みあ(三月のパンタシア)×イラストレーター・ダイスケリチャード|イラストから見る“三パシの世界”

イラスト1枚だけでも物語を想像できる

みあ ダイスケさんが描く女の子の、ちょっと力の抜けたポージングがすごくいいなと思っていて。ああいったポーズはどういうところから着想を得ているんですか? ちょっと変わった感じの構図が多いと思うんですけど。

ダイスケ 僕はキャラクターの顔があんまり見えないような画風を取っているので、構図に制約があるんですよね。この向きはいけるけど、この向きはいけないみたいな。そしてこの向きになるんだったら自然に体の角度はこっちしかないよなというところから、その中で一番いい構図を選んでいく。自由度がないからこそ、構図が絞られていくというか。

「青い雨は降りやまない」イラスト

みあ 人の喜怒哀楽の感情って表情に出るなあと思うんですけど、ダイスケさんのイラストは表情の描き込みがそんなになくても、そういうポーズや構図、アイテムで女の子の気持ちや雰囲気が表現されているのがすごいです。この子は切ない気持ちなんだろうなとか、この女の子はちょっと前向きさがあるなとか、わかるんですよ。

ダイスケ 自分で言うのもなんですけど、表情を描かないぶん、それ以外で表現するというのは確かに得意な部分ではあるのかもしれないですね。

みあ 先日「青い雨は降りやまない」のリリックビデオを公開したんですけど、「女の子が後ろ向きで花束を持っているイラストが好き」というような感想をSNSで見かけて。これこそ表情は見えなくても、ただたたずんでいるだけで主人公の意思を感じさせる素敵なイラストだなと思いました。イラスト1枚だけでも物語を想像できますよね。

ダイスケ いや、もう曲と歌声があってこそですよ。

みあ ありがとうございます(笑)。

知らなかった“パンダ”の意味

──小説のないファンの方へのメッセージソング「ランデヴー」のイラストはどういうイメージで描かれたんですか?

「ランデヴー」イラスト

みあ この曲は高くどこかに飛んで行っているみたいなイメージがあって。そういうことと、パンダを描いてほしいというリクエストをさせてもらったと思います。三月のパンタシアという名前にちなんで、私はこれまでずっとパンダをキャラクターとして定着させてきて……。

ダイスケ ちょっとその話いいですか? 僕、今までずっと三パシさんのライブグッズとかでもパンダを描いてきたんですけど、わりと直近のライブに行ったときにMCでみあさんが「パンタシアだからパンダです」みたいなことをおっしゃっていて、そこで初めて「そうなんだ!」と(笑)。

みあ えっ、そうですよ! 気付いてなかったんですか? あんなにパンダをオーダーしていたのに(笑)。

ダイスケ いつも「描いてほしいです」と言われるから、何か理由はあるんだろうなとは思っていたんですけど(笑)。なるほどなって。

みあ そういう思いがあって意図してパンダをずっと描いてもらっていたんですけど、「ランデヴー」のイラストではパンダをリスナーの皆さんに見立てているんです。一緒に高く飛んで行けたらいいなという思いで風船も付けてもらって。あと、この羽ペンを持っているイラストはみあのこだわりです! 羽ペンを絶対描いてほしいという。

「ランデヴー」イラスト

ダイスケ なんで羽ペンだったんですか?

みあ 羽ペン、かわいいじゃないですか(笑)。いろんな物語を描き続けているというシーンですね。

ダイスケ ほかのイラストはストーリーありきで描いているので、確かにこういう描き方は新鮮でした。しかも三パシさんのストーリーは全体的に切なくて、「楽しい!」といったプラスの方向性には動いていないことが多いと思うんですけど、この曲はわかりやすく明るくて。イラストも今までの中でもポップなテイストにしたので、自分の中でも印象的に残っている作品です。

100点の作品を200点に

──お二人にとって小説、イラスト、音楽を掛け合わせていくこの企画の面白みはどういうところにありますか?

みあ ダイスケさんには毎回楽曲やストーリーに沿ったイラストを描いていただいていて、こちらから「こういうイメージで描いてほしい」とお願いはするものの、私の想像の斜め上というか、さらにクリエイティブなものがダイスケさんから届くんです。しかもそれがリリックビデオになることで、物語の奥行きがより深まっていく。そんなふうに小説を書いて、楽曲ができて、イラストができて、動画になって……いろんな人の力を借りながら物語がどんどん構築されていく過程を一から見ることができるのは、プロジェクトとしてやっぱりものすごく面白いです。もしかしたらリスナーの方々以上に私がこの企画を一番楽しませてもらっているんじゃないかなと思うくらい。

ダイスケ 三パシさんから僕のところに小説と音楽が届いた時点で、もう100点の作品ができているんですよ。その最初にもらったものに自分の力でどのくらいプラスできるかというところに面白みというか、やりがいを感じているのかもしれないです。200点になった状態でリスナーの方々に作品を届けられるかどうかという。そういう達成感や楽しさはありますね。

みあ ダイスケさんがイラストで音楽を表現してくれることで、物語の幅が広がるんですよね。先ほどの話にも出てきましたけど、日常の中にある非日常感を描いてもらうことによって、「終わりと始まりの物語を空想する」という三月のパンタシアのファンタジー感のあるテーマがすごくうまく表現されているような気がしていて。それは実写では難しい、イラストだからこそできる表現なのかなと思っています。

──これからもお二人がどのような三パシの物語を紡いでいくのか楽しみにしています。

ダイスケ 僕はちょうどこの間イラストレーターとして独立して2年が経ったんですけど、その始まりは三パシさんの「青春なんていらないわ」でしたし、三パシさんは僕のイラストレーター人生をほぼほぼ一緒に歩んできた存在なんですよ。だから勝手に一心同体くらいの気持ちで思っていたりはしますね(笑)。

みあ ありがとうございます(笑)。お声がけさせてもらったのが半年遅かったら、ダイスケさんはフリーのイラストレーターとしてすごく忙しくなっていて、もしかしたらご一緒できていなかったかもしれないなって。お願いしたのが「青春なんていらないわ」のあのタイミングだったのも、本当にご縁があったなと思います。