「海と塵」っていうアルバムタイトルにしようと思ってた

──アルバムのお話を訊く前に伺いたいんですが、タカハシさんは東日本大震災の前と後では普段の生活のトーンが変化した部分がありましたか？

僕個人がどうっていうのは特にないと思うんです。みんな一緒じゃないですか？ ミュージシャンだからどうとか、そういうことを超越するぐらいのすごいことだったと思うので、多分内面で意識が変わってると思いますね。

──アーティストによっては歌詞が書けなくなったという人や、具体的に復興へのアクションを起こす人もいました。

そうですね。影響を受けるだろうし、変わっていくだろうし、変わっていかなきゃいけないと思う反面、変わっちゃいけないなっていうところもあります。例えばある特定の人を傷付ける可能性のある言葉だとか、ちょっと不謹慎な言葉だとかっていうのも、表現として自分の信念の元に言わなきゃいけない瞬間があると思うし、それを自粛したり臆病になって抑えたりするのは、誰のためにもならないと思うので。

──それはこのアルバムのトーンにも表れている気がします。

あの、今回のアルバムの1曲目が「海と塵」って曲なんですけど。これを1曲目にするにあたっては、ちょっと考えたんですよね。ずいぶん古い曲なので震災とは関係ないんですけど、何かああいうことがあるといろんなことが結びついて受け取られてしまうっていう意味で、一瞬迷ったのを振り払わなければいけないっていうのはありましたね。

──歌い出しから「冷たい海が 僕らの頭上で波を立てていた」ですからね。

うん。ホントになんでこのタイミングでリリースすることになったんだろうなって自分でも不思議でしたけど。

──デビュー前の自主制作CD-Rに入っていた曲ですよね。今作に入れようと思った動機はなんだったんですか？

1枚目のアルバム「MY MIND WANDERS」を作る前に、もう1枚目と2枚目に入れる曲を振り分けていて、それぞれこういうアルバムを作るんだというふうに自分の中でイメージしていたので、それに従ったまでなんですね。で、2枚目のアルバムは柔らかくて豊かなものをイメージしていて、ちょっと前までは「海と塵」っていうアルバムタイトルにしようと思ってたぐらい、この曲の構造だとか雰囲気がまさにその始まりにふさわしいだろうと。

──ちなみに1枚目の「MY MIND WANDERS」はどんなイメージがあったんですか？

キーワードとしては「ソリッド」っていうのがあって、シンプルで削ぎ落した形のものを作ろうと。1枚目に収録した曲のほとんどは、リリース前にライブでやっていて、バンドでのアレンジができ上がっていたので、もうそのまま録るだけでいいというものが大半だったんです。それまでの音源はいろんなプロデューサーと組んだり、ストリングスを入れてみたりといろいろあったんですけど、そういうことではなく、「PERIDOTSはCDよりライブが100倍いい」と言うようなライブのお客さんが「ライブのまんまだ」と思ってくれるようなものを作ろうと。で、その状態から始めるしかないな、とも思って作ったのが1枚目でした。