Perfume「Future Pop」ロングインタビュー|ようやく到達した“フューチャーポップ”という境地

「Reframe」を終えて得たもの

──今「Reframe」の話が少し出ましたが、全編テクノロジーを活用した演出だったり、途中にMCがなかったりといろいろ普段と違う構成で行われたあのライブについて、終えてみた感想を聞かせてください。

のっち やったことがないことをやってるので、いつものライブとは違う緊張感がありました。あのとき3人が乗ってた箱って、中に人が入って動かしてるんですよ。中の人が真っ暗で何も見えない状態で箱を動かすのってタイミングが難しくて、リハーサルを何回もやらせてもらって、どうすればきれいに見えるかずっと検証してたけど、結局うまくいかなくて最後はぶっつけ本番みたいに挑んだんです。ステージにいるのは3人だけに見えるけど、スタッフさんとすごく呼吸を合わせながらやったパフォーマンスでした。Perfumeのライブって、ステージの上にほかの人が立っているってことはほとんどないもんね。

あ~ちゃん アメリカツアーのとき、小さい会場ではLEDを自動で動かす機械を搬入できないから、人が入って押してくれたことはあるけど、あそこまで大きなものを人が動かすっていうのはほとんど経験したことないよね。

──セットリストもかなり異色でしたが、選曲にはメンバーも関わっていたんですか?

あ~ちゃん 私たちも一緒に考えました。朗読みたいに歌詞を読むパートで、次に「エレクトロ・ワールド」が来たほうがいいのか、それとも「TOKYO GIRL」?とかみんなで相談してました。

──2008年発売の1stオリジナルアルバム「GAME」に収録されていた「Butterfly」に、10年経って初めて振り付けが付いたのも驚きでした。

のっち ねー、前は着替えのときのBGMって扱いだったのに。今回歌ってみて「この曲こんなに歌ってたんだ」って意外でした。

──「Butterfly」の選曲はメンバー発案じゃなさそうだなと思ってたんですが。

のっち

のっち するどい!

かしゆか これはMIKIKO先生が選んだ曲だよね。

のっち この年齢になって「Butterfly」がすごくマッチしてたのも不思議。

かしゆか 振りも付いてない昔の曲を、今ああいう形で披露できるっていうのがすごくうれしかったです。ライブに関わったみんながPerfumeの曲をすごく大切にしてくれてるのを感じて。

──観客が全員着席しているライブというのもPerfumeとしては珍しかったですよね。立って踊りながら観ているときとは反応も違ったのでは。

あ~ちゃん 同じタイミングでも、日によって拍手があったりなかったりするんですよ。ライブに浸ってたり圧倒されてる人が手を叩き始めるまでの時間っていろいろあるので、私たちが作る間の長さによっては拍手が起こらないまま次に進むこともあって、すごく間の勉強にもなりました。あと、お客さんにも緊張感があったから「拍手していいのか?」みたいな雰囲気になってて、誰かが率先して叩き始めないと拍手しづらい、みたいな独特な雰囲気もありましたね。

かしゆか 会場にすごく緊迫感があったから、最初に3人が一瞬出てきたときにお客さんが息を呑むような声が聞こえてきて、こんなに静かなライブは初めてだったからすごく面白かったです。

あ~ちゃん 「Reframe」はすごくやりがいがありましたね。ああいうライブは私たちが前からやりたかったことでもあったし、実際にやってみて「こういう見せ方のライブもできるんだ」っていう自分たちの可能性も知れたし。「Perfumeはこうでなくちゃいけない」っていう固定観念がちょっとずつ崩れていて、今の私たちはすごくいい状態だと思います。

──固定観念と言えば、先日から放送されているTULLY'S COFFEEのCMで、すごく短い時間とは言えPerfumeがジャズで踊っているのがとても新鮮でしたね。たぶん昔のPerfumeだったらこういうCMは作られなかった気がして。世間のイメージが「Perfume=テクノ」からもっと広いものに拡大しているんだろうなと思いました。

のっち 確かに、自分たちのじゃない曲が流れるCMっていうのもイメージないですよね。

──そうそう。だからCM出演の件をニュースにしたときに、「ニューアルバムからどの曲が使われるんだろう?」っていう読者の反応はけっこうありました。

のっち ああ、タイミングがタイミングですもんね。

あ~ちゃん でもこのCM、撮ったのはけっこう前だったんだよね。

かしゆか 曲に合わせて踊ったんですけど、超大変なんですよアレ(笑)。

あ~ちゃん リズムがない曲だから、曲を勝手に声に出して解釈して覚えたんだよね。

「フューチャーポップと呼ばれるには早すぎた」という中田ヤスタカの思い

──ではここから、そのニューアルバムの話をしようと思います。「If you wanna」「無限未来」とシングル曲ではフューチャーベースを打ち出してきたし、アルバムタイトルが「Future Pop」だしで、今回はフューチャーベースを前面に出した内容になるのかと予想していたら、間違ってはいないものの、非常にポップな作品に仕上げられていて驚きました。

