ナタリー PowerPush - ピエール中野(凛として時雨)
ドラム教則DVDに込めた情熱とアイデア
誰かに怒られたりしたら止めますけど
──今回「Chaotic Vibes Drumming」を観て改めて思ったのは、「ピエール中野は何がしたいのか」ということなんですけど。
どういうことですか?
──凛として時雨という素晴らしいバンドでドラムを叩いていて、ドラマーとしての評価も高くて、普通だったらそれで十分なはずなのに、余計なこともいろいろやってるっていう。
なんで余計なこととか言うんですか(笑)。ピエールナイトのことですか? 玉筋クールJ太郎とか?
──とかです(笑)。
玉筋クールJ太郎に関して言えば事故ですけど(笑)。でもやっぱり面白いからやってるんですよ。リハのときも曲作ってるときも、腹痛くなるくらい笑えるんで。
──CHAOTIC SPEED KINGは?
about tessっていうバンドのギターのtakutoさんと、お互い全力でどこまでやれるかやってみようって言って即興でやったのが最初で。そしたら思いのほか楽しくて、じゃあ名前つけてやろうか、みたいな。そのうち9mm(Parabellum Bullet)の滝くんとか、the telephonesのノブくんとかもやってみたいって言ってくれて一緒にやったり。それぞれの活動がある人たちが、わりと自由な感じで好き放題やっていくっていうような場が今生まれてますね。
──あと中野さん、DJもちょいちょいやってますよね。
DJも楽しいですよ。いろいろやってます。あ、それで「結局何がしたいの?」って感じに見えるのか(笑)。
──そうですね(笑)。何がしたいんですか?
したいっていうか、できるからやってるっていうのが一番大きいですね。CHAOTIC SPEED KINGもDJも雑誌の連載とかも、どれも好きで、求められるんだったらそれはやれる範囲でちゃんとやっていきたいなと。ていうか誰かに怒られたりしたら止めますけど、そういうの今のところないので(笑)。
──凛として時雨のほかの2人は、中野さんの個人活動について感想を言ってくれたりするんですか?
いや、あんまりないですけども、温かく見守ってくれてる感じだと思います、きっと。みんな優しいんで(笑)。
自分のドラムはいろんな人の影響の組み合わせ
──この教則DVDを観てると、中野さんがドラムを好きだっていうのがすごく伝わってくるんですけど、でも楽器が好きというよりやっぱり音楽が好きなんですよね。もっと言えば音楽を含めたカルチャー全般が好きなんだろうなって。
うん、わりとなんでも好きですね。ドラムだけ強烈に好きっていうわけではないです。
──そこのバランス感覚や視野の広さがTwitterで炎上しづらい秘密なんじゃないかと(笑)。
炎上しづらいですかね? 大丈夫ですか?(笑) でも確かに周りのいろんな人を見てるんで、こういう言い方をすると炎上するとか、それはわかりますからね。
──そういうバランス感覚が、アーティストとして邪魔になることはないですか?
全然ないですよ。
──例えば、周りの声を気にせず突き進むことによって生まれる何かもあると思うんですけど。
あー、多分僕はそういうタイプじゃないんでしょうね。そういう人のことはうらやましいとも思うけど、自分はそうじゃないから。一度失敗してるんですよ。昔やってたバンドで、自分が自分が、みたいになってうまくいかなかったことがあって。そこから考え方変えていこうって思って、今みたいになってるんだと思います。
──なるほど。だから、こんなに自己主張の強いドラムを叩く人が、こんなに物腰柔らかくフレキシブルな活動を続けていけるんでしょうね。
あんまり自分のドラムを客観的に見れたことがないんですけど、気が付いたら、ちゃんと自分の音とかタイム感で鳴らせるようになってたっていう。結局僕のドラムっていろんな人の組み合わせでしかないと思ってるんで。影響を受けた人たちのカッコいいと思うところを吸収して、それを研究して積み重ねてできあがったのが自分のドラムだと思ってるんです。だから「そのフレーズすごいね」って言われても「それはあの人のアレだぜ」って言い返せるような(笑)。
──わざわざバラさなくてもいいのに(笑)。
あはは(笑)。でも別にいいっていうか、言ったほうが面白いと思うんですよね。それを言ったところでみんなが同じことをできるかって言ったらできないわけだし。
DVD収録内容
- ドラムを叩く準備
- ドラムの基本的な奏法とピエール中野流の奏法
- リズム・パターンを叩く/もっと良くする方法
- シンバルの使い方を知る
- 演奏の幅を広げる奏法あれこれ
BOOK収録内容
- ドラム・セットを構成する楽器を知る
- ピエール中野の素 ~教則本&DVDでより深める~
- ピエール中野流デイリー・トレーニング&フレーズ集
- ピエール中野 対談集
ピエール中野(ぴえーるなかの)
1980年生まれ。凛として時雨でドラムを担当。高度なテクニックに裏打ちされたドラムプレイや、ステージで見せる独自のマイクパフォーマンスで多くの音楽ファンの支持を獲得。CHAOTIC SPEED KING、玉筋クールJ太郎のメンバーとしても活躍するほか、DJやコラム連載でもその才能を発揮している。2011年7月には自主イベント「ピエールナイト 海の日年越しライブ」も開催。2011年9月にドラム教則DVD+BOOK「Chaotic Vibes Drumming 入門編」「Chaotic Vibes Drumming 実践編」をリリースした。