ナタリー PowerPush - Perfume Clips
関和亮が語るPV制作の裏側
「Twinkle Snow Powdery Snow」
──「Twinkle Snow Powdery Snow」は「エレクトロ・ワールド」の世界観を引き継いだような映像ですね。
そうですね。この世界観でもう1回やれないかなって思って、一緒のスタッフで作りました。
──撮影時のエピソードは、何かありますか?
今回のコメンタリーで彼女たちも言ってるんですけど、このビデオでは3人がお芝居をしてるんですよ。合成用のスタジオで「ここ雪が降ってるんで寒いフリしてください」とか言って。でも絵がないから寒がり方の度合いがわからなくて、ちょっと寒がってる子とめっちゃ寒がってる子がいるんですよ(笑)。そういうのも3人のキャラクターが出てていいなと思いました。
──近年の関さんは「アナログな手法でアイデア勝負」みたいな作風になっているので、今になって振り返るとこの頃のフルCG映像はキャリアの中で異色な感じがしますね。
この時期にそんなことをやりすぎちゃって、だんだん飽きてセットになっていくっていう(笑)。グリーンバックで撮影するほうが大きいセットを作るより格段に安く済むんですけどね。
「チョコレイト・ディスコ」
──そういう流れもあってか、「チョコレイト・ディスコ」ではCGを一切使ってませんね。
「ディスコ」って歌ってるからそれを表現しなきゃと思ったんだけど、CGでもセットでもディスコを作るのは大変なので、自分なりに「ディスコ」っていうキーワードから連想するものを集約したらこうなりました。ミラーボールを吊るすってのもベタすぎるから、じゃあミラーボールの中に入ってもらおう、とか。
──これ、アイドルのビデオなのに冒頭30秒ずっと真っ暗で顔がわからないんですよね。
全編にかわいい顔が映ってて、みたいな映像に抵抗があったんですよ。アイドルビデオって、顔を寄りできれいに撮ったカットが入ってくるじゃないですか。何かコンセプトがあって顔の寄り使われるのであればいいんですけど、「お約束だから」って感じで脈絡なく突如入ってきますよね。そういうのがすごく嫌いだったんです。だからこの時期は、顔のアップで押してる映像はあんまりやらないようにしてました。
──とは言っても、上の人はそういうのを求めていたんじゃないかという気が(笑)。何か言われたりしなかったんですか?
そう言われて思い出すと、確かに意見はありましたね。たぶん無視してました(笑)。
──あはは(笑)。でも確かに「お約束を避けてる」という印象はあります。
そうですね。本当はレーザーなんて人の顔に当てちゃいけないのに。レーザーの会社に下見に行ったときに、自分たちで遊びで顔に当ててみたら「あ、これ面白い」ってなって。レーザー会社の人には「いや、責任は取れないですよ」って言われたんですけど。
──でも顔にガンガン当たってますよね。
レーザーって、実は目にビュッと入ったらアウトなんですよね。もちろん撮影のときは大丈夫なくらいぼかして安全を確認してるんですけど、見る人が見たらヒヤヒヤで、「マネしないでください」「CM上の演出です」ってテロップ入れなきゃいけないぐらいの映像なんですよね(笑)。
──言われてみるとそうですね。
やっぱり、楽曲がかなり狂ってるので、それに追いつくくらいの表現をしないと映像が負けちゃうぞ、っていうのは思ってましたね。
「ポリリズム」
──顔のアップは避けていたという話でしたが、「ポリリズム」はけっこうアップが多いですよね。
入れてくれって言われたんですよ(笑)。確かACのCMが決まったあとで、「ここは勝負だ」ってことで、それまでそんなこと言われなかったのにっていうような注文を、えらいいろいろ言われましたよ。
──やっぱりスタッフも、ブレイク前夜みたいな気運の高まりを感じていたんですね。
そうですね。僕自身がやってることはそんなに変わらなかったんですけど。このビデオは写真館にあるような蛇腹の大判カメラと、シフトレンズっていう、普通のビデオ撮影では使わないような機材を使ってるので、周りのピントがすごくボケてるんです。寄りのカットを入れてくれって要望に対する、僕なりのささやかな反抗で(笑)。
──これがきっかけで関さん自身の知名度も高まったのでは。
そうですね。すごく自信になりましたし。この時点ですでに、ここまで同じアーティストのビデオを作ってるって珍しいと思うんですよ。だいたいミュージックビデオの監督さんって2本とか3本やったら一旦違う人に変わるものなので。
「Baby cruising Love」
──続く「Baby cruising Love」は、そうやって自信が付いてきた中で作られたわけですね。
今振り返ってみると、自信が付いたことで作り方がうまくなったのかもですね。実際はすごく短い期間だと思うんですけど、それまでずっとがむしゃらにやっていた記憶があって、でも「ポリリズム」が出てちょっと落ち着いたんです。で、世間がPerfumeに目を向けてくれるようになったときに、次は何か仕掛けないといけないんだろうなって考えて。技術的に新しいことをしたり、目を引くようなアイデアを入れたり、何かほかと差別化できるものはないかと。
──なるほど。確かに、工夫を重視する関さんの作風は、このPVあたりから始まっているのかなという気がします。
そうですね。僕自身、映像をずっと観てるっていうのがあんまり好きじゃないんです。だから僕は観続けてもらうために、驚かせたいとか、「なんか変わってるね」って思われたいんですよね。
──光の軌跡が空中に流れていくシーンはCGですか?
