ナタリー PowerPush - PERIDOTS 

柔らかく豊かな2ndアルバム 独自の美学に迫る

1人でいながらバンドに憧れてる状態が心地良い

──タカハシさんの場合、状況によって活動を共にするミュージシャンやスタッフが変わってきたわけですが、ここ最近はやっと腰を据えられた感じですか?

そうですね。いろんなミュージシャンやスタッフとやらせてもらったおかげで、自分がどういうものが好きか、どういう人とやりたいか、どういう人とやるのが合っているのかを自分なりに考えることができました。だからこそ、前の事務所を辞めたときも、もう真っ先にアレンジャーの(久保田)光太郎さんのところに行って「一緒にやりたいんです」って迷わず言えましたし。自分が選んだことなんで自分がしっかりしないと、結果、全部自分の責任だし。そういう意味ではドキドキするぐらい制約もなしにやらせてもらってるので、腰も据えてますし、自由ですね、すごく。

──PERIDOTSってアーティストとしての佇まいもスタイルも独特ですよね。いわゆる“男性シンガーソングライター”みたいなデビューの仕方じゃなかったのもユニークだったし。

はい。元々、ソロアーティストとしてやりたかったっていうわけではなかったので。PERIDOTSっていう名前も4人か5人のバンドを組もうと思って付けたものでしたから、たまたまソロアーティストになっちゃったという気持ちがいまだにあります。光太郎さんにも「タカハシくんはやっぱりバンドマンなんだよね」って言われるんですよ。曲の作り方とかがバンドマンの考え方だって。普通、シンガーソングライターと言われるような人はもうちょっと弾き語りで成立するような曲ばっかりになるもんなんだけど、そうじゃないって言われたので、ま、そうなんだろうなとは思っていて。

──でもがっちりバンドというのも息苦しく感じるんでしょうか。

そうなんでしょうかね……。でも1人だからバンドに憧れるっていうのは絶対あると思う。で、バンドが難しいのもすごくわかっているつもりだから、そういう意味では1人でいながらバンドに憧れてる今の状態が、自分としては心地良い。このままずっといくんだろうなって思いますね。

自分の曲の歌詞を100%理解する必要はない

──アルバムは柔らかくて豊かなイメージということで、4曲目の「異常気象」はその象徴的な曲とも言えますね。かなりの大曲で、しかもレコーディング風景に密着したPVも作られていますが、リードトラック的な意味合いで撮影したんですか?

リードトラックではないんです。なんて言ったってツインドラムで、7人編成で、しかも一発録りで作ったので、ドキュメントとして残しておかないともったいないだろうってことで。良いものになるだろうと思ってやったんですけど……撮影してるときはそれどころじゃなかったです(笑)。

──映像でのテイクがそのままこの音源なんですか?

そうです。その映像と音源が編集なしで同じものっていうのがポイントで、そこを編集しちゃうと意味がないので、ホントにそのままですね。だから、今でもあの映像を観るたびに緊張しちゃうんですよ(笑)。

──(笑)。それだけの人数で、しかも立ち位置の関係上アイコンタクトできない人もいる状態では、どう考えてもタカハシさんの歌しかガイドラインがないですよね。

そうですね。そもそもこの楽曲は、構造も歌詞も、自分でもなんでこんな楽曲になったんだろう?と思います。自分でそう思うってことは、演奏してるみんなもなんとなく得体の知れない感じを感じてたと思うので、曲に対して一番近くにいる僕が歌って引っ張っていくしかないっていう気持ちが出たんですかね。

──その思いは楽曲や演奏から伝わってきます。

で、このPVでは、昔からこの曲を知ってる友達に英訳の字幕を付けてもらったんですけど、その訳を見て、「あ、こういう曲だったんだな」って自分でわかったぐらいでしたね(笑)。かと言って、今でも「こういう曲なんだよ」って言葉で説明できるわけではなくて、主人公は何を考えて、何を思ってこの歌の中にいるのかは、なんとなくでしか言えないんですけど。

──確かに直訳できない部分もありますし。

それもそうですし、僕、自分で自分の曲の歌詞を100%理解する必要はないと思っているので、こういうことが起きちゃうんです。

──聴くほうも、タイミングによって聴こえ方が変わりますし。

うん。まず明るい曲なんだか暗い曲なんだかわかんないところもありますからね。でも結局、人生なり人の内面なりってそうだから。100%暗い、100%明るいってわけじゃないから、そういうところを模索しながら作ったと思うんですけど。

──「君をわからないままでいたいのです」というフレーズは、タカハシさん自身もそうなのかな?というニュアンスを感じました。

実はその一節だけ、自分でもまだ消化できてないんですよ。ある意味すごいわかりやすい言葉だし、間違ってないのは自分でわかってる。でも、じゃあどういうマインドなのか、わからないのが自分としてはすごく気持ちが良いんですよね。特にそういう部分を声に出して歌ったとき、矛盾してるようなんですけど、わからないからこそ不思議な手応えがあるというか。なんとなくそういう感覚を探しながら詞を付けてるところはあると思います。

ニューアルバム「Follow the Stars」

  • 2012年1月25日発売 / 3000円(税込) / tearbridge records / NFCD-27313 / Amazon.co.jpへ
  • ジャケット画像
収録曲
  1. 海と塵
  2. Follow the Stars(In Your Heart)
  3. Teenagers
  4. 異常気象
  5. I Want to Be Toby
  6. miracles at night
  7. Smile
  8. Raining,raining
  9. 歌は常に雄弁である
  10. andante
  11. EXPO
  12. 長かった一日が終わろうとしている
PERIDOTS(ぺりどっつ)

山形県出身のシンガー、タカハシコウキのソロユニット。高校卒業後に宅録を中心とした音楽活動をスタートし、26歳で初めてバンドを結成する。その後紆余曲折を経て、現在のソロ形態へ。2005年、ライブが評判を呼び、音源のリリースがまだないにもかかわらず初のワンマンライブはソールドアウト。2006年5月にはミニアルバム「PERIDOTS」でCDデビューを果たす。その後レーベルや事務所を移籍し、2010年11月にフルアルバム「MY MIND WANDERS」を発表。魅力的な歌声と、ブラックミュージックから90年代パンクまでを独特の切り口で消化した楽曲で、幅広い支持を得ている。