ナタリー PowerPush - →Pia-no-jaC←

初ベストアルバム発売記念 HIROカホン講座&曲作りセッション

ピアノとカホンが別のリズム感を出す「台風」

インタビュー風景

──今回のベストアルバム収録曲の中でレコーディング当時すごく苦労した曲はありますか?

HAYATO 僕は「The Last Resort」という曲ですかね。こういうラテン調の曲は今までやったことがなかったんです。だからラテンのリズム感が体に入ってなかったので、レコーディング合宿のときにひたすら同じフレーズを何時間も引き続けてリズム感を体に入れて、そこからメロディを作っていきました。さらに、曲の後半を聴いてもらったらわかるんですけど、左手のフレーズがえらいことになってるんですよ。それもまたムチャ振りだったんですけど(笑)。

樫原 「左手のフレーズは8分音符じゃつまんないよね。16分音符でいけるやろ!」って。

HAYATO それを言われたときは「マジっすか!?」って思ったんですけどね。最初は全然できなかったんですよ。でも、左手が動かないんだったら鍛えればいいかなと思って、日々めっちゃ鍛えまくってやっと左手の16分も弾けるようになって。とにかくレコーディングのときは苦労の連続でしたね。そんなに長い曲ではないんですけど、腕の筋肉の消耗はハンパないですよ。でも、この曲はぜひライブで観てほしいです。今は腕だけじゃなくて、足も使ってますから。それもムチャ振りの結果なんですけどね(笑)。

──HIROさんは印象に残っている曲はありますか?

HIRO 「熊蜂の飛行」ですね。曲中でずっとトライアングルが鳴ってるんですけど、あれも速いパッセージだったんでどこに行くにも延々叩いて練習してました。あとは、「The Last Resort」もラテンのリズム感を体に入れるために延々と叩いてた印象が強いですね。

樫原 「台風」は?

インタビュー風景

HIRO ああ、「台風」もいざやってみたものの、なかなかしっくりこなかった曲ですね。「これ、あんまりカホンのリズムに合ってないな」って言いながらいろいろ繰り返す中で、「ッターンタカタカ」って裏に拍を入れてみようって発想からパーッと広がっていって。そのフレーズを入れたら、それまでやっていた「台風」と違うものになって、あとはそのリズムをどれだけ自分になじませるかをひたすら続けました。

HAYATO 元々全然違うアレンジだったんですけど、ピアノはピアノでリズム感を出して、カホンはカホンで別のリズム感を出したら面白いんじゃないかって。僕も慣れないリズムだったんで、最初は「ほかの音は一切聴かんとこう」って自分を保つので精一杯。1回録って聴いてみると、「あ、こうやって聴こえるんや」ってわかったんで、そこからはどんどん面白くなっていきましたね。

HIRO 「ッターンタカタカ」っていうリズムパターンが、それまでの→Pia-no-jaC←にはなかったんです。

樫原 原型覚えてる?

(HIRO、原型を演奏してみせて、現在のバージョンと比較)

樫原 こうやってスタジオでセッションしながらブラッシュアップして、曲をどんどん成長させていくんです。ビートも「台風」みたいに変えることもあるしね。

フレーズの断片が曲に成長していくまで

──ちなみに、すでに新曲はできているんですか?

HAYATO 今ちょうど……。

樫原 何をやろうかってね。まあ、次のツアーのことも考えつつ。ネタは結構いろいろあるらしいんで。

インタビュー風景

HAYATO 断片だけは(笑)。今までの→Pia-no-jaC←になかったような新しいことをしたいんで。今回のテーマは「パラディドル」で。

──パラディドルってなんですか?

HIRO パラディドルっていうのはドラムやパーカッションの奏法のことで。単純に右左右左って叩くリズムじゃなくて、例えば右左右右左右左左って叩くことなんです。

HAYATO そのパラディドルを取り入れた面白いフレーズを考えてきたんです。

(HAYATO、ピアノを弾く)

HAYATO ……っていう。こういう動きって今までなかったでしょ? 逆にピアノがリズムをどんどん出していこうかなと。

HIRO もう1回やってもらっていい?

(セッション)

樫原 一緒にやるとグチャグチャになっちゃうから、HIROはもうちょっとシンプルなビートのほうが聴こえが良いんじゃない? パラディドルって昔で言うとクラビネットのフレーズで、ファンク系に多いんだよね。今のフレーズだったら、ユニゾンでやると16分がずれてあんまりカッコよくないな。

(セッション)

樫原 これもうちょっと速くなる? 気持ち速く。

(セッション)

インタビュー風景

樫原 何かフィルを入れていったらカッコいい。今の16分に……6連とか3連とか入ると。

(セッション)

樫原 いいじゃん。あとは、ドキッとするようなイントロが欲しいかな。こういう連符を使ってちょっとプログレッシブな感じで。

(セッション)

樫原 いいんだけど、これで1曲作っていくと、左手が暇になるよね。左手と右手で本当にハードなパラディドルなフレーズが、クライマックスにきたら盛り上がりそうだけど。

HAYATO そうですね。

(セッション)

樫原 だんだんパラディドルが展開していったら面白いんじゃない。

(以降、3人で何度もセッション)

