ナタリー PowerPush - Perfume
海外進出を経て新たな挑戦 高純度ダンスアルバム「LEVEL3」
昨年のレコード会社移籍をきっかけに、海外での本格的な活動をスタートさせたPerfume。彼女たちはその後アジアとヨーロッパでワンマンツアーを成功させ、カンヌの広告祭にて圧倒的なパフォーマンスを披露するなど、世界進出という大きな夢を着実に実現させつつある。
10月2日に発売されたレーベル移籍後初のオリジナルアルバム「LEVEL3」は、彼女たちが世界へと羽ばたいてからの約2年間の活動を刻み込んだ1枚。これまでにないほどフロア仕様なダンストラックが多くを占める内容でありながら、どの曲もPerfumeが歌う必然性を明確に感じさせる。これはまさに海外進出を経て成長した、今の彼女たちだからこそ作ることができた作品だ。
今回のインタビューではアルバム「LEVEL3」に込められた思いや、12月に東京ドームと大阪・京セラドーム大阪で開催される4DAYSライブへの意気込みなどについて、メンバー3人に話を聞いた。
取材・文 / 橋本尚平 撮影 / 井出眞諭
新しい挑戦をできるってことがうれしい
──完成したアルバムを聴いてどう感じましたか?
のっち 最初はじっと動かずに聴くつもりだったんですけど、中盤あたりから体がノリノリになってしまって(笑)。それくらい踊れるアルバムですよね。自分がレコーディングしたんだから知ってるはずの曲なのに、最終的に全然知らない曲に変わってて、「この曲なんだろう? ……あ、『Clockwork』か!」って、なんかイントロクイズみたいで楽しかったです(笑)。きっと中田(ヤスタカ)さんもかなり考えてこのアルバムを作ったんだろうなと思います。レコーディングした曲が入ってなかったり、入れるはずじゃなかった「ポイント」が入ってたり。ほかと雰囲気が違う「未来のミュージアム」がこの位置に入ったのも、曲順を考え抜いてこうなったんだろうなって。
あ~ちゃん 今回は中田さんが自分のスタジオで試聴会を開いてくださって、完成したアルバムをみんなで一緒に聴いたんですよ。そこで純粋に音だけに向き合って聴いたら、スタジオの音響がいいのも相まって「最っ高のアルバムじゃ!」って感動しました! シングル曲もダンスアルバムというコンセプトに寄せたアレンジに変わってるし、超オリジナルだと思いました。もう「オリジナルアルバム」ってタイトルでいいんじゃないかってくらい(笑)。私は今まで、シングル曲にアルバム用のアレンジをたくさん加えることに懸念があったんですよ。でも今回のリミックスは聴いてるとスッと入ってきて、全然嫌じゃないどころか最高!って思えたんです。あとどの曲もなかなかサビに行かないんですよね。ワンクッション、ツークッション入れて焦らしながら「まだ我慢するんだよ。ここいいでしょ? ほら、ストイックでしょ? こそばゆい? そろそろ盛り上がるよ?」みたいな感じでわかりやすくバーンッ!って。私は普段ダンスミュージックを全然聴かないんですけど、そういう人でも聴いていて楽しいと思います。
かしゆか こんなふうにPerfumeとして新しい挑戦をできるっていうのが、すごくうれしいですね。私たちの曲は今まで1曲単位でシンプルに完結しているものが多かったんですけど、音楽的にこれだけ遊べるようになってきたっていうのは、きっと今のPerfumeだからこそできることなんじゃないかなって、すごく感じるんです。
「ライブ向けのアルバムを作ってほしい」って話したんです
──皆さんがおっしゃるように、このアルバムは今までにないほどダンサブルですよね。Perfumeの曲は以前からよく「フロア対応」と言われていましたけど、ここまで振り切れたダンスミュージックはなかったと思います。今作にも収録される「Spending all my time」がシングル発売された際のインタビュー(参照:Perfume「Spending all my time」インタビュー)で「あまりにEDMすぎるので中田さんに初めて意見した」という話をしていましたが、今のお話を聞いた限りでは、今回は皆さんの中にそういう違和感はなかったみたいですね。
あ~ちゃん そうですね。もしかしたらレコーディングした順番の影響も大きかったのかもしれないです。一番ダンスミュージックな「Party Maker」を早いうちに歌入れしたので、そのおかげで次にどんな曲が出てきても全然大丈夫でした(笑)。
──どうして今回のアルバムはこういう内容になったのか、中田さんから理由を聞いたりしてますか?
