職人ごっこをするつもりはない
──「ハートビートスナップ」は、ピアノソロがキレッキレですよね。
柴﨑 ありがとうございます。これはもう、フュージョン上がりの自分の得意分野と言うか。ピアノもそうですけど、オルガンも自分の好きなように弾かせてもらいました。
──難航はしなかった?
堀江 逆に一番スムーズだったね。
柴﨑 まあでも、ブラックミュージック的な要素があるとは言え、本業の方に勝てないのはわかってたので。そこはバンドで作り上げるグルーヴと言うか、あくまでバンドサウンドを意識して弾きましたね。
堀江 そうそう、レコーディングする前にエンジニアさんからも「この曲は本格的な黒い音にするのか、そうじゃないのか」と聞かれて、僕は「そうじゃないです」って答えたんです。職人ごっこをするつもりもないし、無理に玄人感を出す必要もない。あくまで僕らがこういうジャンルの曲を弾き散らかしてるのがいいと思ったので。
──では、残りのお二人が難航された?
神田 いや、僕も難航はしてないですね。むしろ好きなジャンルなんですけど、やっぱり弾き方には2パターンあって。つまり、本気でブラックミュージックに寄せるか、あるいはバンドっぽくリズムの統制をユルくするか。プリプロではもっとバンドっぽく弾く方向で固めてたんですけど……たしかプリプロからレコーディングまでけっこう間が空いたんだよね?
堀江 1週間ぐらい空いてた。
神田 それで久しぶりに合わせてみたら、もうちょっとリズムを締めたほうがいいかなと。要は、1曲を通してギターは暴れてて、その弾き方は変えないっていうのがプリプロの時点でのプランだったんですけど、本番ではけっこうAメロとかサビで変化を付けてて。だから自分の得意な黒いグルーヴを軸にして、そこに暴れ感を加味していくイメージですね。とは言えこの曲はピアノが主役なので、ギターはひたすらハイハットのような役割を担う感じで。まあハイハットなんだけど、暴れてるハイハットみたいな(笑)。
キーボーディストにドラムの手本を叩いてもらう
──ここまで楽器陣で難航した人がいないと言うことは……。
新保 いやあ、この曲のドラムはね、めちゃめちゃ難航しました。
一同 ははは(笑)。
堀江 彼は根がメタルだからね。
新保 今回「千載一遇」以外の3曲は、「ハートビート」、「方位磁針」、「近日公開」の順に録ってるんですけど、ちょうどこの「ハートビート」のタイミングで僕がインフルエンザにかかりまして。それで体力的にも落ちちゃって、普段の叩き方がうまくいかなかった時期なんですよ。で、以前から僕に付いてくださってるドラムチューナーの冨安徹さんと相談して、いつもとは違う抜いた叩き方を試してみようと。そこで掴んだ感覚が、「方位磁針」と「近日公開」にも生かされてますね。実際、「方位磁針」のときはまだ体調不良を引きずってましたし、本来の叩き方ができなかった結果、音に広がりが出たと言う。
──「ハートビート」のドラムもよく跳ねてると思いました。
神田 プリプロのときはね、その跳ね感が、もう絶妙に合わなくて(笑)。
堀江 1回ね、よーよー(柴﨑)くんに叩いてもらったからね。お手本を。
──ははは(笑)。
神田 屈辱だよね(笑)。でも彼はキーボーディストなのにドラムもすごくうまいんですよ。あと今回のレコーディングでは、まず恵大くんが叩いてから、エンジニアさんやチューナーさんにテコ入れしてもらうパターンが続いたよね。で、最終的にいいドラム叩いて「最初からやれよ!」みたいな(笑)。
新保 実は「近日公開」もそうだったんです。最初、強く叩きすぎてて、「8割ぐらいの力で叩いてみて」って言われたので、ちょっと抜いて叩いたら、逆にローがすごくよく出て。
神田 めっちゃよくなったよね。
新保 そういう方向転換ができるようになったきっかけをくれたという意味でも、今回のレコーディングはめちゃくちゃ大きな収穫がありましたね。
正解を決めつけないことを大事にしたい
──「方位磁針」も「ハートビートスナップ」も肩の力を抜いた曲ではありますが、めちゃくちゃライブ映えしそうですね。
柴﨑 「ハートビート」はすでにライブでやっていて、ほとんどセッションみたいな感じです。だから楽器陣は毎回かなり遊んでるし、お客さんとしても楽しいんじゃないかなって。
