子(Vo, G)はい、ドラマーが変わりました。新たに入ったドラマーの荒内塁はインターネットのメンバー募集を見て応募してきてくれたんですが、一度スタジオに入ってみたらすごく良かったので、正式加入してもらうことになりました。

岡田慎二郎(G) 荒内さんとは元々の音楽ジャンルがそんなにかぶってないので、僕は最初は「ちょっと違うかな?」って思ったんです。実際、スタジオで合わせても若干違うなってことがあったり。でも、例えば「そこはもっとこういう感じで」ってお願いすると「あ、わかりました!」って軽く言いながらも本当に的確に直してくれるから、それがすごいなって。

ピロカルピン

松木 プレイヤーとしての技量と柔軟性があって、人としてもおおらかなんですよ。どーんと落ち着いてる感じです。

岡田 見た目も少し、くまのプーさんみたいでね(笑)。

松木 そうそう(笑)。何事にも動じないというか、メンタル面でも強い人だなって思います。

──荒内さん加入後、ピロカルピンに何か変化はありましたか?

松木 荒内さんのような落ち着きは、今まで誰も持っていなかったもので。それがうまく作用してバンドの空気も良くなってると思うし、4人でいるときの雰囲気も安定している感じがしますね。

初QUATTROを経験してバンドの結束も固まった

──その後、7月には初めての渋谷CLUB QUATTROワンマン「幻聴シンポジウム vol.1」を開催しました。手応えはいかがでしたか?

松木 最初は「私たちにできるのか?」とか「お客さんが来てくれるのか?」とかっていう不安のほうが大きくて。でも実際やってみたら、お客さんがみんなすごく楽しんでくれて、私たち自身も大きいところでやる喜びや楽しさを感じられたんです。大きい会場でやるのはすごくプラスなんだなって身を持って感じられたし、バンドに対するモチベーションも上がりました。ドラムが荒内さんに変わって3度目のライブだったんですが、この4人じゃなきゃできないライブになったっていうのはバンド全体が感じていることだと思います。

岡田 リハーサル中も含めて、みんなが同じベクトルを向いてる感じがすごくありました。あと、メンバーチェンジからワンマンライブまでたった2カ月っていう状況が逆に良かったのかなと。なんとかしなきゃ!って必死に詰め込んでリハーサルをしたし、結果、ライブも良かった。バンドの結束も固まった気がしますね。

──先程松木さんがおっしゃった、大きいところでやることの良さというのは?

松木 ただ純粋に「また大きいところでやりたいし、そういうバンドになりたい」って気持ちを持てたんです。今までピロカルピンがQUATTROに立つなんて想像もできなかったし、憧れでしかなかったんですけど、実感を持ってこのメンバーで前に進んでいきたいと思うようになりましたね。お客さんからもらった力も大きかったと思います。

岡田 ライブが進むにつれて、お客さんがどんどんノッてきてくれて。多分、過去一番盛り上がったライブだったんじゃないかと思います。それが僕らを後押ししてくれたし、もっと上に行けるっていう勇気になったんですよね。

ニューシングル「青い月」 / 2011年11月23日発売 / 1000円(税込) Graraga / PRKL-1011

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収録曲
  1. 青い月
  2. オペラ座
  3. 祈り
ピロカルピン(ぴろかるぴん)

アーティスト写真

松木智恵子(Vo, G)、岡田慎二郎(G)、スズキヒサシ(B)、荒内塁(Dr)からなる4ピースバンド。2003年に松木と岡田が出会い、バンドの原型が誕生。2009年7月にタワーレコード限定シングル「人間進化論」とHMV限定シングル「京都」を同時発売しデビューした。
2010年11月から2カ月連続でシングル「存在証明」「終焉間際のシンポジウム」を発表し、繊細な世界観とダイナミックなサウンドで話題を集める。2011年3月、3rdアルバム「宇宙のみなしご」をリリース。このアルバムのタイトルは森絵都の同名小説にちなんだもので、森の快諾により名付けられた。
2011年5月にはドラムが荒内にメンバーチェンジ。7月3日に東京・渋谷CLUB QUATTROでワンマンライブ「幻聴シンポジウム vol.1」を行い、成功を収めた。11月には初の3曲入りシングル「青い月」を発表。精力的な活動を続けている。