ナタリー PowerPush - Perfume
またひとつ夢が実現「未来のミュージアム」
1万人に1人くらいの奇跡的な確率だった
──ここからは昨年行った海外ツアーについて聞かせてください。4カ国回った感想はどうでしたか?
のっち 始まる前は未知の世界に飛び込むような感じでした。違う国の人の前でライブをすることがどうも想像つかなくって、果たして本当に曲を知ってるのかとか、ずっと不安だったんです。でも行ってみるとそこにはPerfumeを本当に愛してくれて、Perfumeを待っててくれた方々がたくさんいて。だからほかにも待ってくれてる人がもっとたくさんいるかもしれない、もっといろんなところ行きたいという新しい夢ができました。
──会場によって盛り上がり方も違いました?
かしゆか やっぱりそれぞれちょっとずつ違いました。私たちも、国が違うとどういうリアクションになるかわからないってことをよく考えてセットリストを作って行ったので、だいたいは安心してできたんですけど。台湾は親日家が多くて日本のことをよく知ってくれてたし、香港もそうだったし、韓国は文化的にも日本と近いし、どこもうまいこといっちゃって、韓国公演が終わったあとに「やりたいことがちゃんとできたいいライブになったね!」「よし、じゃあラストのシンガポールもこの意気で!」みたいな気持ちになってたら、シンガポールはぜんぜん日本語が通じなくて、「あ、どうしよう。伝わらない……」って動揺して。
──ああー(笑)。
かしゆか それを日本でライブビューイングしちゃった(笑)。だから日本の皆さんに「違う! 違うんです! もうちょっとほかの国は盛り上がったんです!」って伝えたかったんですよ。
──いや、それでも十分コミュニケーションは取れていたと思いますよ。現地のファンとの言葉の壁をどうやって越えるかと思ったら、日本語ができる観客にマイクを渡して通訳をお願いしていたので、すごいことするなと驚きました(笑)。
あ~ちゃん ONE OK ROCKがアジアを回ったときに、お客さんにマイクを渡してその場で訳してもらったっていう話を聞いて、「マジか! 超すごい!」と思ったので、「そのアイデアちょっとのっかってもいい?」って聞いて(笑)。でもそうは言っても、そこまでしゃべれる人が会場にいるかどうかは当日までわからないから、できないかもしれないとも思ってたんですけど。
のっち お客さんだもんねー。
あ~ちゃん 現に、台湾では日本語を訳すのがすごく上手だった人がたまたまいたんですけど、香港でマイクを渡した人はよく伝わってなかったのか、私たちがしゃべってることにただ「あはは(笑)」て笑ってて、私たちが言ったことに日本語で返すんですよ。「いやいや、それをね、訳してほしいんですが……」って(笑)。
かしゆか 通訳してほしかったのに、1対1のインタビューになっちゃった(笑)。
あ~ちゃん だから香港のお客さんは、何を言ってるのかまったくわからないっていう謎の状態になっちゃって。「なんでマイク渡したんや」っていう(笑)。でもシンガポールはそのやり方がすごくうまくいって。
のっち 通訳してもらったウメさんがね! 超すごかったんだよね。
──完全に同時通訳できる人がたまたま最前列で観ていたっていうのもすごい偶然ですよね。
あ~ちゃん シンガポールの言葉は「シングリッシュ」って言って、いろんな国の言葉が混ざった英語なんです。それを習得していて、プラス日本語もすっごい上手な人って、1万人に1人くらいの確率らしいんですよ。だからシンガポールのスタッフの偉い人が打ち上げで「ウメさんを引き抜く!」とか言ってて(笑)。そのくらいレアな人があそこにいたのは奇跡だと思うし、そもそもそんな人がPerfumeのファンでいてくれるってことも奇跡だと思いました。
香港公演の「Dream Fighter」が思い出させてくれた気持ち
──ツアーは大きなトラブルなどもなく終えることができたんですか?
