自分らの曲の中でも一番好き
──実際の曲作りはどのように進めたのでしょうか?
ウル トラックの土台の部分は僕が作ったんですけど、とにかく最初から最後まで緊張感があるというか、細い線がピーッと張っているような感じにしたいなと。あとは、当時テンポの速い曲にハマってたので、BPMは200以上。そしてパッと聴いたときにどんなイントロならその人の心をつかめるかなって考えて、MIDIでピアノをバーっと弾いて打ち込んで、それからノートを入れ替えてみたらいい感じになりました。だから実際には弾けないフレーズなんですけど(笑)。
TK そもそもエンディング曲の候補はほかにもいっぱいあったんです。スケッチ程度のものも含めれば、6曲くらいもらったのかな。最初から僕がプロデュースすると決めるんじゃなくて、どういう楽曲があって、「自分がプロデュースすることでいい方向にいくか」「足りない部分が自分の中に見えるか」などを見てプロデュースするかどうかを決めたいと思っていて。なので候補曲を挙げてもらって、その中から選びたいという話をしました。
──「image _____」を選んだ決め手は?
TK まずはすごく可能性を感じたということ。あとは眩暈SIRENの過去の楽曲を聴いていて、サビのあとの高揚感がもう少し欲しいなと思っていたんです。もちろんだからこそいいというのもあるんですけどね。楽曲の温度感を上げすぎないことで、何回も聴けるものになることもあるので。でも「image _____」は煽るような曲なので、僕が入ることによって、カタルシスじゃないけど、より盛り上げて感情的に深い部分まで到達させたいなと。だからその作業を最初にやらせてもらって「サビは書き換えるよ」と伝えて。途中まではもうバッチリだったから、そこから先を作るというスタートでしたね。
──TKさんのアレンジを受けて、どう感じましたか?
ウル 僕からすると、書き換えられてる感覚はあんまりなくて……歌に関してはもしかしたらあるのかもしれないですけど、僕が音符で表現したかったけど到達できなかったところをすごくブーストしてもらった感覚です。完成したものを聴いたら、むっちゃカッコよくて……自分らの曲の中でも、僕は一番好きです。
TKさんに言われてるんだから!
──ボーカルに関してはどのようなディレクションがあったのでしょうか?
TK 何度かやり取りをしたうえで僕が書いたメロディを歌ってもらったんですけど、結果的にちょっと背伸びをしてもらった感じです。バンドのメンバー間だと、それぞれの限界を知ってる手前、あまりそれをやらなかったりするんですよね。ドラムはもともと速かったですけど、さらにそこに手数をバーッと入れて。どれだけ叩けるかは知らなかったけど(笑)、全然叩けてました。
京寺 悲鳴を上げてましたよ(笑)。
ウル 僕もあれくらい叩かせたいんですけど、ちょっと目を離すと手数を減らしてて……。
──でもTKさんがやれというと……。
ウル ちゃんと言うことを聞いて叩いてたから、よしよしと思って(笑)。
──京寺さんはTKさんのメロディを歌ってみていかがでしたか?
京寺 普段はフラット気味に歌うことが多いので「そこをもっと開放しろ」という要望を出されて、そんなことできるわけ……って思いながら歌いました(笑)。でも「やるしかない、TKさんに言われてるんだから!」って。シャウトもめちゃくちゃ恥ずかしかったんですけど腹をくくろうと……2人だけだったのでシュールでしたよね。TKさんが見てる横で「ウェーッ」って言ってる。自分はあまり知らない人の前で歌うのが苦手だから、恥ずかしかったです。
TK 確かに(笑)。でも1対1じゃないと、声の一番おいしいところがどこかわかんなかったりするんですよね。京寺さん、周りにもっと人がいると新しいことにチャレンジしづらいかなと思って。やるんだったら1対1で「恥ずかしいとは思うけど、俺そういうの聴き慣れてるから大丈夫だよ」みたいな(笑)。そういう温度感でメロディを探って、当てていった感じです。
京寺 TKさんも歌ってくれたから助かりました。「ここには歌う人が2人いる!」と思えて。
TK ボーカル同士だからできることはあるかもしれませんね。
──TKさんがプロデューサーとして参加したことで、これまで届かなかったところに到達できたわけですね。そうやって生まれた曲のタイトルですが、正式な読み方は「イメージ・ノーエンタルド」なんですよね?
ウル そうです、正しくは。
京寺 でも「ノーエンタルド」の部分は読まないようにしようかと。イメージに続く何かは、人の脳内だから千差万別という……中二病ですね(笑)。
──歌詞に関しては、どのように作りましたか?
京寺 歌詞は自分が書いたんですけど、話の展開がわかってしまうようなものにはしたくありませんでした。自分がこのマンガを読み始めたときの「これから先、この物語はどう展開していくんだろう?」「行き先はどうなるんだろう?」みたいな、翻弄されていくような気持ちをマンガに出てくる単語を交えて歌詞にしようと思って。登場人物もそうですけど、読者も振り回されるじゃないですか。その感じと、物語内で能力によって翻弄されていく人たちを重ねて歌詞にできたらいいな、と。
山本 歌詞、素晴らしいと思います。
──楽曲に対する山本さんの印象もお伺いしたいです。
山本 マンガが原作だと原作のイメージがどうしても固定されているので、観る人によってはアニメがマンガのイメージと違うなんて意見も出る。だけど今回はオープニング、エンディングそれぞれが作品のイメージにぴったり合ってるなと思っていて。この2曲はもともと原作にある脳内の……脳というか心の中の、よくわかんないものをうまく表現しているというか。相反する感じだったり、交錯する感じだったりがすごく出ている思いました。眩暈さんの曲は本当に映像映えするんですけど、さっきのサビの話はなるほどなって思いました。
──エンディングの映像はどのようなものに仕上がっているのでしょうか?
山本 実写っぽい映像で、本編とはテイストの違うものになっていますけど、実はエンディングの映像のクオリティが一番高いと思っています。「PSYCHO-PASS サイコパス」のときもそうだったんですけど、エンディングでグッとえぐられるという。「pet」もエンディングが一番のピークになるみたいなタイプの作品だし、その意味でも音楽性もハマっていると思います。
TK すごくちゃんと作ってますよね。
京寺 正直エンディングは手を抜かれると思ってました(笑)。
山本 一般的にエンディングが手が抜かれやすいのは、単に本編に追われてるからという事情が大きいんです(笑)。でも今回は、ある種別班で作ることでクオリティを高めています。
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音楽、アニメ業界の7年の変化
2020年1月7日更新