「ちはやふる」に共感するところは多い

のっち　あとはやっぱり「FLASH」ですね。もうめっちゃ好きです。

かしゆか　アルバムミックスは映画で流れているものとは全然違うアレンジになってるんです。映画のほうの「FLASH」は初回限定特典のCDに入ってて。

──「FLASH」がCDになるのはこれが初めてなのにアルバム本編には別バージョンが入っていて、オリジナルバージョンは特典CDに収録って、ちょっと不思議な仕様ですよね。これの逆で、特典CDにリミックスが入るというのならわかりますが。

かしゆか　でしょう？（笑） 二転三転ありまして。中田さんの「よりよくしたい気持ち」の強さでこうなりました。

のっち　そうなんです。

かしゆか　映画用に作ってた「FLASH」が完成したあとで、中田さんから「アルバムを作るまでにもうちょっと変えてもいい？」って聞かれて、「ちょっとならどうぞ」ってことになったんです。たぶん周りとの統一感を出すために少し手を入れるんだろうな、くらいに思ったんですけど、できあがったのを聴いたらあまりに違いすぎて（笑）。

のっち　私たちの中で「FLASH」はシングル曲っていう位置付けです。「カップリングにラジオ番組が収録されたシングルCDが初回限定盤にだけ付く」っていう（笑）。

──「FLASH」の歌詞は「ちはやふる」の世界観にかなり寄り添った内容ですよね。きっと中田さんも「ちはやふる」のファンだったんだろうなと思いました。

かしゆか　まだ音が入ってない状態の映画を横で観ながら曲を書いたって言ってました。原作を読んでないのにここまで「ちはやふる」の魅力を感じ取れてくれたっていうのが、すごくうれしいですよね。

のっち　あ、そうなんだ！ 読んで書いたんだと思ってた！ すごーい！

かしゆか　書き下ろしのお話があった時点で読んでなかったのに、30巻以上ある原作をそんなに一瞬で読んでたらすごいよね！ どうなんでしょ（笑）。

──Pefumeの皆さんは「ちはやふる」の原作マンガのファンだったんですよね。その映画主題歌を担当するのはやっぱり感慨深かったのでは。

かしゆか　そうですね。ただ、お話をいただいたのはものすごくうれしかったんですけど、「あの世界観に私たちの曲が合うのかな？」っていうのがずっと不安だったんです。でも小泉（徳宏）監督が「現代から見たら百人一首は古典だけど、当時は歌を詠むことが最先端だったはずだから、映画にするなら今一番新しいものが合うんじゃないか」って言ってくださって、それを聞いてホッとしたんです。納得がいったというか。

あ～ちゃん　和のテイストと電子的なダンスミュージックが合うとは思わないもんね。Perfumeの曲が流れるの、最初は想像がつかなかった。

のっち　アニメのほうの主題歌はみんなで夢を追いかけるイメージの青春ロックだったから、Perfumeの曲はどうなるんだろうと思ったら、「試合中の鋭い眼光」みたいなイメージで、「それをテーマにするんだ！」ってびっくりしました。

──皆さんはPerfumeのサウンドと映画の相性を心配していたみたいですが、Perfumeのダンスと競技かるたには共通点があるんじゃないかなって、僕は映画を観ながら思ったんです。簡単そうに思われがちだけど、未経験者にはまったくわからないような細かい部分を研ぎ澄ませながら常に勝負しているところとか。

一同　ああー。

──きっと皆さんがあの映画を観てシンパシーを感じる部分はいろいろとあったんじゃないかなと思ってました。

かしゆか　ダンスとの共通点っていうのは考えてなくて、それを言われたのは初めてだからびっくりしました。でも確かにライブのことを考えると、その瞬間にかける思いとか、みんなで一緒に気持ちを重ねていくところとか、共感するところはすごくありますね。だからこの作品に心を動かされたんだろうな。

あ～ちゃん　あと映画で描かれてる競技かるたって、それぞれ1人で戦ってるんだけど、出場者みんながかるたが好きでそれぞれを尊敬していて。あれはPerfumeダンスコンテストをこれまで3回やってきて感じた雰囲気と同じだよね。

かしゆか　わかる！

あ～ちゃん　ダンスコンテストに出てるみんなはお互いライバル同士のはずなのに、みんなで一緒にダンスを教え合ったり、本番中に横でエールを贈ったりしてたんですよ。言葉が通じない外国の人に「大丈夫！ がんばって！」ってジェスチャーで伝えたりしてて、すごい感動的だったんだよね。

かしゆか　「ちはやふる」でも、みんなA級とかクイーンを目指す敵同士なのに、戦いながらふと「ここにいる人はみんなかるたが好きな人だ！」って言い始める（笑）。あの感じはダンスコンテストに通じるね。

あ～ちゃん　だから、踊ることが好きだっていう人のダンス見てるとすごい楽しい。

のっち　わかるわかる。「あの人、絶対ダンス好きだよね」ってよく言う。

かしゆか　やっぱりそういう人には自然と目がいっちゃうもんね。

まだまだ未熟だなって思い知らされました

──「FLASH」のミュージックビデオはカンフーの演舞のようなイメージですよね。今までもPerfumeはダンスをメインにしたMVを作ってきましたが、そのどれともテイストが違うクールな映像だなと思いました。

あ～ちゃん　これは撮影が大変でしたね。映像の変化はカメラの位置を近付けるか離れるか、照明を明るくするか暗くするかだけで、あとは自分たちのダンスだけで見せていく感じだったんです。シンプルだからこそカメラや照明がすごく重要で、照明をどうするのかが全然決まらなくて前日の深夜3時にセットを1回全部バラして組み直したんですよ。だからスタートから3時間押しっていう。

のっち　楽屋で待ってたんだよね。

あ～ちゃん　その待ち時間に「押してるから絶対にミスできない」って焦ってきちゃって、私たちはひたすら練習してました。でも練習すればするほど変なクセがいっぱい付いちゃうし。あんまり踊り込みすぎると、振り付けを自分のものにしてしまって3人の動きがそろわなくなってきたりして。

──へー、そういうものなんですか。

あ～ちゃん　ある程度は緊張感を持って踊ったほうがよかったりするんです。動きにキレが出るし。だから楽屋での時間がすごく悩ましくて。撮影が始まってからもものすごい緊張感だったし、撮る回数もすごく多かったから大変でしたねー。

かしゆか　今まではダンスビデオっていっても、歌ってるだけの寄りのカットがけっこうあったんですけど、今回は顔だけのアップはまったくなくてひたすら踊り続けてますからね。ダンスの型も普段と違うから、いつもなら止めないところで踏ん張らなきゃいけなかったりして、使ったことがない筋肉を使う動きが1日中続いて大変でした。

──それはつらそうですね。

かしゆか　光る棒で戦うシーンの練習をしたときに殺陣の先生が来てくれて、「練習するときにヒールを履いてるとつらいのでスニーカーを履きましょう」ってことになったんですけど、それでも足をつっちゃって。スニーカーなのにつるなんて初めてだったからびっくりしました（笑）。最後のピタッと止まるシーンを撮るときにはもう朝方だったんですけど、あ～ちゃんは足が痙攣しちゃってうまく止まれなくて。

のっち　ダンスっていうより修行でしたね。

あ～ちゃん　やっぱりああいう格闘技の動きはその道のプロの人がいるんだし、それを急にやろうとしたらそりゃこうなるわなって（笑）。まだまだ未熟だなって思い知らされて、すごくいい経験でした。