ナタリー PowerPush - Perfume
ここまでやっちゃっても、私たちはぶれない
世界進出を意識した活動を本格的にスタートさせつつも、「海外の人たちにも今のそのままの私たちを知ってほしい」との思いから、これまでどおりのマイペースな姿勢を崩さないと前回のインタビューや「JPN」ツアーのMCなどで表明していたPerfume。そんな彼女たちのニューシングル「Spending all my time」が欧米でのEDMブームの流れを感じさせる全編英語詞のダンストラックだったことに、多くのリスナーが意表を突かれたのは間違いないだろう。
今回の特集では「Spending all my time」についての話題を中心にPerfumeにインタビューを実施。この曲に込められた思いや、いかにしてこのシングルが作られたのかなどについて、3人から話を聞いた。
取材・文 / 橋本尚平 撮影 / 井出眞諭 スタイリスト / タケダトシオ(MILD inc.)
メイクアップ / 大須賀昌子 ヘアメイク / 島尻優樹(ゴールドシップ)
最初に聴いたとき「Perfumeらしくないな」って感じました
──「Spending all my time」を聴いて驚きました。「等身大のPerfume」と言われていた「JPN」以降の方向性とは全く違う曲ですよね。
かしゆか 私もびっくりしました(笑)。「このタイミングでこんなにも振り切った曲を持ってくるなんて」って。どういう曲をいただけるのかいつも楽しみにしてるんですけど、中田(ヤスタカ)さんにデモを聴かせてもらったとき、イントロが流れた瞬間に「あれ?中田さん、どうしちゃったんだろう?」って不安になったんです(笑)。でも、レコーディングしていくうちにだんだん、カッコいい曲になりそうだなって思えてきました。
──デモは完成版とはだいぶ違ったんですか?
かしゆか レコーディング当日にスタジオで10分くらい聴かせてもらって「はい! レコーディング!」みたいな感じだったんですけど、最初は日本語が全く入ってない英語だけの曲でした。
のっち いや本当に、「JPN」みたいなアルバムを出してツアーを回って、なのにその後にこの曲って……、なんて言ったらいいのかわからないですけど、すごく抵抗があったっていうか(笑)。確かに曲はめちゃくちゃカッコいいし、中田さんの曲はやっぱり好きだと思ったんです。でもなんか、洋楽っぽい音の感じとか、全編英語の歌詞とか「Perfumeらしくないな」って感じました。
──英語詞の曲は今までも「Take me Take me」や「Speed of Sound」があるし、それ自体はPerfumeらしくないとは全然思わないんですけど、とはいえそれがシングル曲になるとは思わないですもんね。
のっち そうなんですよ(笑)。次のシングルのA面曲をレコーディングしますって聞いて中田さんのスタジオに行ったのに、「え、本当にこの曲なんですか?」みたいな。
あ~ちゃん 歌詞が英語だからってだけじゃなくてサウンドも「超・洋楽」ですし、カッコいい曲だとは思うんですけど私たちの次への方向性と違うなーって。だから中田さんには「あれ? 本当にライブ来てました?」「ツアーの東京公演に2回来てたのに……えっ?」みたいな気持ちでした(笑)。前にライブに来てもらったときに感想を聞いたら「自分の音が大きい会場でデカい音量で聴けるのが最高!」って言ってたのを思い出して、「あー、もう中田さんは自分の作る曲が大きい音で流れることしか考えてないのかなー?」って寂しくなっちゃって(笑)。中田さんとは長年一緒にやらせていただいてるし、私たちのことをすごく考えてくれてると思ってたのに、「あっ! 自分の活動のほうを優先しちゃった!」ってびっくりしてしまいました。
「たまにはちょっと変わった曲をシングルにしたい」って言ったせいかも
──かしゆかさんは前回のインタビューで「海外進出する上で、既にある日本語の曲を英語詞に変えようとは思わないけど、英語のための曲を新しく作るのはありかもしれない」と言ってましたが、まさかその次のシングルが「英語のための曲」になるとは思いませんでした。
かしゆか まさかですよね。私も全然予想してませんでした。
──ということは、今作が英語詞なのは海外をターゲットにしているから?
