ナタリー PowerPush - PES from RIP SLYME
鮮烈ソロデビュー! その動機と展望
ギター1本あれば歌える奴らを見て「あいつらいいなあ」って
──歌だけでなく、ギター弾き語りというのもソロならではの挑戦ですね。
ギターは中学生の頃に始めて、今までRIP SLYMEの曲を作るときも使っていて。そこではサンプリングで使うループのフレーズを考えるのが中心だから、1曲通して弾きながら歌うなんてやろうとも思ってなかったんですね。でも去年東日本大震災があって、停電したときに、ギターで自分の曲が歌えたらなって少し思ったんです。
──ギターを弾くのには電気を使いませんからね。
そうそう。いつでも歌えることの意味も考えました。あと僕の周りには、Dragon Ashの(降谷)建志とかACIDMANのオオキ(ノブオ)くんとか、ギター1本あれば歌える奴らがいて、「あいつらいいなあ」っていう思いもちょっとありました。そんな流れで、今回はギター弾きながらやれたらいいなって。
──RIP SLYMEの楽曲と自分の楽曲、どちらもギターで作曲するとのことですが、何か明確な違いはありますか?
RIP SLYMEではギターで必要なフレーズだけ作って、トラックに乗っけて、リズム作って、ラップを考えるっていうパズルみたいな作り方。でもソロはループじゃないし、最初に全部通して弾きながら歌えるかどうかを考えます。まあ、ギター持ったりして見た目はRIP SLYMEのときと違うかもしれないけど、音楽的な線引きは結構地味な違いしかないですよ。エスプレッソかカプチーノか、みたいなノリでしょうね(笑)。
呼人さんが俺の汚い曲をキレイにしてくれた
──「女神のKISS」でプロデューサーに寺岡呼人さんを迎えた理由は?
スタッフとのミーティングで「プロデューサーどうする?」っていう話が出て。僕は人見知りなんで知ってる人がいいなと思っていて、呼人さんとはよくメシ食べたり、遊んでもらったりしてたし、作品も好きで聴かせてもらっていたので頼みました。作業は、僕が作った曲の原型を呼人さんに渡して、そこでアレンジがひとひねりされて、いろんなプレイヤーに演奏してもらって、また呼人さんがまとめて、と広がって返ってくる感じでした。
──PESさんは、自分のソロ名義の作品に他人の手が入ることに抵抗はなかったんですか?
全くないですね。俺汚いからなあ、音。
──汚いから? 荒削りってことですか?
そう。「俺の汚い曲をキレイにしてください」って感じ。僕はベースとかドラムとかキーボードが入るとコードの割り振りもよくわからないしね。なんか、寺岡さんは俺みたいなテキトーな感じじゃないからすげえなと思います(笑)。きっとそれが普通の楽曲の作り方なんですよね。勉強させてもらってます。
──また、プレイヤーには奥野真哉(ソウル・フラワー・ユニオン / Key)さん、BOBO(Dr)さん、松原秀樹(B)さんという豪華な面々が参加していて驚きました。
これも呼人さんが曲を聴いて「この人で」って選んで呼んでくれました。この曲にはどうしても生楽器を入れたかったんです。中でもBOBOくんには、7年くらい前に僕から「何かやるときよろしくお願いしますね」って話したことがあって、今回「ようやく呼んでくれたね」って言われました(笑)。
これで自分のアイデンティティが見出せたら最高
──このソロプロジェクトは、今後どういう形でどのくらい続いていくんでしょうか?
現時点では「from RIP SLYME」ってついてるし、まあワンクッションみたいなもんじゃないですかね。お新香的なノリじゃないですか。
──(笑)。私はぜひソロアルバムを作ってもらいたいです。
そうですね。そこに向けてはがんばりたいです。でもまだ全然見えてないし、アルバムのこと言い出すと怖くなってくるんですよね。シングルでもこんなに大変なんだから、アルバム作りとなったら僕もスタッフもみんな死んじゃうんじゃないかなって(笑)。
──PESさん自身の願望としてはどうなっていきたいですか?
これはこれで続けていって、自分のアイデンティティが見出せたら最高だなと思います。音楽をやっていく上で、これは僕にしかできないと思えるものが手に入ったらいいなと。すごく贅沢な望みではありますけどね。
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PES from RIP SLYME(ぺす)
RIP SLYMEのMCとして、2001年にシングル「STEPPER'S DELIGHT」でメジャーデビュー。RIP SLYMEは日本のヒップホップグループとしては初の日本武道館単独公演、海外公演、野外5万人ライブなど、数々の記録を作り続けている。PESは「One」「Hot Chocolate」「Tales」「SCAR」といったRIP SLYMEの楽曲のソングライティングを多数手がけ、SMAP、JUJUをはじめとする他のアーティストへの楽曲提供や歌詞提供も行う。また音楽活動以外にも、デザイン関連へのアプローチなど、その活動は多岐にわたる。
2012年3月28日更新