やり取りしながらどんどんアレンジに悪ノリが加わる

──1つのアイデアが、こういう形で広がっていくわけですね。

樫原 アレンジしながら「こうやったら笑えるよね」なんてことも一緒に考えつつ。バカバカしいところも含めて、「笑える」ってことが肝なのかな。「EAT A CLASSIC」シリーズもそうですけど、こうやっていろんなやり取りをしながらどんどんアレンジに悪ノリが加わっていくんです。

HIRO ムチャ振りに次ぐムチャ振りと、悪ノリに次ぐ悪ノリですね。

──すごく貴重なものを見せていただきました。

樫原 企業秘密の、ほんの触りの部分ですけどね。

──その断片を観ることができて、今後アルバムを聴く際にまた違った見方で楽しめるんじゃないかなって気がしました。

HAYATO ベストアルバム「First Best」に入ってる曲は、どれもポーンと簡単にできたわけじゃないんで。1曲1曲にすごく時間をかけて、僕らもたくさん練習して、その過程を経て完成した思い入れの強い曲たちばっかりなんです。これからも制作活動には時間を惜しみなく使って、いい曲を作りたいと思ってます。

樫原 ガンガン新曲を作って、ライブで披露しつつ、来年のいつ出すかわかりませんけどニューアルバムの準備を進めていけたらいいね。

HIRO 今の曲もうまくいけば入るかもしれないし。

HAYATO 入ってなかったら、これ以上アイデアが広がらへんかったんだなって思ってもらえれば。

一同 あははは(笑)。

樫原 まあボツになった曲もたくさんありますから。こうやって彼らが持ってきた断片からアイデアが広がらなかったフレーズ集っていうのもけっこうあるし。

HAYATO 用意してきたフレーズの断片が広がって良かった(笑)。

インタビュー風景

ベストアルバム「First Best」 / 2011年9月7日発売 / 3000円(税込) / Peaceful Records / XQIJ-1005

  • ベストアルバム「First Best」 / Amazon.co.jp
DISC 1 [Original]
  1. 組曲『 』
  2. うさぎDASH
  3. 交響曲 第9番 ニ短調 作品125 「合唱」第4楽章 / ベートーベン
  4. 小フーガ ト短調 BWV 578 / J.S.バッハ
  5. 台風
  6. 花火 ~HANABI~
  7. Time Limit
  8. 美しく青きドナウ / ヨハン・シュトラウス
  9. 交響曲第9番 ホ短調 作品95「新世界より」第4楽章(First Best Ver.) / ドヴォルザーク
  10. 残月
  11. The Last Resort
  12. 輪舞曲 ~Rondo~
  13. 熊蜂の飛行 / リムスキー=コルサコフ
  14. ジ・エンターテイナー / スコット・ジョプリン
  15. Jack 2011
DISC 2 [Compilation&Collaboration]
  1. メインストリート・エレクトリカルパレード [ディズニーランドR] / 「Disney Rocks!」より
  2. ミッキーマウス・マーチ [ミッキーマウス・クラブ]&星に願いを [ピノキオ] / 「Disney Rocks!!」より
  3. さらば愛しきストレンジャー / 「NOT JAZZ!! BUT PE'Z!!!」より
  4. Typhoon (DAISHI DANCE Remix) / 「PIANO project.」より
  5. Pulse of the earth / 「PIANO project.」より
  6. 夜想曲第2番変ホ長調Op.9-2 / 「JAMMIN' with CHOPIN」より
  7. More SQ: クロノ・トリガー 風の憧憬 / 「More SQ」より
  8. Love SQ: ビッグブリッヂの死闘~妖星乱舞~片翼の天使 / 「Love SQ」より

ピアノスコア「→Pia-no-jaC← First Best」 / 2011年9月7日発売 / 2100円(税込) / シンコーミュージック・エンタテイメント / ISBN: 978-4401025084

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  • ピアノスコア「→Pia-no-jaC← First Best」

ピアノスコア「→Pia-no-jaC← Collaboration」 / 2011年9月7日発売 / 2100円(税込) / シンコーミュージック・エンタテイメント / ISBN: 978-4401025091

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  • ピアノスコア「→Pia-no-jaC← Collaboration」
→Pia-no-jaC←(ぴあのじゃっく)

ピアノのHAYATO、カホンのHIROにより2005年4月に結成されたインストゥルメンタルユニット。鍵盤を中心にしたシンプルな楽器編成ながら、ジャズともクラシックとも異なるエネルギッシュでオリエンタルなサウンドが、リスナーに強烈なインパクトを与えている。2008年の1stアルバム「First Contact」を皮切りに2年間で5枚のアルバムを立て続けに発表し、合計で45万枚のセールスを突破。国内外のフェス出演を含む、年間250本以上のライブを精力的に敢行している。2010年夏にはDAISHI DANCEとのコラボアルバム「PIANO project.」をリリース。さらに、同年8月発売の嵐のアルバム「僕の見ている風景」では、二宮和也から熱いオファーを受けゲストミュージシャンとして参加した。2011年1月には、クリエイティブディレクターの箭内道彦が手掛けるシューズブランド「ピーエフフライヤーズ」のCMソングに、アルバム「EAT A CLASSIC 3」の収録曲「ジ・エンターテイナー」を提供。同年4月からスタートした全国ツアー「Travellin' Band Tour 2011」のファイナル公演では、渋谷C.C.Lemonホールでのワンマンライブも実現した。なおユニット名は、左からピアノ、右からカホンと読むことができる。