あ~ちゃん 本人に聞いたわけじゃないんですけど、多分中田さんは海外を意識されてこの曲を書いたと思います。世界を相手にするなら、これくらいはっきりやっちゃったほうがカッコいいし。そして「ここまでやっちゃっても大丈夫。それでもPerfumeはぶれない」って、中田さんが自信を持ってくれたんじゃないかなって。私たちが中田さんの音楽をすごく信頼してることを、中田さんはきっとわかってくれてて、だからこそもっと踏み込んだ作品にしようと思ってくれたんだなって感じるんです。自分の活動に走ったわけじゃなくて(笑)。
──なるほど。
あ~ちゃん この曲をA面にするか、B面にするか、それとも入れないかっていう会議が何回かあったんですけど、でも結局「中田さんがこれをA面にしようって思ってくれてるならそうしたほうがいいよね」って話になるんです。不安すぎて逆に「でもさ、実際さ、私たち中田さんのこと信じとるじゃん?」「実は何か深い意味があるのかもしれんじゃん?」みたいな、お得意の前向きモードが3人とも全開になっちゃって(笑)。
──お得意の(笑)。
あ~ちゃん そういえば、実はちょっと反省してることがあって……。なんのレコーディングだったか忘れちゃったんですけど半年くらい前に、録音が全部終わってスタジオに誰もいなくなってから、私と中田さんと、Perfumeがインディーズ時代からお世話になってるヤマハの人の3人だけになったことがあったんです。そのときに「最近の曲、ちょっと似通ってきちゃったかな」と思って、中田さんに「今度はちょっと違う感じの曲が欲しいです」って言ったんですよ。ポップでキャッチーな曲は大好きですし、中田さんからいつも曲をいただけて本当にありがたいですし、中田さんのファンなんですけど……、たまにはちょっと変わった曲をシングルにして違う一面を出したり、もう少し自分たちのイメージを広げていきたい、みたいなことを言ったんです。もしかしてそのせいでこの曲になったのかなって(笑)。
──中田さんがその要望に応えてくれたのかも、と。
あ~ちゃん 中田さんは「まあ、俺次第だからね。リズム変えたりとか、なんでもできるし」「じゃあ歌詞が何もない曲とかいいかもね」みたいな感じに言ってて。そのときはなんとなくニュアンスが伝わったかなって思って「あっ……、ああ、楽しみにしてます!」って返事したんですけど、まさかこんな全部英詞の曲になるとは思ってなかった(笑)。
ニューシングル「Spending all my time」/ 2012年8月15日発売 / UNIVERSAL J
CD収録曲
- Spending all my time
- ポイント(「キリンチューハイ 氷結やさしい果実の3%」CMソング)
- Hurly Burly(「キリンチューハイ 氷結」CMソング)
- Spending all my time -Original Instrumental-
- ポイント -Original Instrumental-
- Hurly Burly -Original Instrumental-
DVD「Perfume 3rd Tour『JPN』」/ 2012年8月1日発売 / UNIVERSAL J
DVD「Perfume Global Compilation “LOVE THE WORLD”」/ 2012年9月12日発売 / 徳間ジャパン
Perfumeアジアツアー敢行!
- 2012年10月26日(金)
台湾・Neo Studio - 2012年11月7日(水)
香港・Rotunda 3 - 2012年11月17日(土)
韓国・AX-KOREA - 2012年11月24日(土)
シンガポール・SCAPE
※詳細はオフィシャルサイトにてご確認ください。
Perfume(ぱふゅーむ)
かしゆか(樫野有香) 、のっち(大本彩乃)、あ~ちゃん(西脇綾香)により2000年に広島で結成。2003年に活動拠点を東京に移してからは、プロデューサーにcapsuleの中田ヤスタカを迎え、インディーズレーベルで精力的に活動を開始。2005年にシングル「リニアモーターガール」でメジャーデビューを果たし、近未来的な世界観のサウンドとダンスで耳の肥えた音楽ファンの間でも高い評価を獲得する。2007年に「NHK環境・リサイクルキャンペーン」テレビCMに出演し、CMソング「ポリリズム」が大ヒット。テクノポップブームの火付け役となり、2008年には日本武道館、2010年には東京ドームでのワンマンライブを成功させる。2011年にはピクサー映画「カーズ2」の挿入歌&日本語吹き替え版エンディングテーマに、アメリカのスタッフによる指名で「ポリリズム」が抜擢。2012年にユニバーサルJに移籍してアルバム「JPN」のiTunes Store世界配信を実施し、同年4月に「キリンチューハイ 氷結」のCMソング「Spring of Life」のCDシングルをリリースする。さらに同年8月には全編英語詞のシングル「Spending all my time」を発表。10月からはアジア4カ国で初の海外ツアーを敢行する。