あ~ちゃん おー。やっぱりそう思われるんですね。

のっち オラもおでれえたです(笑)。

──前作「COSMIC EXPLORER」はSF映画を観るような感覚の壮大でコンセプチュアルなアルバム、その前の「LEVEL3」はダンスにフォーカスを当てた作品と、近年はアルバムごとにガラッと方向性を変えている印象がありますが、「FUTURE EXPERIMENT」や「Reframe」のような最近の実験的な活動を踏まえると、このアルバムのアプローチは意外に思う人が多そうな気がします。

のっち ホントにその通りで。このアルバムを作り始める前に最後に録った曲が「FUSION」だったから、中田(ヤスタカ)さんは次のアルバムを「FUSION」的なハードな路線で作るんだろうなって腹をくくってたんですよ。そしたらアルバムのレコーディングは1曲目が「天空」で。「カッコいい曲を歌うぞ!」って気持ちでレコーディングに行ったのに、すごくかわいい曲だったからすごく意外で、「あー、こういう曲もスパイスとして入れるんだな」って思ってました。でもその後も「Let Me Know」「Tiny Baby」「超来輪」とかわいらしい曲ばっかりレコーディングが続いて、ホントに予想外で。

かしゆか 中田さんは「If you wanna」のシングルを作るときに「Perfumeではフューチャーベースをやっていきたい」と言っていたんですけど、アルバムの方向性を話し合う恒例の食事会でも「次のアルバムはフューチャーベースをメインに」みたいに言われたんです。だからそのときは「なるほど、じゃあ今回は歌モノがすごく少なくて、レコ—ディングで歌うところは全然ないのかな」と思ったし、アルバム曲が歌モノばっかりなのには驚きましたね(笑)。

──どうしてこういう内容になったんでしょうね。

かしゆか たぶん中田さんは、既存のフューチャーベースをそのままなぞることにこだわってるわけじゃなくて、フューチャーベースを参考にして“最新のPerfume”を作ろうとしてくれたんだと思います。

あ~ちゃん 日本であまり知られていないジャンルの音楽をJ-POPの中に落とし込むのが、中田さんは上手なんでしょうね。中田さんって「自分が聴きたい音楽がそこにないから自分で作る」っていう人だから、フューチャーベースをやったときに、それでもポップスでないと意味がないって感覚があるからこういう曲が生まれたんだろうなと思います。

──僕は「Future Pop」というタイトルを初めて聞いたときに、Perfumeはある意味メジャーデビュー前からフューチャーポップであり続けたのに、満を持してこのタイミングでアルバムタイトルにしたというのは、中田さん的によっぽどの自信作なんだろうなと思ったんですよ。

あ~ちゃん えー、すごい!

のっち すごいね。いっぱい取材受けてるけど、それ言われたの初めてです。

あ~ちゃん 中田さんは昔、レビューか何かで「Perfumeの曲は“フューチャーポップ”って感じ」って書かれてるのを読んだんですって。でもそのときは「まだ自分の作品はフューチャーポップにはなりきれていない。そう呼ばれるには早すぎる」と思ったと。それ以来、自分が納得するフューチャーポップを作りたいと思いながら曲を書いてきたけど、もう今のPerfumeはフューチャーポップになったんじゃないかって自信を持って思えるようになったから、今回それをタイトルにしてくれたそうです。

──それ、ビックリする話ですね。中田さんが長年Perfumeでやりたかったことに、このアルバムでついに到達したと。

あ~ちゃん すごい向上心ですよね。みんなが認めてくれるのに、自分がそう思える日まではこの言葉を使わないようにしてきてたって。中田さんの中にも「Perfumeを通して叶えたい夢や目標」があったっていうのを、初めて本人の口から聞いてすごくうれしかったです。

のっち その話を聞いて「FUSION」と「天空」みたいな全然違うタイプの曲が同じアルバムに入ってる意味が、なんとなく理解できた気がするんですよ。Perfumeは今までいろんなタイプの曲をやってきたけど、どれも“フューチャーポップ”だったから。

Perfume「Future Pop」
2018年8月15日発売 / UNIVERSAL J
Perfume「Future Pop」完全生産限定盤Blu-ray

完全生産限定盤
[CD+Blu-ray+ステッカー]
4980円 / UPCP-9020

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Perfume「Future Pop」完全生産限定盤DVD

