ナタリー PowerPush - ピコ
ネット発 “両声類”シンガーの魅力に迫る
ニコニコ動画を中心に話題を集める歌い手・ピコが、シングル「Story」でメジャーデビュー。あるときは男性のように、あるときは女性のように聞こえるその歌声は「両声類」と呼ばれ、この春にはデビュー前ながらSHIBUYA-AXでワンマンライブを行うなど、新人としては異例の快進撃を続けている。
今回ナタリーでは、そんなピコの素顔に迫るべく特集コンテンツを企画。同じくニコニコ動画でボーカロイドプロデューサーとして知られる小林オニキスが、インタビュアーとしてピコに話を訊いた。また、ニコニコ生放送で行われたファンとのQ&A企画も再構成して掲載する。
取材・文/小林オニキス
高校生のときはJanne Da Arcのコピーバンドで歌っていた
──こういうインタビューはもう慣れました?
いや……だんだん慣れてきた感じですね。
──今日(10月1日)は「めざましテレビ」に出演してましたけど。
ああ、そうです! さすがにあれは緊張しました(笑)。
──では今日はナタリー初登場ということで、いろいろお話聞かせてください。
よろしくお願いします。
──ええと、ピコさんが初めてニコニコ動画に歌を投稿したのが2007年12月ということですが、それ以前には何か音楽活動は?
高校のとき、友達に誘われてJanne Da Arcのコピーバンドでボーカルをやってましたけど、それはただの遊びっていう感じで。大学に進学してからは軽音楽部に入りました。でも本格的な音楽活動はニコ動からですね。
──じゃあオリジナル曲を作ったりは?
いや、やってないですね。
──Janne Da Arcは大阪出身のバンドですけど、ピコさんも関西なんですよね?
そうです。僕は兵庫県なんですけど。
──ヴィジュアル系が好きだったんですか?
僕は高校に入るまではGACKT信者で、それ以外の音楽はほとんど聴いてなかったです。
──じゃあニコ動で活動を始めた頃は、まだ実家暮らしだったんですか?
そうですね。東京に出てきたのは今年の春ですから。
──当時は歌もご実家で録音してたわけですか。
そうです。
──ちなみに機材はどんなものを?
高校のときにバンド仲間でお金を出し合って買ったMTR(マルチトラックレコーダー)があったので、それで録音した歌をUSBでパソコンに取り込んでアップしてました。今でもニコ動にアップするときはその機材を使ってます。
──じゃあマイクもそんなに高価なものではなく?
さすがに最近はコンデンサーマイクに買い換えたんですけど、ポップガードとかはないし、マイクも手で持って歌うことが多いです。
──え、手持ちで歌ってるんですか!?
なんだか手持ちに慣れちゃってて、マイクスタンドに立てて歌うと自分のニュアンスがなかなか出なくて。
──じゃあ今回のシングルのレコーディングも?
それはちゃんとスタジオでマイクスタンドを使って歌ってます(笑)。今はもうだいぶ慣れてきました。
「両声類」というタグを見て自分の声を意識するように
──ピコさんの歌声は「男性のようでもあり女性のようでもある」と言われていますが、自分でそのことを自覚したのはいつですか?
最初は全然意識してなくて、普通の男性よりは地声がちょっと高いかなって思ってたくらいだったんです。でもあるときアップした動画に「両声類」というタグが付けられて。そのとき初めてその言葉を知って「なんやこれ?」って調べたんですよ。最初は「全然普通に男の声やと思うけど」って感じだったんですけど、やっぱり徐々に意識するようになりましたね。
──歌うときにはどんな基準で声を使い分けてるんですか?
やっぱり曲に合うかどうかですよね。この曲は男声で歌おうとか、女声で歌おうということを最初から決めてしまうんじゃなくて、この曲を歌うにあたって自分が活かせる声はどれだろうということを考えて。よりカッコよくて、よりハマるほうの声を自然に選んでる感じです。
──なるほど。でも自分の声の特徴を意識していなかったというのは意外ですね。
以前はずっとGACKTさんの曲ばっかり聴いていて、カラオケで歌ってたりしたんですけど、GACKTさんってけっこう低めというか、男らしい声なんですよね。で、バンドを始めてJanne Da Arcを歌ってみたら高音が出なくて、それが悔しくてすごく練習したんです。そしたら次はもっと高い音域を歌いたいっていう目標ができて。その頃SIAM SHADEを好きになって、そこからなぜかアニソンも好きになって。アニソンは女性歌手のほうが多いので、そういうのをコピーしたいな、と思うようにもなりましたね。
ピコ
2007年12月より自分の歌を動画投稿サイト「ニコニコ動画」に投稿。その特徴的な歌声から「両声類」と呼ばれ、多数のファンを獲得する。2009年7月にインディーズより1stシングル「タナトス feat.ティッシュ姫」、同年9月に1stアルバム「INFINITY」をリリースし、2010年3月にはSHIBUYA-AXにてワンマンライブを実施。2010年10月にシングル「Story」でキューンレコードよりメジャーデビューを果たした。