ナタリー PowerPush - ピエール中野(凛として時雨)

ドラム教則DVDに込めた情熱とアイデア

凛として時雨のドラマー、ピエール中野が、ドラム教則DVD+BOOK「Chaotic Vibes Drumming 入門編」「Chaotic Vibes Drumming 実践編」をリリースした。

このアイテムは、ドラムの基礎から超絶フレーズまで、さまざまなテクニックをピエール中野が丁寧に解説する教則DVD。マニアックなものと思われがちな教則DVDだが、そこはピエール中野流の工夫がふんだんに盛り込まれ、ドラマー志望の人のみならず、すべての音楽ファンにとって興味深い内容に仕上げられている。

今回はこの注目アイテムの発売を記念して、ピエール中野がナタリーPower Pushに単独初登場。あえてシモネタを封印し、教則DVDの内容やアーティストとしての姿勢について真摯に語ってもらった。

取材・文 / 大山卓也

ドラムは叩き手側から観たほうが圧倒的に面白い

──「Chaotic Vibes Drumming」とても面白かったです。

本当ですか? 良かった。こういう教則DVDって観たことあります?

──いや、これが初めてで。

ものすごいドラム好きの人以外は、普通なかなか観ないですよね。でも見せ方次第で一般の人が観ても面白いって思うはずなんですよ。例えば僕が一番好きな教則ビデオはJUDY AND MARYの(五十嵐)公太さんが出してるやつで、それはジュディマリのこと好きな人だったら絶対好きだと思う。そういうのがもっと広がればいいのにって思いますね。

──確かに、これを観ていると自分でもドラムを叩いてみたくなりますね。

そうなんですよ。ライブのときはなかなか観れないけど、ドラムって本当は叩き手側から観たほうが圧倒的に面白いんです。この魅力って多分全然伝わってないだろうなって思ってたから、今回そこを知ってもらいたくて。「ドラムってこんなにカッコいい楽器なんだ」ってことを伝えたいんですよね。僕がYOSHIKIさん(X JAPAN)を観て衝撃を受けてドラムを始めたように、観てる人にそういう衝撃を与えたいんです。

──その衝撃は、普通にステージでいいプレイを見せるだけでは伝えられない?

それは当然ステージありきです、もちろん。でもせっかくこういうの作れる環境にあるんだし、周りにもサポートしてくれる人がいて、たまたまそういうチームに出会えて、この人たちとモノを作ったら楽しそうだなって思ったんですよね。それに自分も憧れてるドラマーには教則DVD出してほしいって思うから。

──真矢さんとか?

真矢さん(LUNA SEA)とか淳士さん(SIAM SHADE)とか。YOSHIKIさん(X JAPAN)やyukihiroさん(L'Arc-en-Ciel)は出してないけど、教則のDVDや本を出してる人いっぱいいるんですよ。じゃあ自分に対してもそう思ってくれる人は絶対いるはずだと思って。

──YOSHIKIさんの教則DVDって出てないんですか?

出てないです。出すわけないです(笑)。

初心者も最初からツインペダルを使うべき

──入門編と実践編のDVDを作っていく上で、苦労したところはありますか?

実践編の音のミックスが一番大変だったかな。どんな音にするかっていうのが難しくて。北嶋くんにミックスしてもらったんですけど、教則だからナチュラルにドラムの生音を聴かせるのか、時雨の音源に近づけていくのかっていうのは、ギリギリまで悩みましたね。

──DVDの見どころはどこですか?

マルチアングルは画期的だと思います。画面が4分割になって、上から、横から、正面から、足元だけっていう4画面を同時に観れる。これはけっこう楽しいですよ。

──このアイテムは教則として丁寧に作られているだけでなく、ピエール中野ならではの内容もかなりありますよね。

そうなんですよ。両方の要素が入ってるんです。ピエール中野流で説明したほうがわかりやすいってところもあるし、逆に教則として一般的な説明が必要なところはそうしてます。両方のいいところをミックスさせて作ったっていうか、本とDVDを分けてるっていうのもそういう理由で。写真と活字のほうがわかりやすいってこともあるし、動画じゃないとどうしても伝わらないようなこともあるから。

──ピエール中野流を一番感じたのは、ツインペダルへのこだわりで。

あはは(笑)。実はあれも前代未聞で、普通はペダルって言ったらシングルペダルなんです。

──ですよね。それなのに教則本の冒頭から「迷わずツインペダルを選べ」って書いてあって「何を言ってるんだこの人は!」と驚きました。

最初に揃える3つの道具がスティック、ツインペダル、スネアドラムですからね(笑)。

──そのツインペダルへの愛ってどこから来てるんですか?

だってスティックは2本なんだから、足だって2本使ったほうがいいと思うんですよ。フレーズの幅も広がるし、必要ないときは使わなければいいんだし。今まではシングルペダルが標準だったんですけど、でもドラムセットって歴史も浅いし、どんどん進化していくべきだと思うんで、ここで自分が「初心者も最初からツインペダルを使おう」ってことを提案していこうかと(笑)。

──ツインペダルを勧める教則ってあんまりないですよね?

あんまりないと思います。でも僕が初めて観た教則ビデオは、菅沼孝三さんっていう超絶ドラマーの「ツーバス&フットワーク」っていうビデオだったんですけど、そのビデオではツーバスを勧めてたんで。

──ツインペダルとかツーバスって、ヘヴィメタルの人が好んで使うイメージがあったんですけど。

そんなこともないですよ。チャゲアスとかツーバスですからね。それこそ菅沼孝三さんがサポートしてましたし。あと谷村新司さんとか。

──ドラムを極めた人がたどりつく場所ということ?

いや、そういうことでもないと思うんですけどね。ツインペダルはいいですよ。もっとみんな使ったほうがいいと思います!

ドラム教則DVD+BOOK「Chaotic Vibes Drumming 入門編」 / 2011年9月14日発売 / 3990円(税込) / ピエールレコーズ / ANTX-1023

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DVD収録内容
  1. ドラムを叩く準備
  2. ドラムの基本的な奏法とピエール中野流の奏法
  3. リズム・パターンを叩く/もっと良くする方法
  4. シンバルの使い方を知る
  5. 演奏の幅を広げる奏法あれこれ
BOOK収録内容
  1. ドラム・セットを構成する楽器を知る
  2. ピエール中野の素 ~教則本&DVDでより深める~
  3. ピエール中野流デイリー・トレーニング&フレーズ集
  4. ピエール中野 対談集

ドラム教則DVD「Chaotic Vibes Drumming 実践編」 / 2011年9月14日発売 / 3990円(税込) / Sony Music Associated Records / AIBL-9221

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DVD収録内容
  1. レコーディングでのドラムの音作り
  2. 凛として時雨の楽曲に挑戦!
    全曲デモ演奏(マルチアングル対応)&楽曲解説
ピエール中野(ぴえーるなかの)

1980年生まれ。凛として時雨でドラムを担当。高度なテクニックに裏打ちされたドラムプレイや、ステージで見せる独自のマイクパフォーマンスで多くの音楽ファンの支持を獲得。CHAOTIC SPEED KING、玉筋クールJ太郎のメンバーとしても活躍するほか、DJやコラム連載でもその才能を発揮している。2011年7月には自主イベント「ピエールナイト 海の日年越しライブ」も開催。2011年9月にドラム教則DVD+BOOK「Chaotic Vibes Drumming 入門編」「Chaotic Vibes Drumming 実践編」をリリースした。