Penthouseインタビュー|“ポップ”と“エゴ”の狭間でせめぎ合う、メジャー1stアルバム「Balcony」 (2/2)

自分たちの作りたい音楽と「たくさんの人に聴いてほしい」のせめぎ合い

──メジャーデビューから1年4カ月。タイアップソングの書き下ろしも経験するなど、J-POPフィールドに本格的に繰り出してから1年4カ月とも言えるかと思いますが、ここまでの活動を経てどんなことを感じていますか?

浪岡 聴いてくれた人のツボみたいなものを少しずつ押さえられるようになってきてはいるものの、自分たちのやりたい音楽と「こうしたらもっとたくさんの人に聴いてもらえるだろうか」というポイントのバランスをどう取っていくか、引き続き考えていくことになりそうです。「Penthouseの曲って難しいからカラオケでは歌いづらいよね」とよく言われるんですよ。でも簡単にしたら、自分たち自身が面白くなくなっちゃったりするのかな?と思うところもあって。

大島 TikTokやInstagramで自分たちの曲をどれだけ使ってもらえるかも、今はすごく大事だからね。そこは確かに難しいところだよね。Penthouseは音楽が好きな方々からは評価していただけているけど、あまり音楽に詳しくないという人たちに今後どれだけ受け入れていただけるかというのが、我々の課題だと思います。だからこそ、浪岡も「自分たちの作りたい音楽はこれだ」というものと「たくさんの人に聴いてほしい」という気持ちのせめぎ合いの中で曲作りをしていて。

浪岡 そうそう。

左から大島真帆(Vo)、浪岡真太郎(Vo, G)。

左から大島真帆(Vo)、浪岡真太郎(Vo, G)。

──確かに今回のアルバムからもせめぎ合いが感じられました。配信シングルとしてリリース済みの6曲をポップソングとしてクオリティ高く作れたからこそ、新曲4曲は振り切ってもよしという大胆さがあるというか。

大島 ふふふ。やりたい放題ですよね(笑)。

浪岡 これまで出したシングルをまとめつつ、あとはやりたい曲をやりましたというアルバムなので、聴き応えはばっちりなんじゃないかと思います。だから僕たちとしては、文字通り“アルバム=写真帳”ができたという感覚で。この1年4カ月間の思い出が詰まっているというか。

大島 J-POPっぽい曲もあれば、ファンクもあり、ゴスペルもあり、ブルース色の強い曲もあって。メンバーそれぞれの音楽の素養を存分に注ぎ込んだアルバムなので、10曲通して聴いていただけたら、Penthouseの魅力を改めて感じてもらえるんじゃないかなと思っています。浪岡の作曲の幅広さもきっと楽しんでもらえるはずです。

ゴスペルに挑戦した「Live in This Way」

──1曲目に収録されているのは新曲「蜘蛛ノ糸」。ホーン隊によるオープニングが印象的ですね。

浪岡 ホーンを入れると楽曲の華やかさがすごく増すので、作っているときも楽しいんですよね。「蜘蛛ノ糸」はドラマのタイアップのお話をいただいて作った曲なんですが、「冒頭にインパクトがほしい」というオーダーをドラマの制作チームからいただいていたので、その点でもホーンはめちゃくちゃ役に立ってくれたなと思います。

大島 ホーンアレンジ、完璧にマスターしたんじゃない?

浪岡 いやー。でも、真砂(陽地)さんという方に僕がアレンジしたものを清書してもらったんですけど、「このままでいけるくらいきれいですよ」とお褒めの言葉をいただけたのがすごくうれしかったです。

──「大島さんの声をこう使うのか」という新鮮さもありました。

大島 浪岡が仮歌を歌っているデモ音源を聴いたとき、浪岡の声だけで曲が完成しているように感じたので、「私、どこ歌う?」と思ったんですよ。浪岡に「どうするの?」と聞いたところ、「俺も悩んでるんだよね」と言っていたんですけど、いざ譜割りが決まって歌ってみたら、空間を広げるような役割が私のパートに与えられていたので、「なるほど、私の声をこう使いながら曲を作り上げていくのか」と感じました。よく浪岡からリクエストされる、息の成分を多めにした声で歌ってみたので、私色を加えることができていれば大変うれしく思います(笑)。

浪岡 あはははは。

浪岡真太郎(Vo, G)

浪岡真太郎(Vo, G)

──3曲目の「Live in This Way」はファンクとゴスペルを掛け合わせたようなテイストで、ゴスペル隊を率いる大島さんの歌唱が頼もしく、声をしゃがれさせたような浪岡さんの発声がほかの曲とは違うように感じました。この曲を聴いて驚くリスナーも多いのではないでしょうか。

大島 私たちからすると「これぞ浪岡!」という感じなんですよ。学生時代に聴いてきた浪岡の歌がこういう感じだったので、レコーディングのときもみんなで「これこれ!」と言っていました。

