音楽ナタリー PowerPush -→Pia-no-jaC←

節目の作品で振り返る “クラシックへの敬意”と“遊び心”の5年

→Pia-no-jaC←がニューアルバム「EAT A CLASSIC 5」を11月19日にリリースする。本作はクラシックの名曲カバーアルバム「EAT A CLASSIC」のシリーズ第5弾で、モーツァルト「アイネクライネ」(原曲名は「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」)や「トルコ行進曲」、バッハ「G線上のアリア」などといった、誰もが一度は耳にしたことがある楽曲が→Pia-no-jaC←ならではのテイストで料理されている。

より遊び心が増した今作は、「EAT A CLASSIC」シリーズにとって5作目という節目の1枚。今回のインタビューでは→Pia-no-jaC←の2人にサウンドプロデューサー樫原伸彦を交え、新作制作の話題や1作目を発表した2009年から現在までの成長、そして「EAT A CLASSIC」シリーズとの向き合い方などを語ってもらった。

取材・文 / 西廣智一 撮影 / 笹森健一

ピアノとカホンだけでビッグバンドを表現

左からHAYATO(Piano)、HIRO(Cajon)。

──「EAT A CLASSIC」シリーズとしては2年ぶり、通算5枚目の新作ですね。これは毎回言ってる気がするんですけども……みんなが知ってるようなクラシックの名曲って、まだこんなに残ってたんですね。

HAYATO(Piano) 本当にそうですね。5作目まで来ましたけど、きっとまだまだカバーしてない曲が残ってるんやろうなっていうのもありますし、ジャケットのハンバーガーもどこまで乗っければいいんだろうっていうのもありますし(笑)。脱線しましたけど、改めてやっぱクラシックは偉大やなと思いました。

──僕たちはそれだけ無意識のうちにクラシックの名曲を、日常の中で耳にしてるんだなってことに改めて気付かされました。

HAYATO 例えば曲のタイトルがわからなくても、聴き覚えがある曲はいっぱいあるじゃないですか。なので、そういった曲たちを僕たちがどんどん自分たち流にアレンジして、クラシックでも手拍子していいんだ、声を出してもいいんだ、踊ってもいいんだってことを伝えていけたらいいなと思って、毎回制作に臨んでるんです。

──今作で言ったら「アイネクライネ」のフレーズは誰もが一度は耳にしたことがあるはずなのに、曲名まで知ってるって人は意外と少ないですよ。

HAYATO そうなんですよね。その「アイネクライネ」ではスウィングジャズという、僕たちにとっても新しいジャンルに挑戦していて。

──どこかビッグバンド風のアレンジですよね。

HAYATO はい、ビッグバンドの編成はすごく意識しました。トランペットやトロンボーン、サックスなどブラスセクションのリフ、さらにはベースやギターもピアノで表現して。→Pia-no-jaC←はピアノとカホンの2人だけなので全然ビッグバンドじゃないんですけど、それを2人で表現することが面白いと思ったんですよね。

HIRO(Cajon) 僕はビッグバンドでフロアタムをドンドン鳴らす感じをイメージして、それをカホンで表現しながらグルーヴを作ったら面白いなと考えて。そういったチャレンジがたくさんある作品なので、今回は特に面白い仕上がりになってると思います。

皆さんにも徐々に免疫ができてきたと思う

──今回も思わずクスッとしてしまう遊びの要素が随所に盛り込まれてますね。

HAYATO そうですね。この「EAT A CLASSIC」シリーズは作品を重ねるごとに、どんどん遊びが過激になってるような。

HIRO スタジオでも今回が一番爆笑したんちゃうかってくらいで。

HAYATO(Piano)

HAYATO 今回こそクラシックの識者の皆さんに、完全に怒られるんちゃうかなって思いましたもん(笑)。

HIRO それこそ「グリーンスリーブス」なんて、最終的に香港にたどり着きましたから(笑)。

HAYATO なんかバトルしているうちに、香港まで行ってしまいました。

──イングランド民謡が、なぜかカンフー映画調アレンジになってしまったという。

HIRO ベタベタなギャグが満載で。なぜ香港なのかわかりましたか?

──えっ、理由ですか?