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Perfume「Future Pop」通常盤Blu-ray

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CD収録曲
  1. Start-Up
  2. Future Pop
  3. If you wanna
  4. TOKYO GIRL
  5. FUSION
  6. Tiny Baby
  7. Let Me Know
  8. 超来輪
  9. 無限未来
  10. 宝石の雨
  11. 天空
  12. Everyday
完全生産限定盤Blu-ray / DVD収録内容
  • TOKYO GIRL -Video Clip-
  • If you wanna -Video Clip-
  • Everyday -Video Clip-
  • 無限未来 -Video Clip-
  • Let Me Know -Video Clip-
  • Let Me Know -メイキング映像-
  • TOKYO GIRL -発売記念 Special Live-
  • If you wanna -発売記念 Special Live-
  • TOKYO GIRL -2017/12/31 第68回NHK紅白歌合戦-
  • FUSION -Perfume x TECHNOLOGY presents "Reframe"-
  • Perfumeのただただラジオが好きだからレイディオ! 3
通常盤Blu-ray / DVD収録内容
  • TOKYO GIRL -Video Clip-
  • If you wanna -Video Clip-
  • Everyday -Video Clip-
  • 無限未来 -Video Clip-
  • Let Me Know -Video Clip-
  • Perfumeのただただラジオが好きだからレイディオ! 3
ツアー情報
Perfume 7th Tour 2018 「FUTURE POP」
  • 2018年9月21日(金) 長野県 ビッグハット
  • 2018年9月22日(土) 長野県 ビッグハット
  • 2018年9月29日(土) 大阪府 大阪城ホール
  • 2018年9月30日(日) 大阪府 大阪城ホール
  • 2018年10月6日(土) 青森県 盛運輸アリーナ
  • 2018年10月7日(日) 青森県 盛運輸アリーナ
  • 2018年10月13日(土) 静岡県 エコパアリーナ
  • 2018年10月14日(日) 静岡県 エコパアリーナ
  • 2018年10月24日(水) 徳島県 アスティとくしま
  • 2018年10月25日(木) 徳島県 アスティとくしま
  • 2018年11月3日(土・祝) 北海道 真駒内セキスイハイムアイスアリーナ
  • 2018年11月4日(日) 北海道 真駒内セキスイハイムアイスアリーナ
  • 2018年11月19日(月) 愛知県 日本ガイシホール
  • 2018年11月20日(火) 愛知県 日本ガイシホール
  • 2018年12月11日(火) 神奈川県 横浜アリーナ
  • 2018年12月12日(水) 神奈川県 横浜アリーナ
  • 2018年12月23日(日・祝) 福岡県 マリンメッセ福岡
  • 2018年12月24日(月・振休) 福岡県 マリンメッセ福岡
Perfume(パフューム)

あ~ちゃん(西脇綾香)、かしゆか(樫野有香)、のっち(大本彩乃)により2000年に広島で結成。2003年に活動拠点を東京に移してからは、プロデューサーにcapsuleの中田ヤスタカを迎え、インディーズレーベルで精力的に活動を開始。2005年にシングル「リニアモーターガール」でメジャーデビューを果たし、近未来的な世界観のサウンドとダンスで耳の肥えた音楽ファンの間でも高い評価を獲得する。2007年に「NHK環境・リサイクルキャンペーン」テレビCMに出演し、CMソング「ポリリズム」が大ヒット。テクノポップブームの火付け役となり、2008年には日本武道館、2010年には東京ドームでのワンマンライブを成功させる。

2011年にはピクサー映画「カーズ2」の挿入歌&日本語吹き替え版エンディングテーマに、アメリカのスタッフによる指名で「ポリリズム」が採用される。2012年10月にアジア4カ国で初の海外ツアーを成功させる。翌2013年にはヨーロッパ3カ国での単独公演を開催。フランス・カンヌで行われた世界最大の広告祭「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」に日本人アーティスト初のゲストとして招待され、プロジェクションマッピングを駆使したパフォーマンスで喝采を浴びる。2015年にはアメリカ・テキサス州オースティンで開催されたの世界最大規模のフェスティバル「SXSW 2015」に出演し、インタラクティブメディアの祭典「SXSW Interactive」のヘッドライナーを務めた。同年10月にワールドツアーの様子を追った初のドキュメンタリー映画 「WE ARE Perfume-WORLD TOUR 3rd DOCUMENT」を日米同時公開。2018年8月にオリジナルアルバム「Future Pop」をリリースした。