自分が楽しめていることが重要
──現時点で新しいリスナーが一番開拓できているのは、やっぱりYouTubeですか?
浪岡 そうですね。Cateenから興味を持ってくれた人も多いでしょうし、誰かのカバーをやって、そこから僕らの演奏や歌に興味を持ってくれた人も多いと思います。そういう導線作りはすごく力を入れてやってきたので。
──ただ、YouTubeのようなネットの世界って、一過性の話題で終わる危険性というのもありますよね。
Cateen もちろんそういう葛藤はあります。YouTubeに限らずインターネット全般に言えることですけど、伸びやすいもの、バズりやすいものというのは確かにあって。そこに振り切れば閲覧数は伸びるのかもしれないですけど、自分自身、自分のチャンネルがまだそこまで伸びてなかったときに、そういう動画を観てモヤモヤした気持ちになったりしたこともあって。自分の基準としては、自分と同じように音楽をしている人が見ても面白いと感じてもらえるもの、音楽をあまり知らない人が見ても面白いと感じてもらえるもの、その2つが両立しているものをやりたい。それが自分がやっていて楽しいことなんですね。
──なるほど。
Cateen それでだんだんわかってきたのは、特にYouTubeにおいては、自分が楽しめていることがすごく重要なんだということ。仕事的にやっていることって、結局は視聴者に全部バレてしまうんですね。だから流行とか潮流とかを気にすることも重要ではあるんですけど、人が見て楽しいと思うのは、人が楽しんでいる姿なんですよ。InstagramやTwitterなどもあって、いい意味でも悪い意味でも個人のパーソナルな部分が見えやすい時代になっている。バンド活動においても、それを楽しんでいるかどうかというのは、以前と比べても大事なことになっているような気がしますね。
──Penthouseの音楽の面白いところは、パッと聴きはすごく聴きやすいんですが、その背後にメンバーそれぞれの音楽的なルーツが見え隠れしているところで。例えば浪岡さんがかつてハードロックのバンドをかなり本気でやっていたというのも、ブルース的なコード感やボーカリゼーションにつながっているんだろうし。今回の「Living Room」で言うと「Alright」に顕著に表れてますよね。
浪岡 そうですね(笑)。
──一方で「Change The World」や「...恋に落ちたら」は、思いきりポップな方向に振り切っています。
浪岡 「...恋に落ちたら」を配信したのは今年の5月だったんですけど、やっぱり露骨に反応がよかったんです(笑)。個人的には長いギターソロとかも好きなんですけど、いかにリスナーを曲の途中で止めさせないのかっていうのが今は大事なので、やっぱりそういうことは考えますね。
──ボーカリストとしては、大島さんも最近あまりいないタイプというか。これは初期の「夜と夢のはざまで」を聴いたときに特に感じたんですけど、すごくオーセンティックというか、スタンダード曲を歌うとハマりそうな歌声をしているなと。
大島 私、幼少期から本当にドリカム(DREAMS COME TRUE)が好きで、ずっと吉田美和さんになりたいというか、「吉田美和の生まれ変わりになりたい」と思っていたんですよ。
──ああ、わかりますわかります(笑)。
大島 ドリカムも表面的にはJ-POPですけど、そのベースにはソウルだったりR&Bだったりがあるじゃないですか。父がレイ・パーカーJr.とかボビー・コールドウェルとかが好きで家ではいつもそういう音楽がかかっていて、自分もアレサ・フランクリンとかシェリル・リンの歌を真似してきたみたいな。そういう環境で育ってきたので、自分の中には「あまり流行りものには乗らない」みたいなところがあるんです(笑)。
──そこはPenthouseの音楽において、すごくいいスパイスになってると思いますよ。そういう個性を隙あらばどんどん出していっていってほしいですね。
大原 自分自身は完全にJ-POP育ちなんですけど、みんなもう隙あらば出していますよ(笑)。このメンバーは全員、自分の好きな音楽と、より多くの人に届きやすい曲の両方を客観的に見ることができるタイプだと思うんですよね。だからメンバー間でたまにぶつかることもありますけど、最終的には必ずみんなが納得のいくものができるというか。
平井 今はこのバンドのことを知ってもらいたいという気持ちが曲の全面に出ているかもしれないですけど、徐々に各メンバーの個性を出していく方向になっていくと思います。
浪岡 でも自分の場合は、あんまり出しすぎるとハードロックになっちゃうから(笑)。
──浪岡さんに関しては、やっぱりその反動は大きいんでしょうね(笑)。
一同 (笑)
音楽にとっては意味がないこと
──メンバー6人のうち5人が東大出身というなかなかイカついプロフィールについては、今後このバンドがテレビのようなマスメディアに出ていくときに付きまとうことだと思うんですけど、それについてはどのように考えてますか?
矢野 それがバンドのキャッチコピーになったり、紹介文の1行目にきたりするのは抵抗がありますけど……曲に興味を持ってくれた人が、よく調べてみたら「あ、そうなんだ」くらいがちょうどいいというか。
大原 それでイロモノみたいに消費されちゃうのは嫌だけど。
平井 特にCateenは、そういう消費のされ方の矢面に立たされてるところもあるからね。
Cateen メディアの側も別に悪意があるわけじゃなくて、それで注目する人がいるから、よかれと思って言うんでしょうけど。言われてきた立場の実感としては、自分の演奏を聴いてもらったあとだったらいいですけど、まったく演奏も聴いたことがない段階でそういう情報が入ってきたとしても、よりその音楽に興味を持ってもらうきっかけにはならないんですよね。だから、これはもう自分からそういうプロフィールを出したいとか出したくないとかいう問題じゃなくて、音楽にとっては意味がないこととしか言えないですね。
──わかります。そこはなかなか難しいところですね。
浪岡 でも、もしかしたらそれで得することもあるかもしれない。
──それもわかります。
浪岡 だから、それはそれでって感じですね(笑)。
ライブ情報
Penthouse ONE MAN LIVE TOUR "Living Room"
- 2022年1月16日(日)大阪府 Music Club JANUS
【昼公演】OPEN 14:30 / START 15:00
【夜公演】OPEN 17:30 / START 18:00 - 2022年2月26日(土)東京都 渋谷duo MUSIC EXCHANGE
【昼公演】OPEN 14:30 / START 15:00
【夜公演】OPEN 17:30 / START 18:00
プロフィール
Penthouse(ペントハウス)
浪岡真太郎(Vo, G)、大島真帆(Vo)、Cateen(Piano)、矢野慎太郎(G)、大原拓真(B)、平井辰典(Dr)からなるツインリードボーカルバンド。東京大学内のバンドサークル「東大POMP」のOBであるメンバーが2019年6月に活動を始める。2020年9月にリリースされたV6のシングル「It's my life / PINEAPPLE」に浪岡作曲による「ただこのまま」を提供。2021年5月に配信リリースしたオリジナル楽曲「...恋に落ちたら」で注目を浴び、11月にはビクターから発表した「Living Room」でメジャーデビューを果たす。
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