──そうなんですね。

浪岡 「Live in This Way」はCateenと共作したんですけど、「しばらくJ-POP寄りの曲をシングルで出してきたから、アルバムには大学時代に自分たちが憧れていたような音楽も入れたいよね」という話になって。僕、ブルーノ・マーズが好きなので、AメロとBメロには「24K Magic」あたりのモダンなファンクの要素も加えつつ、サビではゴスペルっぽく広がるようにとイメージしながら作りました。とはいえゴスペルは本格的にやったことがなかったし、「そう簡単にできないよな」と思ったんですが、試しに自分の声をいっぱい録って重ねてみたらめっちゃいい感じになったので、その方向性で進めたという感じですね。

大島 ゴスペル隊のレコーディング、すごかったね。鳥肌が立った。

浪岡 ね。知り合いに長谷川さんという歌のうまいおじさんがいるんですけど、その人がゴスペル出身ということで「歌える人を集めてくれないか」と頼んだら、快くOKしてくださって。歌のうまい人が8人も集まって、その場でガーッと歌ってくれて……本当にすごい熱量でした。

大島 最初は「この曲を3曲目に持ってくるの?」「もっと後半にしたほうがいいんじゃない?」という話も出たんですけど、ゴスペルに造詣が深くない人にも音楽のパワーを届けられる楽曲になったと思うので、アルバムの序盤に入れてできるだけ早く聴いてもらったほうがいいんだろうなと。この曲が早めに出てくることで、アルバムの印象がグッと変わりますよね。

大島真帆(Vo)

大島真帆(Vo)

大人数で鳴らす音楽の楽しさ

──8曲目の「Something Stupid」はどのように生まれた曲ですか? 浪岡さんの歌とアコースティックギターを主軸にした曲で、土臭いブルースが豊かな自然へと広がっていくイメージが湧きました。

浪岡 もう1つ新曲を録りたいと思ったもののCateenのスケジュールが迫ってたので、「じゃあアコギと歌だけの曲を作りましょうか」というところから始まった曲ですね。この曲は完全に僕の趣味です。ハードロックをやっている頃から、こういうサザンロックとカントリーをミックスしたような楽曲が好きだったんですよ。それを思い出しながら作ってみました。

大島 コーラスで私の声を入れようかという話にもなったんですけど、中途半端に自分の声を入れるよりも、浪岡の声だけで完結させたほうがこの曲の魅力を最大限に引き出せるんじゃないかということで、私の声は入れないという判断になりました。シングルで出すには若干キャッチーさに欠ける曲だと思うんですけど、逆に言うと、アルバム曲だからこそこういうアプローチができたのかなと。この曲からもPenthouseの新たな一面を感じ取ってもらえたらうれしいです。

──6月にはアルバムリリースを記念したツアー「Penthouse ONE MAN LIVE TOUR "Balcony"」が開催されます。セットリストの練り甲斐もありそうですね。

大島 アルバムの制作を通じて楽曲のバリエーションがすごく増えたので、曲と曲をどういうふうに組み合わせて届けたらそれぞれの魅力を最大限に引き出せるか、これから悩むことになるんだろうなと感じています。私たちはライブをする機会がほかのバンドに比べると少ないと思うので、来てくださった方にはPenthouseの楽曲の魅力を存分に味わっていただきたいですし、来られなかった方にも楽しさが伝播するくらいのエネルギーを発信できる場を作れればと思います。

浪岡 今回のアルバムにはたくさんの人が関わってくれているんですよ。「蜘蛛ノ糸」のホーン隊もそうだし、「Live in This Way」のゴスペル隊もそうだし、生のストリングスが入っている曲もあります。大人数で鳴らす音楽の楽しさをアルバムから感じ取ってもらえるんじゃないかと思っているので、ライブでも、お客さんと一体感を作りながら楽しんでいきたいですね。

大島 コール&レスポンスもできたらいいなと思ってます!

左から大島真帆(Vo)、浪岡真太郎(Vo, G)。

左から大島真帆(Vo)、浪岡真太郎(Vo, G)。

公演情報

Penthouse ONE MAN LIVE TOUR "Balcony"

  • 2023年6月14日(水)北海道 共済ホール
  • 2023年6月17日(土)福岡県 UNITEDLAB
  • 2023年6月19日(月)東京都 Zepp DiverCity(TOKYO)
  • 2023年6月21日(水)大阪府 Zepp Namba(OSAKA)
  • 2023年6月22日(木)愛知県 Zepp Nagoya
チケット最速先行予約受付期間

2023年4月12日(水)18:00~4月23日(日)23:59

プロフィール

Penthouse(ペントハウス)

浪岡真太郎(Vo, G)、大島真帆(Vo)、Cateen(Piano)、矢野慎太郎(G)、大原拓真(B)、平井辰典(Dr)からなるツインリードボーカルバンド。東京大学内のバンドサークル「東大POMP」のOB、OGであるメンバーが2019年6月に活動を始める。2020年9月にリリースされたV6のシングル「It's my life / PINEAPPLE」に浪岡作曲による「ただこのまま」を提供。2021年5月に配信リリースしたオリジナル楽曲「...恋に落ちたら」で注目を浴び、同年11月にはEP「Living Room」でビクターからメジャーデビューを果たす。2022年には、Spotifyが2022年に飛躍が期待される注目のアーティストを選出する「RADAR: Early Noise 2022」に選ばれ、4月発表のシングル「流星群」がドラマ「クロステイル ~探偵教室~」の主題歌に使用された。2023年3月には1stアルバム「Balcony」を発表した。