「全員、今までやったことがないことをやろう」

──では、今回のイベント「ピアノと謳う。」について聞かせてください。どんな経緯でスタートした企画なんですか？

畠山　郁子ちゃんが中心になってくれたんですよね。

原田　はい。タイトルも私が付けました（笑）。そもそもはね、「野音が空いてる」という話がある日飛び込んできて、クラムボンでも野音では何度もやらせてもらってるから、初めは「おー！ バンドでやれるの!?」と思ったんですけど、スケジュール的に難しくて。「では、ソロでどうですか？」となったので、少し考えさせて、と言いまして。1人でやるのは、もったいないなー、誰かと何かやりたいなーって思ったときに、グランドピアノが真ん中にポンとあって、入れ替わり歌ったりできないかなって。野音って暑いときは暑いから、ふっと涼めるような感じで。それで、Salyuと畠山美由紀に声をかけさせてもらったんです。それぞれのライブと、セッションも、できたらって。そしたら、2人とも、奇跡的に空いていた！ うれしかったです。なんかイベントで、企画から作れるライブってなかなかないから。

畠山　そうだよね。

原田　しかも、リリースのタイミングじゃないライブっていうのも、なかなかね、ないよね。ポコッと野音が空いて、「え！そこで何する!?」っていうわくわく感。2人ともオフィシャルなイメージがあるから、あんまりはしゃぎすぎると壊れちゃうかもしれないけど（笑）。

畠山　壊していきましょう（笑）。

Salyu　そうですね（笑）。前は（クラムボンと）salyu x salyuとして対バンさせてもらったんですけど、今回はSalyuとして誘っていただいたのがすごくうれしくて。しかも畠山さんともご一緒できるって聞いて（笑）。

畠山　その笑いは何？（笑）

Salyu　いや、この前も楽しかったなって。

畠山　あ、そうそう。郁子ちゃんから「スタッフさんを混ぜないで、まずは3人だけで打ち合わせしよう」って連絡があったんですよ。

Salyu　そのロケーションが横浜の中華街だったんです。しかも、入ったお店で生ピアノの演奏があって。

──イベントの趣旨にピッタリじゃないですか。

原田　ね。生ピアノでどうする？ってライブの話しながら、生ピアノの演奏聴いてるっていう状況が、面白くなってきちゃって。「『So Far Away』（キャロル・キング）とか聴きたいね」ってリクエストしたんだけど……。

畠山　断られて（笑）。

原田　「全部決まってるんで」って、あっさり断られて（笑）。

──楽しそう（笑）。あの、イベントの内容についても話したんですよね？

Salyu　話しました（笑）。

原田　2人の顔を見たら、それぞれの気分がわかったんですよね。

──「気分がわかった」というのは……？

原田　どう言えばいいのかな？ 今回みたいな自主的なイベントって、つまるところ、本人たちの気分が、そこにどれだけあるか、っていうのが大事だったりするから。コンディション的にもね、「そこまではちょっと……」とか「負担のない感じで……」っていうこともなくはないから。でも2人は、どんどん乗っかってきてくれた。

畠山　予想もしないようなアイデアも出てきたしね。「え？ そんなことできるの？」っていう。

Salyu　そのときも郁ちゃんの象徴的な一言があったんですよ。「全員、今までやったことがないことをやろう」って。

原田　あはは（笑）。

Salyu　そうしたら畠山さんが「バイオリン弾こうかな」って。

畠山　まったくやったことないからね、ホントに。

原田　「郁子はサックス吹きなよ」って。

畠山　結局、そのアイデアはしぼんじゃったけど。

──でも、その場でいろんなアイデアが生まれたと。

原田　そうですね。例えば私がスタッフに一斉メールして、「原田です。『今度の野音でこの曲やりませんか』」というふうに、間接的に2人のところに伝わっても、こういう密度ってなかなか生まれにくいから。だから、まず3人だけで集まれたのはすごくありがたかったですね。

畠山　面白くなりそうだよね。

原田　すでにもう、面白い（笑）。

当日の形態

原田　あと、「ピアノが主役」っていうのもすごくいいなと思っていて。“ボーカリスト（が主役）”ってなると、ヘンなプレッシャーがあるじゃない？

畠山　わかる。あるよね、そういうの。

──原田さんはピアノの弾き語りなんですよね？

原田　そうなると思います。

──畠山さん、Salyuさんはピアニストと一緒に歌うんですか？

畠山　そうですね。中島ノブユキさんと。

Salyu　私は小林武史さんと一緒に。

──ピアニストもすごく豪華ですね！

原田　そう。それで、せっかくだから、1曲でも出演者全員で何かできたらなーと。

Salyu　連弾の企画もあるんです。

原田　中島さん、小林さんの共演もぜひ見てみたい。

──すごい。充実したミーティングでしたねー。

原田　その後も、帰りたくなくなっちゃって、終電やめてみんなで山下公園に行ってね。海を見ながら、美由紀のノートパソコンで音楽かけて、泣いたりして、雨の中（笑）。

Salyu　楽しかったですねー。畠山さんの最近の音源を聴かせてもらったり。

畠山　私、次の日の午前中からラジオ（FMヨコハマ「Travelin' Light」）だったんですけど、本番中に郁子ちゃんから「聴いてるよ。美由紀がんばれ」ってメールが来ました（笑）。