かしゆか アルバムを作るにあたってスタッフさんに、中田さん含めてのごはん会を開いていただいて、そのときに「ライブに向けてのアルバムを作ってもらいたいです」って話をしたんです。「ライブでこういうことができたらいいなと思ってるんですよ」とか、「中田さんだったら、Perfumeのライブでどんな曲を聴きたいですか?」とか。たぶんそこでの話から中田さんがイメージして曲を作ってくれたんだと思います。
あ~ちゃん そのごはん会ではけっこう具体的なライブの演出についても話したんですよ。で、実際にそれができる曲が欲しいって。そのせいかすごく長くなっちゃった曲もあるんですけど(笑)、ライブでどういうふうにお見せできるか本当に楽しみです。
──なるほど。確かに「LEVEL3」は今までのアルバムの中で一番「ライブを観たくなるアルバム」という印象があります。実際に本人たちにとっても「ライブでやりがいがあるアルバム」になりましたか?
あ~ちゃん そうですね。余白がめっちゃあるんで。
──余白?
あ~ちゃん 自分たちが参加してない部分がめっちゃあるんで、そのぶんなんでもできます(笑)。
のっち 確かに!(笑)
あ~ちゃん でも、どんなパフォーマンスでもできるからこそ、何をするのかが重要になると思うんです。やっぱりいい意味でみんなの期待を裏切りたいし、(振付の)MIKIKO先生が何を提案してくれるかとか、自分たち自身もすごく楽しみにしてます。
- ニューアルバム「LEVEL3」 / 2013年10月2日発売 / UNIVERSAL J
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 3900円 / UPCP-9005
- 通常盤 [CD] / 3059円 / UPCP-1001
CD収録曲
- Enter the Sphere
- Spring of Life(Album-mix)
- Magic of Love(Album-mix)
- Clockwork
- 1mm
- 未来のミュージアム
- Party Maker
- ふりかえるといるよ
- ポイント
- だいじょばない
- Handy Man
- Sleeping Beauty
- Spending all my time(Album-mix)
- Dream Land
初回限定盤DVD収録内容
- 1mm -Video Clip-
- 「ずっと好きだったんじゃけぇ~さすらいの麺カタPerfume FES!!」メモリアル♡
- 「Perfumeのただただラジオが好きだからレイディオ! 」
Perfume(ぱふゅーむ)
かしゆか(樫野有香) 、のっち(大本彩乃)、あ~ちゃん(西脇綾香)により2000年に広島で結成。2003年に活動拠点を東京に移してからは、プロデューサーにcapsuleの中田ヤスタカを迎え、インディーズレーベルで精力的に活動を開始。2005年にシングル「リニアモーターガール」でメジャーデビューを果たし、近未来的な世界観のサウンドとダンスで耳の肥えた音楽ファンの間でも高い評価を獲得する。2007年に「NHK環境・リサイクルキャンペーン」テレビCMに出演し、CMソング「ポリリズム」が大ヒット。テクノポップブームの火付け役となり、2008年には日本武道館、2010年には東京ドームでのワンマンライブを成功させる。2011年にはピクサー映画「カーズ2」の挿入歌&日本語吹き替え版エンディングテーマに、アメリカのスタッフによる指名で「ポリリズム」が抜擢。2012年にユニバーサルJに移籍してアルバム「JPN」のiTunes Store世界配信を実施し、同年4月に「キリンチューハイ 氷結」のCMソング「Spring of Life」のCDシングルをリリースする。10月にアジア4カ国で行われた初の海外ツアーは大成功のうち終了し、翌2013年にはヨーロッパ3カ国での単独公演を実施。フランス・カンヌで開催された世界最大の広告祭「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」に日本人アーティストとして初めてゲストとして招待され、プロジェクションマッピングを駆使したパフォーマンスで喝采を浴びる。同年10月にアルバム「LEVEL3」をリリース。12月に東京ドーム、大阪・京セラドーム大阪にて計4日間の単独公演を予定している。