CGで作りました。
──改めて観て、今のPerfumeだったら先端技術を使ってこういう表現をライブでやりそうだなと思いました(笑)。
そうですよね(笑)。実際、この頃に真鍋くんと出会うんですけど、あの光はどうやってるんだとか、どういうつもりで作ったんだとか、すごく聞かれた気がします。「あれをリアルでやりたい。ライブでやろうよ」っていう話もしてましたね。
» 「マカロニ」
- Perfume「Perfume Clips」 / 2014年2月12日発売 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ
- Perfume「Perfume Clips」初回限定盤ジャケット
- Blu-ray / 初回限定盤 [Blu-ray Disc 2枚組] / 6300円 / TKXA-1020
- DVD / 初回限定盤 [DVD 3枚組] / 5250円 / TKBA-1200
- Blu-ray / 通常盤 [Blu-ray Disc] / 4725円 / TKXA-1021
- DVD / 通常盤 [DVD 2枚組] / 3675円 / TKBA-1201
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収録内容
- リニアモーターガール
- コンピューターシティ
- エレクトロ・ワールド
- チョコレイト・ディスコ
- Twinkle Snow Powdery Snow
- ポリリズム
- Baby cruising Love
- マカロニ
- シークレットシークレット
- love the world
- Dream Fighter
- ワンルーム・ディスコ
- I still love U
- 不自然なガール
- ナチュラルに恋して
- VOICE
- ねぇ
- レーザービーム -FULL Ver.-
- GLITTER
- スパイス
- 微かなカオリ -TV Ver.-
- FAKE IT
- チョコレイト・ディスコ -Historical Live Act Version-
初回限定盤 特典DISC
- Perfume Clips 4倍速オーディオコメンタリー
- マカロニ -A-CHAN Version-
- マカロニ -KASHIYUKA Version-
- マカロニ -NOCCHI Version-
- I still love U -ネタばらしVersion-
- 微かなカオリ -縦型Version-
- TV-SPOT集(25種類)
関和亮(せきかずあき)
1976年生まれの映像作家。1998年より株式会社トリプル・オーに所属。2004年にPerfumeのシングル「モノクロームエフェクト」のジャケットを制作したことを皮切りに、PerfumeのPV監督やアートディレクションを手がけるようになる。その後、数多くのアーティストのビデオクリップ制作に携わり、2010年に公開されたサカナクション「アルクアラウンド」のPVは「第14回文化庁メディア芸術祭」のエンターテインメント部門優秀賞や「SPACE SHOWER Music Video Awards」のBEST VIDEO OF THE YEARを受賞。フォトグラファーやグラフィックデザイナーとしても活動し、NHK連続テレビ小説「おひさま」「ごちそうさん」のタイトルバックを手がけるなど幅広い活躍を見せている。
Perfume(ぱふゅーむ)
あ~ちゃん(西脇綾香)、かしゆか(樫野有香) 、のっち(大本彩乃)により2000年に広島で結成。2003年に活動拠点を東京に移してからは、プロデューサーにcapsuleの中田ヤスタカを迎え、インディーズレーベルで精力的に活動を開始。2005年にシングル「リニアモーターガール」でメジャーデビューを果たし、近未来的な世界観のサウンドとダンスで耳の肥えた音楽ファンの間でも高い評価を獲得する。2007年に「NHK環境・リサイクルキャンペーン」テレビCMに出演し、CMソング「ポリリズム」が大ヒット。テクノポップブームの火付け役となり、2008年には日本武道館、2010年には東京ドームでのワンマンライブを成功させる。2011年にはピクサー映画「カーズ2」の挿入歌&日本語吹き替え版エンディングテーマに、アメリカのスタッフによる指名で「ポリリズム」が抜擢。2012年にユニバーサルJに移籍してアルバム「JPN」のiTunes Store世界配信を実施し、同年4月に「キリンチューハイ 氷結」のCMソング「Spring of Life」のCDシングルをリリースする。10月にアジア4カ国で行われた初の海外ツアーは大成功のうち終了し、翌2013年にはヨーロッパ3カ国での単独公演を実施。フランス・カンヌで開催された世界最大の広告祭「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」に日本人アーティストとして初めてゲストとして招待され、プロジェクションマッピングを駆使したパフォーマンスで喝采を浴びる。同年10月にアルバム「LEVEL3」、11月にシングル「Sweet Refrain」をリリース。12月に東京ドーム、大阪・京セラドーム大阪にて計4日間の単独公演を成功させた。2014年2月には初のビデオクリップ集「Perfume Clips」をリリース。