堀江 「方位磁針」は今までやってた曲とは違う種類の映え方をするかなと思っていて。例えばある程度キャパシティの大きな会場、それこそ3月に控えたツアーファイナルのZepp DiverCity TOKYOとか。ああいう場所で効果を発揮する曲になる気がするので、こういう曲が今のバンドにあってよかったなと。
──そして、パッケージとしてはリラックスした空気の「ハートビートスナップ」のあと、ほぼ曲間なしで4曲目のラウド&ファストな「千載一遇きたりて好機」にリスナーがぶっ飛ばされるという。
新保 確かに(笑)。
堀江 これも悩んだんですよ。だいたいマスタリングの行程でどのくらい曲間を空けるか決めていて、「1秒にする? 2秒にする?」とか話し合ったんですけど、あまりにも空気感が変わりすぎるから、いっそ0秒にしてそのまま行っちまえと。
神田 まあ、こういうバンドなんでね。
堀江 僕らはさっきも言ったようにコンセプトなしで好き勝手やってるけど、聴いてくれる人たちも好き勝手に聴いてほしいんですよね。最近、新しいファンの人も増えてきていて、人が増えれば、当然その中にはライトな人もいればディープに聴き込む人もいる。それに対して、僕らの側から「この聴き方が正解だよ」みたいに決めつけないことを大事にしたいと思っていて。ほら、ライブのMCでよく鷹司が言うやつ、なんだっけ?
生田 「自分の楽しみ方で楽しんでくれ」?
堀江 そう、それ。ホントにそれに尽きるんですよね。バンドが続く限りそのスタンスであり続けたいし、お客さん側にもそうあってほしいなって。
- PENGUIN RESEARCH「近日公開第二章」
- 2018年1月10日発売 / SACRA MUSIC
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[CD+DVD] 3000円
VVCL-1140~1 -
[CD] 1600円
VVCL-1142
- CD収録曲
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- 近日公開第二章
- 方位磁針
- ハートビートスナップ
- 千載一遇きたりて好機
- CD+DVD盤付属DVD収録内容
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- ジョーカーに宜しく
- 嘘まみれの街で
- 八月の流星
- 雷鳴
- Alternative (PGR Ver.)
- 敗者復活戦自由形
- シニバショダンス(Lyric Video)
- PENGUIN RESEARCH TOUR 2017-2018「PENGUIN QUEST~お台場に導かれし者たち~」(※終了分は割愛)
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- 2018年3月25日(日)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
- PENGUIN RESEARCH(ペンギンリサーチ)
- 生田鷹司(Vo)、堀江晶太(B)、神田ジョン(G)、新保恵大(Dr)、柴﨑洋輔(Key)からなるロックバンド。LiSA、茅原実里、ベイビーレイズJAPANらの楽曲の作編曲を手がける堀江が生田に声をかけ2015年に結成される。2016年1月にシングル「ジョーカーに宜しく」でメジャーデビューを果たし、3月に初のワンマンライブを東京・新代田FEVERにて開催した。3月に1stミニアルバム「WILL」、6月にアニメ「マギ シンドバッドの冒険」のオープニングテーマ「スポットライト」を収録したシングルを、9月にアニメ「ReLIFE」のオープニングテーマ「ボタン」をシングルとして発売するなどコンスタントにリリースを重ねる。2017年3月に1stフルアルバム「敗者復活戦自由形」を発表。8月には配信シングル「千載一遇きたりて好機」をリリース、11月よりライブツアー「PENGUIN QUEST~お台場に導かれし者たち~」を開催する。2018年1月10日に4曲入りCD「近日公開第二章」を発売した。