HIRO そうです。これは「グリーンスリーブス」と「ブルース・リー」をかけていて。

HAYATO スタジオで作業してるとき、トイレから帰って来たHIROが笑ってるんで、「どうした?」って聞いたら「ブルース・リー、どうやろ?」と言い出して(笑)。

樫原伸彦 そこから「HIRO、マネできないかな?」って話になって、あの掛け声につながるわけです(笑)。

──なるほど(笑)。でも1作目、2作目の頃はここまでの思い切りってなかったですよね。そう考えると、積み重ねって大事なんだなと。

HAYATO そうですね。聴いてる皆さんにも徐々に免疫ができてきたと思うし。「→Pia-no-jaC←だからしょうがない」っていうね(笑)。

HIRO そういう芸風だっていうのを皆さんわかってると思うので(笑)。

──リスナーに免疫ができてきたからこそ、「トルコ行進曲」をド演歌風にアレンジしても許されると(笑)。

HIRO(Cajon)

HIRO あははは(笑)。これは行き切った感じがありますよね。「トルコ行進曲」は和風アレンジになると決まってから、冒頭で鐘を鳴らしたくなって。それで神社で使われてるやつと同じものを神具屋さんに買いに走ったんです。

樫原 でも最初はすごくちっちゃい、それこそ鈴みたいなのを買ってきて。スタジオでカランって鳴らしたら「なんだそれ?」っていう音だったんです(笑)。

HAYATO 「HIRO、なんでそこケチったんやろう?」って(笑)。

HIRO いやいや、神具屋さんに行って実際に鐘をいろいろ見せてもらうと、意外と高いわけですよ。特にひも付きのやつはね。で、ひょっとしたらその小さいやつでも雰囲気は出るかなと思って、試しに買ったわけです。

樫原 音がショボくても加工してくれると思ったんでしょうね(笑)。でも、最終的にはデカイやつに買い替えて。

──それが今回残ったものだと。

HIRO そうなんです。その一発のためだけに用意しました。

HAYATO あの鐘があったからこそ、今回のイントロができたっていう。実はイントロの決めも、二拝二拍手一拝をイメージしていて。

HIRO 細かいですけども、二拍手のところは手拍子を重ねているんです。そういうところも意識して聴いてもらえたらうれしいですね。

ニューアルバム「EAT A CLASSIC 5」/ 2014年11月19日発売 / PEACEFULL RECORDS
初回限定盤 [CD+DVD]2400円 / QIJ-91008
通常盤 [CD]1900円 / XQIJ-1010
ヴィレッジヴァンガード盤[CD+DVD]2300円 / XQIJ-91009
CD収録曲
  1. アイネクライネ / モーツァルト
  2. G線上のアリア / J.S.バッハ
  3. トルコ行進曲 / モーツァルト
  4. グリーンスリーブ / スイングランド民謡
  5. ハッピーバースデー / ミルドレット・ヒル, パティ・ヒル
  6. ラデツキー行進曲 / ヨハン・シュトラウス1世
初回限定盤DVD収録内容
  • 「アイネクライネ」PV
  • ニューヨークロケPVメイキング映像
ヴィレッジヴァンガード限定盤DVD収録内容
  • 2014.9.14 Zepp Tokyo「→PJ←ワンダーランド」LIVE ダイジェスト
→Pia-no-jaC←(ピアノジャック)

→Pia-no-jaC←

HAYATO(Piano)、HIRO(Cajon)の2人で構成されるインストゥルメンタルユニット。名前の由来は左から読むとピアノ、右から読むとカホンとなることから。鍵盤と打楽器という至ってシンプルな編成ながら、重厚かつ多彩な音を鳴らすのが特徴。その独自の音楽性が各方面から注目を受け、ディズニーやスクウェア・エニックス、ショパンなど多数のトリビュートアルバムに楽曲提供。2010年発売の嵐のアルバム「僕の見ている風景」では、二宮和也から熱いオファーを受けゲストミュージシャンとして参加した。さらに宝塚歌劇団への楽曲提供、ラジオのジングル制作など幅広い活動を展開。ライブではオリジナル楽曲やクラシックなどのカバーを武器に、迫力満点のパフォーマンスを披露し、国内外の幅広い層から絶大な支持を受けている。2012年7月には葉加瀬太郎とのコラボレーションアルバム「BATTLE NOTES」を発表し、大きな反響を呼んだ。2014年10月から11月にかけて、ベルギー、フランス、イタリア、スペインの4カ国8都市でヨーロッパツアーを敢行。各地でのライブの様子がさまざまなメディアで取り上げられ、話題を集めた。そして同年11月、クラシックのカバーアルバム「EAT A CLASSIC 5」とBOXセット「EAC 5th Memorial Box」を同時リリース。