あ~ちゃん 香港のライブで、「Dream Fighter」をやっている途中から照明が全部落ちてピンライトしかつかなくなっちゃったんですよ。今回のアジアツアーはいろんな機材を持ち込むことができないので、セットもほとんどないシンプルな演出でライブをしたんですけど、なのに照明の力に頼ることもできなくなってしまって……。ピンライト1本だけになるとすごく踊りにくいんですよね。
のっち まぶしくて、目潰しされながら踊ってるみたいなんだよね(笑)。
あ~ちゃん うん。何も見えないし、どこを見ていいかわかんないから感覚がわからなくなっちゃう。でも、明かりがバッて消えた瞬間、きっとこの舞台の下でスタッフさんがどうにか直らないかとすごい顔で走りまわってるんだろうなとか、袖にいるマネージャーさんはどんな顔してるかなとか、PAの前に立ってるMIKIKO先生はどんな気持ちなんだろうとか、そういうことを考えて、「崩れる訳にはいかない! 大丈夫、歌える」って強い気持ちになって。私たちはそういう「ヤバい!」って状況のときこそ燃えるので、なんかひさびさにその感じになってすごくアグレッシブになれました。
──でもそれってけっこうピンチですよね。
あ~ちゃん 私たちに関わってくださるいろんな方が観にきてくれてたので、そんなライブで照明が落ちてしまったのはすごく残念でした。でも、この日にやったすっごくすっごくシンプルな形での「Dream Fighter」はPerfumeの懐かしい顔を見れたなあと思ってます。最近はライブをやる上でいろんなことが気になっちゃって考えすぎるようになってたけど、ライブを始めたばかりの頃のシンプルな気持ちを思い出させてくれて。ライブが終わったあとスタッフの人が「本当にごめんね」って言ってくれたんですけど、私は「そんなのはぜんぜんミスじゃない、ライブはそのときに起きたことがすべてで、そのときにしか起きないことだからライブなんだ」って思って。あの日のことはみんなあんまり言わないけど、でも私にはすごく印象的な出来事でした。
──であれば、きっとお客さんも「いいものを観た」と思って帰ったと思いますよ。
あ~ちゃん ですかねー。だといいですねー。このツアーでは毎回最後にレコード会社移籍のことをお客さんに説明したんですけど、長い話になっちゃうしと思って、全公演その国の言葉に訳してもらってステージの後ろに字幕を映すことにしたんですよ。そのはずが、香港ではそれもつかなくなっちゃって、あの場にいた人は「日本語すっごいしゃべってるけど、何言ってるんだろ?」ってなってたんですよね。でもその後、香港に住んでらっしゃる日本語ができる方が、私が何を話してたかを全部訳してネットに載せてくれて、「ライブに来た人はここを見れば何をしゃべってたかわかるよ」っていう情報を広げてくれたらしくて。自分たちが伝えたいことを汲み取って動いてくれる人が、日本だけじゃなくて海外にもいてくれてるなんて本当にありがたいなと思いました。
- ニューシングル「未来のミュージアム」 / 2013年2月27日発売 / UNIVERSAL J
- 「初回限定盤」[CD+DVD] / 1500円 / UPCP-9003
- 「通常盤」[CD] / 1000円 / UPCP-5003
CD収録曲
- 未来のミュージアム
- だいじょばない
- 未来のミュージアム -Original Instrumental-
- だいじょばない -Original Instrumental-
初回限定盤DVD収録内容
- 未来のミュージアム -Video Clip-
Perfume(ぱふゅーむ)
かしゆか(樫野有香) 、のっち(大本彩乃)、あ~ちゃん(西脇綾香)により2000年に広島で結成。2003年に活動拠点を東京に移してからは、プロデューサーにcapsuleの中田ヤスタカを迎え、インディーズレーベルで精力的に活動を開始。2005年にシングル「リニアモーターガール」でメジャーデビューを果たし、近未来的な世界観のサウンドとダンスで耳の肥えた音楽ファンの間でも高い評価を獲得する。2007年に「NHK環境・リサイクルキャンペーン」テレビCMに出演し、CMソング「ポリリズム」が大ヒット。テクノポップブームの火付け役となり、2008年には日本武道館、2010年には東京ドームでのワンマンライブを成功させる。2011年にはピクサー映画「カーズ2」の挿入歌&日本語吹き替え版エンディングテーマに、アメリカのスタッフによる指名で「ポリリズム」が抜擢。2012年にユニバーサルJに移籍してアルバム「JPN」のiTunes Store世界配信を実施し、同年4月に「キリンチューハイ 氷結」のCMソング「Spring of Life」のCDシングルをリリースする。10月にアジア4カ国で行われた初の海外ツアーは大成功のうち終了。2013年2月には「映画ドラえもん のび太のひみつ道具博物館(ミュージアム)」の主題歌「未来のミュージアム」をCDシングルとしてリリースする。