日本語の使い方が洋楽の訳詞っぽい

──歌詞は曲からインスパイアされることが多いですか？

yoko　百々さんの「タイムスリラー」はそうですね。古城さんの「ゾンビーボーイ」も。「ゾンビーボーイ」の歌詞を考えるときに、どんな感じで書いたらいいかなって2人に相談してたら、akkoちゃんから「非現実的で、面白カッコよく」みたいなアドバイスがあったんです。そしてなぜかゾンビが出てくるっていう（笑）。

──映画っぽいイメージですよね。

yoko　ゾンビって言われると怖いイメージを思い描かれがちだと思うんですけど、コミカルというか、B級感を出したかったんです。ドラムの高橋さんがゾンビおたくなので、監修してもらって。

──高橋さん、ゾンビ時代劇映画「新選組オブ・ザ・デッド」のサントラまで担当してるほどのゾンビ好きですもんね。akkoさんも百々さんが作曲した「らんらんらん」で歌詞を書いてますね。

akko　「らんらんらん」は曲からイメージが広がって「この曲の歌詞を書きたい！」って言いました。

──お互いの歌詞についてどう思いますか？

akko　私はyokoちゃんの歌詞が大好きなんです。私には絶対書けない、すごくセンスがある詞だと思ってて。

yoko　わあ、どうしよう（照れる）。

akko　言葉にするのは難しいんですけど、日本語の使い方が、洋楽の訳詞っぽいなと思う。

yoko　それ、ヘタなんだと思う（笑）。

akko　いやいや。私の歌詞は「日本語！」って感じだけど、yokoちゃんは描写とか言葉の乗せ方とかが、洋楽の訳詞を読んでるみたいな雰囲気だからすごくいいなと思って。だからそうじゃない部分で、私がこのバンドで補える部分があるんだったら、そっちを担おうと思ったんです。歌詞に関しては、できる幅があるから。

yoko　私はakkoちゃんのようには書けないんですよ。私は以前まで誰かの歌を聞いて「この人の歌詞すごい」と思ったことがなかったんだけど、GO!GO!7188のakkoちゃんの歌詞はすごいと思った。だからそういう人に言われるとすごくうれしい。

keme　相思相愛ですね（笑）。

──yokoさんはGO!GO!7188ではどんな曲が好きですか？

akko　気になりますよね（笑）。

yoko　全部と言ったら嘘臭くなるから、この人の言葉がすごいと思ったのは「脳内トラベラー」。でも、akkoちゃんにそう言ったら「どんな曲だっけ？」って言われた（笑）。「あしのけ」とかも、狂ってるなーと思うんだけど、女子ゴコロわかるなーって。あと、「スカートの裾がほつれた～」って曲。

keme　「ドタン場でキャンセル」ね。

yoko　ダメなときって全部ダメだな、みたいな。わかる！って思った。

──PIGGY BANKSにはそういう曲はないけど、青臭いことを歌っていないのがいいと思います。

akko　書けないよねー（笑）。

yoko　こっぱずかしくて書けない（笑）。

若い芽は摘む！ ババアなめんなよ！

──「タイムスリラー」は楽しくバンドをやりたいんだってことが伝わるアルバムですよね。

yoko　ホントに楽しんでレコーディングもやりました。

akko　yokoちゃんとバンドやろうってなったときに、それまでの悩みとかを聞いたりして、yokoちゃんが楽しくこのバンドで音楽ができればいいなと思ったんですよね。前はあんまり楽しそうじゃなかった。

yoko　楽しくなかった、なんか。やりたいことと全然違ったのかな。

keme　言ってたね。だからアルバムができて、人から「聴かせて」って言われても躊躇する、みたいな（笑）。普通はむしろどんどん配るよね。

yoko　「タイムスリラー」は手裏剣のようにばらまくね（笑）。歩いててすれ違った人にも手渡したいぐらい。PIGGY BANKSを始めてからいろんなところで言ってるんですけど、今年30代になって、今が一番音楽と向き合ってると思うし、一番楽しいんですよ。歌詞もどんどん書きたいし、なんでもやりたいっていう覚醒状態になっていて。それがまたヒューって落ちる時期が来るかもしれないんですけど、今はホントに乗ってます！

akko　kemeが的を射たことを言っていたんですよ。「すごく恵まれてそうなのに恵まれてない」、みたいな。だからこのバンドでは、yokoが思い切りできたらいいなって最初から思っていて。

yoko　前までは「歌はこうじゃなきゃ」とか「歌詞はこうじゃなきゃ」とか、なんとなく自分で勝手に決めた何かがあったんです。でもPIGGY BANKSを始めて「自由でいいんだ！」って。今までもわかっていたつもりなのに、全然わかっていなかった。だから今回のアルバムは、ホントに遊びまくったんです。「Funky Monkey Ladies」みたいな声が低い曲は、今まで歌ったことないし、あと全部英語詞の曲も、今までは避けていたのになぜかPIGGY BANKSではできちゃった。

──自分を解放するステップになってるんですね。ガールズバンドなのも楽になれた要因かもしれない。

yoko　そうですね。

──お父様の存在が大きいから、もし男子だったら女子以上に比べられたりすると思うんですよ。

yoko　そうですね。生まれたときからお父さんがああいう人だと、それが理由で付き合ってくれる人と、そうじゃなく一緒にいてくれる人って、やっぱり本能でわかるんですよ。そういう自分が信頼できる人たちも「バンドをやったほうがいい」って言ってくれて、ようやくこのアルバムがリリースできたんです。スタート地点に立つのがすごく遅かったと思うんですけど、私の場合は今ぐらいでちょうどよかったのかなとも思うし、すごく楽しんでますね。

──最近は10～20代のアイドルが席巻してるけど、PIGGY BANKSはそれとは違う、「女にはいろいろあるのよ」ってことを提示できるバンドだと思うんです。

yoko　最近は「若い芽は摘む！ ババアなめんなよ！」って言ってますからね（笑）。

akko　「お客さんに寄り添うだけじゃなくて、お客さんを置き去りにする瞬間もあるのがロックのカッコよさじゃん」みたいに思ってるんですけど、この年齢だったらそれができるかな、って気がしています。